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岩波科学ライブラリー

ヒトはなぜ絵を描くのか

芸術認知科学への招待

ヒトとは何か? キーワードは想像と創造.チンパンジーとの比較や脳の機能,芸術と科学から迫ろう.

ヒトはなぜ絵を描くのか
著者 齋藤 亜矢
通し番号 221
ジャンル 書籍 > 岩波科学ライブラリー > 人間・心理
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2014/02/04
ISBN 9784000296212
Cコード 0311
体裁 B6 ・ 118頁
在庫 在庫あり
円と円を組み合わせて顔を描くヒトの子どもvsそれができないチンパンジー.DNAの違いわずか1.2%の両者の比較から面白いことがわかってきた.ヒトとは何か? 旧石器時代の洞窟壁画を訪ね,想像と創造をキーワードに脳の機能や言語の獲得から考察する.芸術と科学の行き来を楽しみながら考えよう.【資料図満載,カラー口絵1丁】


■編集部からのメッセージ
 新進気鋭の研究者による「ヒトとは何か?」に迫る本の登場です!
 著者は,京都大学の理学部,医学研究科を経て,博士課程から東京藝術大学に飛び込んだ「変わり種」.専門を問われれば,自らの造語により本書の副題にもある「芸術認知科学」と答えるのだそうです.現在,京都大学野生動物研究センター特定助教として,熊本サンクチュアリーでチンパンジーたちと共同研究の毎日を過ごしています.
 本書のキーワードは想像と創造.ヒトの子どもとチンパンジーの行動観察を通して,芸術と科学の行き来を楽しみます.たとえばヒトの子どもは円と円を組み合わせてアンパンマンなどの顔を描きますが,チンパンジーにはそれができません.DNAの違いはわずか1.2%なのに…….
 本書は,ヒトが絵を描いた最古の痕跡――旧石器時代の洞窟壁画――にインスピレーションを受ける話から始まります.ヒトにとっては普遍的ともいえる「描く」という行為は,生存や繁殖と結びつきません.なのになぜ,ヒトは描くこと,描かれたものに魅了されるのでしょうか.この問いに,子どもの描画の発達という個体発生的な軸と,それをチンパンジーの描画行動と比較する系統発生的な軸からアプローチし,脳の機能や言語の獲得という観点から説明しようと試みます.
 そのためのヒトの子どもとチンパンジーの比較・観察ですが……,はてさて,そこから何が見えてきたでしょう.それは読んでのお楽しみ.資料図満載,カラー口絵付き.著者の個人的なエピソードを交えながら,やさしい筆づかいで,一気に読まされること間違いなしです.
プロローグ 洞窟壁画を訪れる

1 描く心の起源を探る旅の出発点
クロマニョン人たちの絵筆/ヒトが絵を描き始めたころ/個体発生と系統発生の二つの視点

2 ヒトの子どもとチンパンジー
なぐり描きから表象へ/チンパンジーに絵筆/表象は描かない/シンボルを学習し,描かれた表象を理解するチンパンジー/チンパンジーはなぜ表象を描かないのか/チンパンジーの筆さばき/画竜点睛をかく/あいまいな形に具体的なモノのイメージを見立てて描く/洞窟壁画につながる

3 「ない」ものをイメージする力
石器製作や狩猟技術で磨かれた「イメージする力」/言語の獲得とイメージ/チンパンジーの子どもは,ヒトより記憶力がいい?/チンパンジーたちのモノの見方/木を見て森を見るヒト/動作を介した想像力/今を生きるチンパンジー/記号的な絵と写実的な絵/さかさまに描く子/さかさネコ耳図形に描く/見たモノでなく,知っているモノを描く

4 なぜ描くのか
ヒトはなぜ描くのか/描くことが「おもしろい」?/身体的な探索と内的なルール/イメージを外化するおもしろさ/イメージを共有する喜び/イメージと神話

5 想像する芸術
世界の見え方が変わる/概念を拡張するアート/概念をくつがえすアート/概念を拒絶するアート/想像から創造へ

エピローグ 芸術と科学の間で

 謝辞
 参考文献
齋藤亜矢(さいとう あや)
1978年茨城県生まれ.京都大学理学部,京都大学大学院医学研究科修士課程を経て,東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了(博士(美術)).日本学術振興会特別研究員,東京藝術大学非常勤講師等を経て,現在,京都大学野生動物研究センター特定助教.熊本サンクチュアリ勤務.
共著書に『人間とは何か――チンパンジー研究から見えてきたこと』(岩波書店),『恋う・癒す・究める 脳科学と芸術』(工作舎),『脳とアート――感覚と表現の脳科学』(医学書院)などがある.

書評情報

日経サイエンス 2014年5月号
公明新聞 2014年4月21日

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