新装版 複素多様体論

複素多様体の変形理論の教科書.無限小変形,存在定理,完備性の定理,安定性の定理などについて解説.

新装版 複素多様体論
著者 小平 邦彦
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 数学
刊行日 2015/01/15
ISBN 9784000059664
Cコード 3041
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 492頁
在庫 品切れ
複素多様体に関して変形理論の発展を軸に解説した教科書.複素多様体の入門から始めて,無限小変形,存在定理,完備性の定理,安定性の定理などについて,予備知識を仮定せずていねいに解説する.なお,本書の変形理論は,多様体上の楕円型線型偏微分作用素の理論に基づく.藤原大輔氏による,その基本的な解説を付録として収めた.

■編集部からのメッセージ

日本人として初めて1954年にフィールズ賞を受賞した小平邦彦先生.先生の生誕100年を記念して,先生の主著である『複素多様体論』を新装版としてお届けします.本書は,岩波講座「基礎数学」の分冊として執筆され,その後1992年に単行本として刊行したものに由来します.
 小平先生は,よく知られているように数学研究者として大きな功績を残されただけでなく,数学教育にも積極的に発言されてきました.「New Math批判」と題して,小社の雑誌『科学』に寄稿された記事(1968年10月号)の中で,初等教育に集合論を導入することの愚を批判されています.また,「原則を忘れた初等・中等教育」と題された記事(1984年1月号)では,国語,数学,社会など各教科が,子どもの発達や関心度を無視して独立にカリキュラムが編成されていることを批判されています.
 前者の記事では,数学者が集合論を基本的でわかりやすい概念だと思うのは,修練を経た結果であって,「物の数を数えるのは集合の1対1対応に基づく」などといっても子どもには無味乾燥だし,しかも本来,無限集合を考えるためにつくられた概念なのだから,子どもに有限集合から集合論を教えても何のために学ぶのか理解できるはずがないと批判します.
 後者では,その昔(戦前),小学校の初年級には国語や算数を徹底的に教え,社会や理科は高学年に教えていた例を引きながら,いたずらに初年級から過密な時間割にして,子どもの理解を中途半端なものにしているのではないか,もう少し総合的な視点から,子どもの習熟度を考慮したカリキュラムを編成するのがよいのでは,と意見を述べています.
 小平先生自身も数学科および物理学科を卒業され,自ずと多角的に対象をとらえる視点を育まれたものと思います.
1 正則関数

2 複素多様体

3 微分形式,ベクトル束,層

4 無限小変形

5 存在定理

6 完備性の定理

7 安定性の定理

附録 多様体上の楕円型偏微分作用素(藤原大輔)
小平邦彦(こだいら くにひこ)

1915-97.東京生まれ.1938年東京大学理学部数学科卒.1941年同大学物理学科卒.ジョンズ・ホプキンス大学,スタンフォード大学,東京大学,学習院大学などで教える.1954年日本人で初めてフィールズ賞受賞.専門は,代数幾何学,複素多様体論.著書に,『軽装版 解析入門Ⅰ,Ⅱ』『複素解析』『幾何のおもしろさ』『幾何への誘い』『怠け数学者の記』『ボクは算数しか出来なかった』(いずれも岩波書店刊)などがある.
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