岩波科学ライブラリー 187

触感をつくる

《テクタイル》という考え方

ツルツル,ザラザラといった感触を人工的に再生する.この技術とデザインを融合させたアートの世界.

触感をつくる
このエントリーをはてなブックマークに追加
著者 仲谷 正史 , 筧 康明 , 白土 寛和
ジャンル 書籍 > 単行本
書籍 > 自然科学書
書籍 > シリーズ・講座・全集
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 情報・技術
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2011/12/06
ISBN 9784000295871
Cコード 0340
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 128頁
在庫 品切れ
ツルツル,ザラザラといった触感.すぐ判別できる一方,同じものなのに環境の変化によって,まったく違う感触を得ることがある.著者らは人工的に触感を再生,または自然にはない触感をつくる装置を開発.さらに工学や医療への応用だけでなく,この技術をデザインと融合させることで新しいアートの世界が広がっている.

■編集部からのメッセージ

ものに触れる,という動作がどれだけ重要かは,なにも今はやりのスマートフォンの世界だけではありません.
 外部の状況を知るのに視覚や聴覚から得られる情報の比重が大きいことはすぐに想像できることですが,ある実験によれば,じつは「触覚」からの情報がさらに広く大切なものであると言われています.
 視覚や聴覚が,目や耳といった人間のからだの特定の場所に限られているのに対し,触覚は全身に存在し,全身の表面どころか,口の中やのどの入り口,さらには,われわれの感覚では意識しませんが,臓器のあらゆる部分に存在します.もし,それらの感覚に支障があれば,これはもう生きてはいけないことはあきらかです.
 それほど重要な感覚ですが,音の聞き分け同様,触覚の感じ方も微妙なところがあります.それが触感です.触感は同じものに触れていても,対象そのものの温度やまわりの環境によっても異なります.ツルツル,スベスベな感じは一律ではありません.驚いたことに,そうした触感の違いを測る術はこれまでありませんでした.
 著者らは,そうした触感の測り方,記録の取り方の装置を開発し,ついに,触感を人工的に再現・再生することもできるようにしました.こうした研究が進むと,ツルツル,ゴツゴツといった触感を表現する言語のオノマトペ研究にも,また脳のなかで何がはたらいて触感の差異を生み出すのかといった研究にも広がりが出てきます.
 スマートフォンのディスプレイで,アイコンによっていろいろな触感が生じるようなら,目を閉じていても,真っ暗闇のなかでも操作が簡単にできるようになるかもしれません.
 まだこの研究は始まったばかりです.著者らの活動を象徴する『テクタイル』という概念やそれを表現する活動を通じて,いま国際的な取り組みがなされています.
仲谷正史(なかたに まさし)
1979年生まれ.東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情報理工学).同年(株)資生堂に入社.触知覚メカニズムの研究に関わる.
筧 康明(かけひ やすあき)
1979年生まれ.東京大学大学院学際情報学府博士課程修了.博士(学際情報学).慶應義塾大学環境情報学部准教授.実世界情報環境デザインに関わる.
白土寛和(しらど ひろかず)
1981年生まれ.慶應義塾大学大学院理工学研究科修了.同システムデザインマネジメント研究所研究員.ヒューマンマシンインタラクション研究に関わる.

書評情報

日経サイエンス 2012年3月号
毎日新聞(朝刊) 2012年1月4日
ページトップへ戻る