岩波科学ライブラリー 161

鉄学 137億年の宇宙誌

素材として文明を支え,呼吸機能や地磁気に深く関わる鉄.宇宙でもっとも安定な物質を軸に新学問の誕生!

鉄学 137億年の宇宙誌
著者 宮本 英昭 , 橘 省吾 , 横山 広美
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 宇宙・地球
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2009/08/06
ISBN 9784000295611
Cコード 0344
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 122頁
在庫 品切れ
鉄は人類にとって切っても切り離せない.身の回りにある機械,車や建物などほとんどが鉄でできている.何よりも鉄はわたくしたちの体のヘモグロビンのなかに,また地球の真ん中には大きな固まりとして存在する.それは鉄がこの宇宙のなかでもっとも安定な物質だからだ.鉄を軸に宇宙・生命・人類を結ぶ新たな学問が誕生する!


■著者からのメッセージ
 (前略)こうした鉄の持つ重要な性質があるからこそ,ヘモグロビンの中心は鉄でなくてはならなかったのだ.さらに鉄は,酸素を使って体の隅々においてエネルギーを作る際にも,鍵となる役割を果たしている.鉄が無ければ,私たちは生きてゆくことができないのだ.
 驚くべきことに,これは私たち人間に限られた話ではない.実は現在地球で知られているほとんどすべての生物にとって,鉄は不可欠な元素である.呼吸や光合成,DNA合成,窒素固定など,生命体に必須ないくつもの機能において,化学的な理由から,鉄は中心的かつ不可欠な役割を果たしている.鉄が無ければ地球上のほとんどの生命体は,生きていくことができない.
 私たちは,地球以外で生命体をまだ発見していない.地球が特殊な天体である重要なひとつの理由は,地球が十分に大きな鉄の核を内部に持っているからである.宇宙空間は有害な放射線が容赦なく降り注ぐため,生命にとって危険極まりない.これを地表面に危険なレベルで届かないようにしているのは,地球の持っている磁場のお陰である.磁場は地球表層を生命体にとって快適な環境にしている重要な要素なのだ.この磁場は,地球内部の溶融した鉄が運動することで電流が流れるために形成されている.つまり,私たちは地球の奥深くにある鉄に守られているのだ.地球は水の惑星などと言われるが,むしろ地球は「鉄の惑星」なのだ.ちなみに月や,金星,現在の火星は磁場を持たない.
 このように生命にとって重要な役割を持ち,私たちの体の中から地球内部にまで遍在している鉄は,ではいったいどこから来たのだろうか?
(本文より,一部改変)
*

 この本は,いかに鉄が宇宙,地球,人類を結びつける重要な物質であるかを説いた初の本である.
1 一三七億年の鉄学
2 鉄とわたしたち人類――10^0~10^4年前
3 地球生命と鉄――10^5~10^9年前
4 地球と太陽系――10^9~10^10年前
5 鉄の起源
6 物質はどのようにして生まれたのか
7 おわりに
宮本英昭(みやもと ひであき)
1970年生まれ,東京大学総合研究博物館准教授.専門は固体惑星科学,特に惑星地質学.アリゾナ大学客員研究員を経て2006年より現職.博士(理学).

橘 省吾(たちばな しょうご)
1973年生まれ,東京大学大学院理学系研究科助教.専門は実験地球惑星科学.博士(理学).文部科学大臣表彰若手科学者賞,国際隕石学会ニーア賞など.

横山広美(よこやま ひろみ)
1975年生まれ,東京大学大学院理学系研究科准教授.専門は科学コミュニケーション(理系研究者と社会),科学広報.2004年,素粒子実験で博士(理学).

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2013年11月14日
化学 Vol.65 No.2(2010年2月)
現代化学 2009年12月号
NIPPON STEEL MONTHLY 2009年10月号
しんぶん赤旗 2009年9月20日

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