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岩波科学ライブラリー

ハトはなぜ首を振って歩くのか

いったい,あの動きは何なのか.古くて新しい首振りの謎に本気で迫る,世界初の首振り本.

ハトはなぜ首を振って歩くのか
著者 藤田 祐樹
通し番号 237
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 生態・環境
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2015/04/17
ISBN 9784000296373
Cコード 0345
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 126頁
在庫 在庫あり
気がつけばハトはいつでもどこでも,首を振って歩いている.あの動きは何なのか.なぜ,一歩に一回なのか.なぜ,ハトは振るのにカモは振らないのか……?冗談のようで奥が深い首振りの謎に徹底的に迫る,世界初の首振り本.おなじみの鳥たちのほか,同じ二足歩行の恐竜やヒトまで登場させながら,生きものたちの動きの妙を心ゆくまで味わう.


■著者からのメッセージ
 そもそも私がハトの首振りを研究しはじめたのは,あまりにも多くの友人たちから,それを問われたためだ.私事で恐縮だが,私はもともと大学でヒトの二足歩行の進化を研究している先生のもとで学んでいた.もちろん,ヒトの進化に興味があったからだ.だが,それ以前に動物がとても好きだった.何となく動物が好きで,動物の研究ができたら楽しいだろうなと思いながら,大学で専攻したのが,人類学という学問分野だった.
 だが,ひとつ大きな誤算があった.人類学という名がついていると,ヒトの研究をしなくては許されないような雰囲気が,何となくあるのだ.それはそうだ.鳥の研究をしていて人類学ですと言う勇気は私にもない.ヒトに近縁なサルならば研究してもよさそうだったが,サルを観察するのは簡単ではなかった.何度かサルを見に山へ足を運んだりしてみたが,なかなかうまい研究テーマを思いつかない.そこで,どうしようと悩みながら,半ば現実逃避でバードウォッチングに出かけることもしばしばあった.
 そんなある日,ふと気づくと,私の大好きな鳥たちは,みんな2本足で歩いていた.なんだ,何も苦労して遠くに出かけるより,目の前のこの動物を調べると,ずっとラクちんで,ずっと面白いのではないかと思った次第である.
 そのころ,友人たちも同じく研究テーマに頭を悩ませていたりした.友人どうしでよく,お互いの研究の進展を話し合ったり,時にはうまくいかないことをなぐさめあったりしたものだ.そんなときに,「鳥の歩行を研究してみようと思う」というと,決まってみんな,ハトの首振りの理由を問うのだった.
 誰もかれもが口をそろえて首振りの理由を知りたがる.そんなにみんな,首振りに興味があるのかと驚いた.私自身は,正直にいうとそれほど首振りに興味はなかった(もちろん今は誰よりも強い興味をもっている).だが,誰もが首振りの理由を聞くのなら,それをまず研究してやろうじゃないかと,ふと思った.正直にいって,遊び半分だったことは否定しない.遊び半分に始めた研究を,10年以上も続けることになるとは思ってもいなかった.
 どんなことでも真剣に取り組むと,思いがけない深みにハマっていくものである.研究してみると,鳥の首振りには,驚くほどイロイロな理由があったのだ.
――本文「コラム 首振りとの運命の出会い」より抜粋,一部改変
プロローグ ハトが首を振るその前に

1 動くことは生きること
動くとは,どういうことか/死なないために動く/子孫を残すためにも/運動に必要な構造/筋肉と骨格で体を動かす/動物たちの移動様式とその進化

2 ヒトが歩く,鳥が歩く
鳥とヒトの二足歩行/歩くことと走ること/エネルギー変換からみた歩行と走行/ケンケンやスキップはだめなのか/鳥たちは「歩く・走る・ホッピング」/脚先ほっそり/ダチョウの足と脚/渉禽類の長い脚/キウィの大また歩き/ペンギンはヨチヨチ歩き/短足が最優先?/ホッピングする鳥たち/トコトコ歩くスズメの不思議
〈コラム〉間子の七不思議

3 ハトはなぜ首を振るのか?
首振りに心奪われた人々/頭を静止させる鳥たち/箱入りのハト実験/頭の動きと眼の動き/ヒトは前を,ハトは横を/もっともよく見えるのは?/見る方向と動く方向/鳥の目はキョロキョロしない/眼球が動かないなら,首を動かせばいいじゃない/首振りで奥行きを知る?/首振りと歩き方/1歩に1回,その理由/1歩の長さと首の1振り/首振りと重心移動/頭の停止とゆっくり歩き/首振りで回転ストップ?/ハト首振りの謎,とりあえずのまとめ
〈コラム〉首振りとの運命の出会い

4 カモはなぜ首を振らないのか?
首を振らない鳥の不思議/体のつくりがちがう?/まわりが見えてないカモ?/たまに振らないサギ,たまに振るカモメ/サギは「なんとなく歩く?」/謎はすべて解けた!?/ハト近眼の可能性/カモはちょこちょこ歩いている/首振りの理由,今度こそまとめ/鳥類ハト化計画
〈コラム〉ハンブルクにおけるユリカモメのハト化

5 首を振らずにどこを振る
ホッピング時に首は振るの?/首を振らないチドリの採食/コアホウドリの奇妙な首振り/V字首振りの意味/意外に合理的?/コアホウドリと野球選手/泳ぐときに首を振るカイツブリ/首を上下に振る鳥たち/恐竜は首を振りますか?/セキレイは歩くときに尾を振る……か?/「歩きながら」振ってはいない/なぜ「首振り」か「尾振り」なのか?/脚を振ったら歩いてしまう,翼を振ったら飛んでしまう/アオシギの体振り

エピローグ たかが首振り,されど首振り――身近な動物観察のススメ

参考文献
藤田祐樹(ふじた まさき)
1974年生まれ.2003年に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了(理学博士).同大学院農学生命科学研究科の非常勤研究員を経て,2007年より沖縄県立博物館・美術館の人類学担当学芸員として勤務.近ごろは洞窟遺跡の発掘に汗を流す.人類学を専攻してヒトの歩行を研究するはずが,うっかりハトの歩行を研究してしまって以来,ハトはヒトに(名前が)最も近い鳥だと信じて研究を続ける.好きな言葉は「首振りと世界平和」.日本人が世界で最も首振りに詳しい国民になることを願っている.

書評情報

週刊現代 2019年3月9日号
デイリーポータルZ 2015年9月18日掲載
どうぶつと動物園 2015年秋号
BIRDER 2015年8月号
LiSA 2015年8月号
日経サイエンス 2015年7月号
朝日新聞(朝刊) 2015年6月28日
しんぶん赤旗 2015年6月21日
日本農業新聞 2015年5月30日
ダ・ヴィンチNEWS 2015年5月30日掲載
公明新聞 2015年5月11日
沖縄タイムス 2015年5月2日

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