パンルヴェ方程式

パンルヴェ方程式研究の唯一の手がかりとされてきた著者の講究録がついに大幅な加筆・改訂を経て刊行.

パンルヴェ方程式
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著者 岡本 和夫
ジャンル 書籍 > 単行本 > 数学
書籍 > 自然科学書
刊行日 2009/02/25
ISBN 9784000058360
Cコード 3041
体裁 A5 ・ 上製 ・ 302頁
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり
動く分岐点を持たない非線型常微分方程式は特別な場合を除き6種類しかない.それがパンルヴェ方程式である.数理物理への驚くべき応用が見つかるなど,新たな微分方程式論,代数解析論への道を開く.その研究の唯一の手がかりとされてきた著者の講究録がついに大幅な加筆・改訂を経て刊行される.まさに待望の書である.

■著者からのメッセージ

パンルヴェ方程式は,1900年すなわち19世紀最後の年に発見された,動く分岐点を持たない非線型常微分方程式である.その方程式の解はパンルヴェ超越関数と呼ばれる.「動く分岐点を持たない」というのは,非線型常微分方程式に対して強い制約条件になる.だからこそこの性質が,良い関数を定義する可能性のある微分方程式を特徴付ける.
 動く特異点とは,よく使われる便利な術語ではあるが,数学的な概念としては必ずしも明解ではない.常微分方程式に対して,その方程式に固有な特異点をすべて数えあげたとして,特殊解がそれ以外の特異点をもてば,それが動く特異点である.線型常微分方程式については,係数の特異点が微分方程式に固有な特異点であり,それらが,微分方程式の定義域内に現れる一般解の特異点のすべてとなる.しかし,非線型常微分方程式に対して,その固有の特異点を一般的に定義することは困難である.ただ,具体的に微分方程式が与えられ,その固有な特異点を数えあげることができれば,その微分方程式の動く特異点について議論できる.もちろん,本書で扱う非線型常微分方程式については,方程式に固有な特異点が確定し,解の動く特異点について議論することができる.
 この本は,上智大学数学講究録No.19「パンルヴェ方程式序説」(1985年)を書き改め,内容を追加したものである.これは,1982年度冬学期に,筆者が上智大学で行った数学の大学院向けの講義を基としている.その講義は,パンルヴェ方程式について,線型常微分方程式のホロノミック変形,すなわち当時の用語ではモノドロミー保存変形,を中心に,パンルヴェ方程式のハミルトニアン構造とτ-関数の性質を論じる,という内容であった.講義を基にして講究録を執筆するにあたり,フックス型常微分方程式のホロノミックな変形理論をもっとも基本的なところから書いた.そのときには省略した,ハミルトニアン構造の変換論等の話題を加えて,このたび一冊の本にまとめることにした.
 本書をまとめるに当たって大いに悩んだことは,どこまで付け加えるか,であった.さすがに20年も経つと,講究録を書いたときと比較しても,パンルヴェ方程式研究も進歩し,内容が増えるだけでなく,ものの見方も大きく変化している.もし新しい見方でパンルヴェ方程式の本を書くとなれば,旧著とはまったく違った構成となるであろう.この可能性も少しは検討したが,結局,本書の役割はパンルヴェ方程式の古典論を紹介することにある,と割り切ることにした.新しい革袋に入る新しい酒は,新しい人達に任せる,と勝手に決めた.

――本書「まえがき」より抜粋(一部変更)
まえがき
1 パンルヴェ方程式の歴史
1.1 代数的微分方程式
  1.2 動く分岐点を持たない代数的微分方程式
  1.3 パンルヴェ方程式の発見
  1.4 パンルヴェ方程式の関係
  1.5 パンルヴェ方程式の解析
  1.6 パンルヴェ超越関数
  1.7 パンルヴェ方程式の既約性
2 フックス型方程式
  2.1 2階線型常微分方程式
  2.2 確定特異点
  2.3 不確定特異点
  2.4 高階フックス型線型常微分方程式
  2.5 見かけの特異点
  2.6 連立微分方程式系と単独高階微分方程式
  2.7 リーマンの問題
  2.8 フックスの問題
3 パンルヴェ方程式の基礎
  3.1 変形微分方程式系
  3.2 2階フックス型微分方程式のラックスの方程式
  3.3 変形微分方程式系の解
  3.4 シュレージンガー系
  3.5 ガルニエ系
  3.6 ガルニエ系のハミルトン表示
  3.7 ガルニエ系の完全積分可能性
  3.8 ガルニエ系とシュレージンガー系
4 ホロノミック変形とハミルトン構造
  4.1 パンルヴェ方程式のハミルトニアン
  4.2 ホロノミック変形とパンルヴェ方程式PV’
  4.3 変形方程式系の合流とパンルヴェ系の退化
  4.4 パンルヴェ方程式PI の積分
  4.5 パンルヴェ方程式PII の解析
  4.6 ハミルトン関数
  4.7 パンルヴェ方程式のτ-関数
5 パンルヴェ方程式の構造
  5.1 パンルヴェVI型方程式の局所解によるハミルトン系の構成
  5.2 パンルヴェ方程式の特殊解
  5.3 パンルヴェ方程式の葉層構造
  5.4 パンルヴェ方程式の変換群
  5.5 ハミルトン関数の微分方程式
  5.6 パンルヴェ方程式と双1次型式
  5.7 パンルヴェ方程式と戸田方程式
 あとがき
岡本和夫(おかもと かずお)
1948年生まれ
1972年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了
現在 東京大学大学院数理科学研究科教授,理学博士
専攻 可積分系の理論
主著 『自然と社会を貫く数学』(放送大学教育振興会),『微分積分読本』(朝倉書店)他

書評情報

数学セミナー 2009年10月号
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