岩波科学ライブラリー 241

大人の直観vs子どもの論理

子どもの脳は想像以上に論理的で,大人の脳は意外なほど直観的.脳の機能と発達の仕組みから解明する.

大人の直観vs子どもの論理
著者 辻本 悟史
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > シリーズ・講座・全集
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 人間・心理
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2015/08/25
ISBN 9784000296410
Cコード 0311
体裁 B6 ・ 並製 ・ 126頁
在庫 品切れ
直観に頼ると失敗する? 子どもから大人へ,ヒトは少しずつ論理的になっていく? 科学の答えは,どちらもNOだ.実は,子どもの脳は想像以上に〈論理的〉で,大人の脳は意外なほど〈直観的〉.日常生活で,人生で,そして進化の過程で,それが「うまくやっていく」秘訣であることを,脳の機能と発達の仕組みから解き明かす.

■著者からのメッセージ

何の気なしに人間の行動を見ていると,本当に不思議で興味深い.あの人はなぜ,あんな無駄なものを買っちゃったのか.どうして彼はあの子に恋をしたのか.なぜ自分は,わかっていてもこの癖をやめられないのか.多くの行動は,個別には確率や論理では説明がつかない.だけど,じつはそこにはそれなりの理由があるし,それが結局は上手くいく秘訣だったりする.それなら,その仕組みを知って日々の生活に活かさない手はないだろう.
 そのための鍵はやはり脳にありそうだ.ただし,はるか遠いご先祖からの進化の歴史と,生まれてからの発達の歴史,さまざまな時間スケールで,既成の学問体系にとらわれず視点を柔軟に持つことが大切だ.
 進化と発達が織りなす不思議な脳内世界.とにかくそれを多くの方々と共有したい.そして人と人とがつながる毎日を,今までよりもう少し楽しいものにしよう.そんな想いから本書は生まれた.
まえがき

1 間違いだらけの私たち
 わかっちゃいるけど/サンクコストの呪縛/モンティ・ホール問題/損はしたくない/そのワインを選んだワケ/恋人なら考えて見極める?/自分の身体に騙される/身体を使って騙してみる/理由まで勝手に作り出す/記憶は間違って植え付けられる

2 思いつきも悪くない
 どちらの足から踏み出そうか/考えるとうまくできないこともある/考えると買えなくなることもある/マジカルナンバー/記憶の分類/仕方がないのか、そのほうがよいのか/適応度を高める不合理な知覚/適応度を高める不合理な意思決定/至近要因と究極要因/それでもやはり不合理?/結局どちらでもよい

3 ともあれ理由は脳にある
 ひと目で咲いた恋の花/恋の相手は報酬/咲かせ続ける努力/論理的に「考える」とき/新しい脳?/脳の中のたくさんの「小さな世界」/世界のまとめ役はいるのか/まとめ役の候補/なるべく使わない方向で/訓練の賜物/脳にあった理由のまとめ

4 子どものほうが論理的?
 子どもにも注目したい/理論の軸としての論理的思考/見えないものは存在しない?/よく調べると実は知っていた/あんなことも、こんなことも/論理的な赤ちゃん/そもそも動物には得意なことがある/赤ちゃんにだって得意なことがある/赤ちゃんのコア知識と進化/子どもなりの試練/子どもは子ども、大人は大人

5 子どもには子どもなりの脳がある
 子どもの脳にも注目したい/脳の変化と知能の発達/逆U字の中身/接続の剪定と知覚の剪定/剪定のタイミング、そしてさらに/小さな世界の独立/適応度を高める遅い発達/若気の至り/遺伝と環境/子どもの脳は、大人の脳のミニチュアではない

6 視点を変えれば間違いも役に立つ
 クリスティンとクリストファー/視点の違い/チンパンジーの子どもと勝負する?/経験に裏打ちされた直観/フランクリンの功罪表の功罪/遺伝子との相互作用/個性の視点/わりとみんな思いは同じ

あとがき
参考文献/引用文献
辻本悟史(つじもと さとし)
1977年生まれ.北海道大学文学部(心理学専攻)を卒業後,北海道大学大学院医学研究科および米国国立精神衛生研究所にて,脳と心の仕組みや発達に関する基礎研究に従事.神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授,米調査会社ニールセンのニューロサイエンス・ディレクターとして,教育やビジネスへの脳科学の応用に取り組み,2014年10月より京都大学大学院情報学研究科准教授.博士(医学).

書評情報

公明新聞 2015年9月21日

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