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岩波科学ライブラリー
脳に刻まれたモラルの起源
人はなぜ善を求めるのか
道徳や倫理は人類進化のなかで生まれた.最新の脳科学研究が示唆する脳自身が幸せを感じる社会とは.
著者 | 金井 良太 著 |
---|---|
通し番号 | 209 |
ジャンル | 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー 書籍 > 岩波科学ライブラリー > 人間・心理 日本十進分類 > 自然科学 |
シリーズ | 岩波科学ライブラリー |
刊行日 | 2013/06/05 |
ISBN | 9784000296090 |
Cコード | 0311 |
体裁 | B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 130頁 |
在庫 | 品切れ |
モラル,いわゆる道徳とか倫理というと,人間に固有の客観的な理性に基づく判断だと考えられ,主観的で情動的な判断と区別される.しかし,最近の脳科学や進化心理学の研究によれば,モラルは,人類が進化的に獲得したものであり,むしろ生得的な認知能力に由来するという.脳自身が望ましいと思う社会は何かを明らかにした本.
■編集部からのメッセージ
目の前にかわいそうな人がいれば,何か力になれないだろうかと誰しも思う.ときに自ら犠牲になってでも他人のために働きたいと思うことだってある.そうは思いつつも,けっきょく実行できないときは,胸が締めつけられるような気になる.まさに,その人の人生観が行動を左右する.人間の人間たる行動だからである.
ところが,そうした行動をとるのは必ずしも人間だけではない.他の動物でも観察されている.そうならば,そのような利他行動,自己犠牲的な行動は,深い人生観に裏づけられた人間固有の行動選択というのとはちょっと違うのかもしれない.では何が…….
■編集部からのメッセージ
目の前にかわいそうな人がいれば,何か力になれないだろうかと誰しも思う.ときに自ら犠牲になってでも他人のために働きたいと思うことだってある.そうは思いつつも,けっきょく実行できないときは,胸が締めつけられるような気になる.まさに,その人の人生観が行動を左右する.人間の人間たる行動だからである.
ところが,そうした行動をとるのは必ずしも人間だけではない.他の動物でも観察されている.そうならば,そのような利他行動,自己犠牲的な行動は,深い人生観に裏づけられた人間固有の行動選択というのとはちょっと違うのかもしれない.では何が…….
*
最新の脳科学によれば,そうした不幸な状況にどの程度共感するかしないかの違いは,人それぞれの脳の構造の違いと密接に関係していることがわかってきた.しかも,脳の構造のどこが違うかというと,どうも他人の視線など,基本的な外的信号を処理する部分に大きな差があるようなのである.たとえば,他人の視線を意識させる眼の看板が周りにあるかないだけで,人間は行動を変えてしまうことがある.*
さまざまな知見を総合すると,脳がもっとも安心して機能できるのは,けっして残忍な行動が許される社会や自分だけが良かれと思うような社会ではない.脳は人とのつながりを求め,みなが協力的に振る舞える社会を希求している.*
『個性のわかる脳科学』につづき,次々と興味深い成果を発信する著者の入魂の1冊です.付録には,自分がどんな性向か(協力的か,利己的か,自由を求めるか,規律を守るかなど)を測る「質問用紙」を付けました.ぜひ自ら採点してみてください.
1 善悪という主観の脳科学
なぜ脳科学か/倫理の科学
[コラム]科学と哲学の分離
2 五つ倫理基準
倫理学の用語入門/モラルジレンマ/道徳判断における感情の役割/モラルファンデーション理論/脳のなかのモラルファンデーション
3 政治の脳科学
政治的性向を決める心理的要因/政治的信条とモラルファンデーションの関係/政治的信条と幸福度/政治的信条と相関する脳構造/政治的信条はどこまで生得的に決まっているのか
4 信頼と共感の脳科学
信頼の測り方/信頼を高めるホルモン――オキシトシン/オキシトシンのダークサイド/身体的接触の効用/信頼の遺伝子/幼年期の経験と信頼/共感の種類/共感の脳内機構
5 評判を気にする脳
負の互恵性/評判の起源/評判の成立条件/評判に対する脳の反応/眼の効用
6 幸福の脳科学
何が人を幸せにするか/ソーシャルキャピタル/友だちが多い人の脳/サルのソーシャルネットワーク/ソーシャルキャピタルの欠如としての孤独/孤独感の生得的基盤/幸福の二つの側面/生きがいを感じる脳/人それぞれの幸福
参考文献
《付録》
モラル/ファンデーションズ/クエスチョネア(MFQ30)
対人性反応性指標(interpersonal reactivity index(IRI))
なぜ脳科学か/倫理の科学
[コラム]科学と哲学の分離
2 五つ倫理基準
倫理学の用語入門/モラルジレンマ/道徳判断における感情の役割/モラルファンデーション理論/脳のなかのモラルファンデーション
3 政治の脳科学
政治的性向を決める心理的要因/政治的信条とモラルファンデーションの関係/政治的信条と幸福度/政治的信条と相関する脳構造/政治的信条はどこまで生得的に決まっているのか
4 信頼と共感の脳科学
信頼の測り方/信頼を高めるホルモン――オキシトシン/オキシトシンのダークサイド/身体的接触の効用/信頼の遺伝子/幼年期の経験と信頼/共感の種類/共感の脳内機構
5 評判を気にする脳
負の互恵性/評判の起源/評判の成立条件/評判に対する脳の反応/眼の効用
6 幸福の脳科学
何が人を幸せにするか/ソーシャルキャピタル/友だちが多い人の脳/サルのソーシャルネットワーク/ソーシャルキャピタルの欠如としての孤独/孤独感の生得的基盤/幸福の二つの側面/生きがいを感じる脳/人それぞれの幸福
参考文献
《付録》
モラル/ファンデーションズ/クエスチョネア(MFQ30)
対人性反応性指標(interpersonal reactivity index(IRI))
金井良太(かない りょうた)
1977東京都生まれ.京都大学生物物理学科を卒業後,オランダ・ユトレヒト大学で実験心理学PhD取得.カリフォルニア工科大学にて,下條信輔教授のもとで視覚経験と時間感覚の研究に従事.ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)にてリサーチアソシエイトを経て,現在は英国サセックス大学・サックラー意識研究センターにて准教授(Reader).科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員.主な研究テーマは認知神経科学からのアプローチによる意識研究と,脳科学の現実世界への応用技術の開発.著書に『個性のわかる脳科学』(岩波科学ライブラリー),共訳書に『意識の探求――神経生物学からのアプローチ』(クリストフ・コッホ著,岩波書店)がある.英語でのツイッターアカウントは「@kanair」.
1977東京都生まれ.京都大学生物物理学科を卒業後,オランダ・ユトレヒト大学で実験心理学PhD取得.カリフォルニア工科大学にて,下條信輔教授のもとで視覚経験と時間感覚の研究に従事.ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)にてリサーチアソシエイトを経て,現在は英国サセックス大学・サックラー意識研究センターにて准教授(Reader).科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員.主な研究テーマは認知神経科学からのアプローチによる意識研究と,脳科学の現実世界への応用技術の開発.著書に『個性のわかる脳科学』(岩波科学ライブラリー),共訳書に『意識の探求――神経生物学からのアプローチ』(クリストフ・コッホ著,岩波書店)がある.英語でのツイッターアカウントは「@kanair」.
書評情報
読売新聞(朝刊) 2013年11月10日
東京新聞(朝刊) 2013年9月22日
プレジデント 2013年7月29日号
書評空間 2013年7月27日掲載
毎日新聞(朝刊) 2013年7月25日
東京新聞(朝刊) 2013年9月22日
プレジデント 2013年7月29日号
書評空間 2013年7月27日掲載
毎日新聞(朝刊) 2013年7月25日