岩波科学ライブラリー

ウイルスと人間

進化の過程で,人とウイルスはどう関わってきたのか.ウイルスの新たな脅威にどう対処し共存するかを語る.

ウイルスと人間
著者 山内 一也
通し番号 104
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 生命・医学
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2005/05/12
ISBN 9784000074445
Cコード 0345
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 124頁
在庫 品切れ
人間の生活パターンの変化に伴い,SARS,鳥インフルエンザなど新種のウイルスが脅威になってきている.ウイルスとはどのようなものか,進化の過程で,人とウイルスはどのように関わり,戦ってきたのか.ニパウイルス,サル痘など今感染のおそれがあるエマージングウイルスの脅威と,それにいかに対処し共存していくのか,第一人者が語る.


■著者からのメッセージ
 ウイルスが発見されたのは19世紀の終わりで,ウイルス学の歴史は百年ということになる.(中略)
 振り返ってみると,当初からウイルスは感染症の病原体であるという認識のもと,ワクチンによる急性ウイルス 感染症の予防がウイルス学における重要な課題としてとらえられてきた.その成果として天然痘根絶を初めとして,狂犬病,麻疹,ポリオなど昔から人類を苦しめてきた危険なウイルス感染症は制圧されてきた.一方で,野生動物から突然感染して社会に大きな衝撃を与えるエマージングウイルスの問題が20世紀終わり頃から注目されるようになり,この十年ほどの間に危険な病原体としてのウイルスの実態を紹介する書籍が相次いで出版された.私自身もエマージングウイルスに関する一般向け解説書をいくつか出版した.
  しかし,もっと広い視点から眺めると,ウイルスは生物の細胞に寄生する生命体である.ヒトの遺伝子が3万くらいあるのに対して,ウイルスはその百分の一以下の遺伝子を持っているにすぎない.それにもかかわらずウイルスは,8個の遺伝子のみを持つインフルエンザウイルスがスペイン風邪で数千万人の死亡を引き起こした例にみられるように,すさまじい力を発揮することがある.30億年前には地球上に出現していたと推測されるウイルスが,わずか20万年前に出現した人類に対して,なぜこのような影響を与えているのか.人類よりもはるかに長い歴史を持つウイルスの生命体としての存在意義は何なのかという疑問が浮かんでくる.
(本書「まえがき」より抜粋)
 まえがき
1 ウイルスの歴史は長く,人間の歴史は短い
2 進化の推進力となったウイルス
3 ウイルスはどのような「システム」か
4 ウイルスと生体のせめぎ合い
5 ウイルスに対抗する手段
6 現代社会が招くエマージングウイルス
7 エマージングウイルスの時代をどう生きるか
8 人間とウイルスの関係を考える
山内一也(やまのうち・かずや)
1931年生まれ.北里研究所,国立予防衛生研究所,東京大学医科学研究所教授を経て,現在,日本生物科学研究所主任研究員.東京大学名誉教授.著書に『狂牛病と人間』(岩波ブックレット),『キラーウイルス感染症』(双葉社),『異種移植』(河出書房新社),『プリオン病』(近代出版)ほか多数.訳書に『異種移植とはなにか』(岩波書店)、『カミング・プレイグ』(河出書房新社)ほか.

書評情報

図書館教育ニュース 2009年11月18日号
BOOK CLUB KAI Newsletter Vol.63(2006年春)
東京新聞(朝刊) 2005年6月5日

同じシリーズの書籍

ページトップへ戻る