電子書籍対応
岩波科学ライブラリー

サボり上手な動物たち

海の中から新発見!

予想も常識も覆す,驚きの新発見が続出! 謎だらけの生態と〈本気の姿〉を明らかにする新しい海洋動物学.

サボり上手な動物たち
著者 佐藤 克文 , 森阪 匡通
通し番号 201
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 生態・環境
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2013/02/06
ISBN 9784000296014
Cコード 0345
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 126頁
在庫 在庫あり
一生懸命だからこそ,サボるんだ! 動物搭載型の記録装置による「バイオロギング」や「音」を使った最新の記録・分析システムで,予想も常識も覆す,驚きの新発見が続出.南極のペンギンやアザラシから,身近な日本のイルカ,ウミガメまで,謎に包まれた生きものたちの生態と〈本気の姿〉を明らかにする,新しい海洋動物学.[カラー版]


■著者からのメッセージ
 私には,突然視覚を奪われた経験がある.南極でアザラシ調査をしていたときのことだ.見渡す限り氷が広がる海面上で,スノーモービルを運転していた.目指すキャンプ地がある島は二〇キロメートルほど前方にあり,天気は快晴,視界を遮るものが何一つない海氷上では,ただひたすらスノーモービルをまっすぐ走らせていた.ところが,突然横風が吹いてきたかと思うと,海氷上に積もったパウダースノーが舞い上がり,辺り一面が乳白色に包まれてしまった.自分が目指す方角どころか,スノーモービルの先端も見えず,上下すらよくわからない.(中略)
 この経験を通して,ヒトはもっぱら視覚に頼って暮らしていることが実感できた.私が途方に暮れていたとき,氷の下をアザラシやペンギンが泳ぎ回っていたはずだが,彼らはいったいどうやって方角を見定めているのだろうか.陸上に比べて視界が大きく制限された水中では,視覚以外の感覚に頼らざるを得ない.視点が異なるだけでものの見方が変わるのだから,視覚以外の感覚に頼って生きている動物は,ヒトとは異なる世界観を持っている可能性がある.その世界観に迫るためには,動物を観察するだけでなく,たまには視点や手段を変えてみるのがいいだろう.
 本書を記した佐藤克文は,動物に小型のカメラや記録計を取り付ける「バイオロギング」と呼ばれる手法で,魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類を対象とした研究を進めてきた.森阪匡通は,音響を手段にクジラ類を研究してきた.どちらも行動学ないし生態学に関連した課題を扱っているが,その研究手段が王道から若干はずれている.そんな二人ならではの視点から,世間の人々が抱いている野生動物観からちょっと外れた〈本当の姿〉を紹介する.
――佐藤克文「まえがき」より
まえがき

1 実は見えない海の中
見えるようで見えない海の動物/陸上動物研究では観察が主体/海洋動物学者の工夫/観察する代わりに装置をくっつける/日本発の深度記録計/次々更新される最高記録/日本発の新名称「バイオロギング」/カメラを動物につけて“観る”/見えない世界では音が重要/想定外の発見

2 他者に依存する海鳥――動物カメラで調べる
動物はなぜ潜るのか/周辺の餌分布状況を調べたい/動物カメラ/予想外の展開/他人にくっついて飛ぶカツオドリ/シャチのおこぼれを失敬するアホウドリ/サバや漁師を使って餌をとるオオミズナギドリ/手探りで餌をとるヨーロッパヒメウ/「見えない」ことで「見えてくる」ものがある/動物目線で見えてきたこと

3 盗み聞きするイルカ――音で調べる
カメラも万能ではない/海は「音の世界」だった/人間に聞こえる音,動物に聞こえる音/イルカのエコーロケーション/イルカがふだん「見て」いるところ/たまに探索をサボるスナメリ/他人の「視線」を盗む/命にかかわる盗み聞き/エビがイルカの音を変える?/音でバレる体の大きさ/イルカの環世界

4 らせん状に沈むアザラシ――加速度で調べる
それは日本から始まった/浮力を使って浮上するペンギン/当初の目的は別にあった/種を変えて再確認/角度の測定/らせん状に沈んでいくアザラシ/ヘラ浮きのように立って休むクジラ/音響解析からヒントを得た時系列データ解析/動きの模様でみるヨーロッパヒメウの行動/頑張らないことも記録する加速度計

5 野生動物はサボりの達人だった!
不純な動機/深海のチーター/いざアフリカへ/何とか狩りをしてくれた/産卵期のウミガメは餌を食わなかった/ペンギンも飛ぶ鳥もやることは同じ/ペンギンはいつでも深く長く潜るわけではない/そんなに速くは泳がない水中の動物たち/ウミガメをのろまと言わないで/オオミズナギドリの通勤パターン/最大記録に着目するのはナンセンス/動物がサボるまじめな理由/死ぬほど頑張るとき/非効率の勧め

《コラム》津波に負けない/日本の音響データロガー「Aタグ」/ウミガメ調査再開/どっちが誠実?

あとがき
写真・図の出典
参考文献
佐藤克文(さとう かつふみ)
1967年宮城県生まれ.1995年京都大学大学院農学研究科修了(農学博士).日本学術振興会特別研究員,国立極地研究所助手を経て,2004年より東京大学大気海洋研究所准教授.専門は動物行動学,動物生理生態学など.著書に『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ――ハイテク海洋動物学への招待』(光文社新書)《2008年講談社科学出版賞》,『巨大翼竜は飛べたのか――スケールと行動の動物学』(平凡社新書)など.趣味は釣りとバーベキュー.

森阪匡通(もりさか ただみち)
1976年大阪府生まれ.2005年京都大学大学院理学研究科修了(理学博士).京都大学理学研究科リサーチフェロー,日本学術振興会特別研究員,東京大学大気海洋研究所特任研究員などを経て,2010年12月より京都大学野生動物研究センター特定助教.専門は動物音響学.著書に『ケトスの知恵――イルカとクジラのサイエンス』(共著;東海大学出版会)など.趣味は音楽とフットサル.

書評情報

しんぶん赤旗 2013年5月26日
毎日新聞(朝刊) 2013年3月10日
京都新聞(朝刊) 2013年3月10日

同じシリーズの書籍

電子書籍

価格は各電子書籍書店にてご確認ください

ページトップへ戻る