大和猿楽史参究

寺院史料の精緻な分析を通して

大和猿楽史参究
著者 表 章
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2005/03/24
ISBN 9784000023245
Cコード 3091
体裁 A5 ・ 上製 ・ 函入 ・ 476頁
在庫 品切れ
大和猿楽は,古より奈良地方の寺社に属し,その神事祭礼への奉仕を義務とした人々に担われ,南北朝期には飛躍的発展を遂げて,観阿弥・世阿弥父子による能楽大成の基盤となった芸能である.この大和猿楽を支配した諸寺院側の史料を精緻に分析して,猿楽から能への漸次的発展の軌跡を叙述する.戦後の能楽研究を領導した著者の積年の論究を集成.

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大和猿楽は,古より奈良地方の寺社に属し,その神事祭礼への奉仕を義務とした人々に担われ,南北朝期以後は芸能の主流となり,室町期における観阿弥・世阿弥父子の能楽大成の基盤となった芸能である.大和猿楽を支配した諸寺院側の史料を精緻に分析して,神事猿楽から能への漸次的発展の軌跡を叙述する.戦後の能楽研究を領導した著者の積年の論究を集成した.

■著者からのメッセージ

初めて能を見て,どうしてこんな異様なものが現代に生き残っているのか,不思議だった.大成者とされる世阿弥の著述――特に『申楽談儀』――を読んでみて,世阿弥が演じた能と現代の能とは別物なのではないかとの印象を強く受けた.そうした関心から能楽の研究に携わるようになっただけに,能楽の歴史についての考察が自身の研究の中で大きな比重を占めるようになったのは,自然な流れであったと思う.そして,能楽史について考察するに際して最も頻繁に参照したのが,恩師能勢朝次先生の『能楽源流考』であった.………
 傾倒する一方で,この問題がなぜ『能楽源流考』には論及されていないのかとか,『能楽源流考』のこの見解は違うのではないか,などと感じることが,だんだん増えてきた.恩師の不朽の大著を補正したいとの気持がいつからともなく強まってきたのである.それはけっして不遜なのではなく,越えようと努めるのが恩師の学恩に報いることだと信じていた.……
 『能楽源流考』に導かれ,その方法をまねる形で展開してきた私の能楽史研究だったが,豊富な新出資料のお蔭で,これは能勢先生にも褒めてもらえるだろうと自信を持てる論考も幾つかは発表できた.なぜか『能楽源流考』にまとまった考察のないテーマを扱った「多武峰の猿楽」や「薪猿楽の変遷」,二〇〇頁を越える長い論文になった「大和猿楽の「長」の性格の変遷」などがそれである.……

(「まえがき」より)
表 章(おもて あきら)
1927年生まれ.北海道稚内市出身.東京文理科大学卒業.
法政大学教授,野上記念法政大学能楽研究所所員・所長を経て,現在法政大学名誉教授.

著書 岩波文庫『申楽談儀』(岩波書店,1960年)
日本古典文学大系『謡曲集 上下』(共著,岩波書店,1960,63年)
日本思想大系『世阿弥 禅竹』(共著,岩波書店,1974年)
『能楽史新考(一)』(わんや書店,1980年)
『能楽史新考(二)』(わんや書店,1986年)
岩波講座『能・狂言』 I ・II(共編著,岩波書店,1987,88年)
『喜多流の成立と展開』(平凡社,1994年)
『世阿弥自筆能本集』(監修,岩波書店,1997年)ほか.

受賞情報

2010年度日本学士院賞・恩賜賞
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