岩波科学ライブラリー 244

音とことばのふしぎな世界

メイド声から英語の達人まで

文字に大小を感じたり,存在しない音を聴いたりしてしまうのはなぜか.音声をめぐる最新の話題満載.

音とことばのふしぎな世界
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著者 川原 繁人
通し番号 244
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 人間・心理
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2015/11/05
ISBN 9784000296441
Cコード 0380
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 128頁
定価 本体1,200円+税
在庫 在庫あり

■内容紹介

 「あ」と「い」はどっちが大きい? あるいは,「ゴジラ」と「コシラ」ではどうですか? こんな質問をされたら,あなたはどう答えますか.文字そのものには大小がないはずなのに,音で聴くと母語が何であるかにかかわらず大小を判断するそうです.その他,存在しない音を聴いてしまう脳の機能など,最先端の話題を楽しく紹介します.

■編集部からのメッセージ

 英語で、強さを意味する言葉にstrengthという語があります。見ればわかるように、母音は[e]の1文字です。なのに、わたしたちは、「すとれんぐす(sutorengusu)」というように、母音を5つも入れて発音しがちです。おそらく、この発話を聞いた英語話者の人は大笑いするでしょう。
 世の中には、もっと特殊な言語があり、モロッコで使われているベルベル語には、子音だけで作られた単語があるそうです。たとえば「あなたはそれを乾かして食べた」というのを[tsskʃftstttʃʃtstt]と言うそうでが、これを見て、どう発音すると思いますか。この本のなかにヒントがあります。
 考えてみれば、日本人が苦手とされる有名な[r]と[l]の発音の区別ですが、もともと音が違うから、それに充てる文字も異なったというわけです。私たち日本人もどちらも「ん」と発音しているようにみえて、それをローマ字表記するとき、[n]を使ったり[m]を使ったりして使い分けることがあります。
 ところで、そうした微妙な音の違いや、あるいは初めて出会った言語の発音を世界中のだれもが共通認識できるように表記する方法はあるのでしょうか。あるのです。それはまさに、本書が紹介するテーマの1つです。
 この本では、読者自身が本の内容を深く理解できるように、実際の発話ビデオや音声データをホームページから視聴できるようにしてあります。
 本書を教材として使いたい方には、授業などで簡単に利用できる練習問題が、以下のサイトに用意されています。ご覧ください。


■音声・動画

本書で紹介した音声や動画(YouTube)です。

  ◇第1章  
 
▲ ビデオ1-1(p.12)

 

  ◇第2章  
 
 
▲ビデオ2-1(p.32)   ▲ビデオ2-2(p.33)
 
▲ ビデオ2-3(p.33)

 

  ◇第3章  
 
  音声3-1 ベルベル語(p.45)
     

 

  ◇第4章  
 
  音声4-1 ツォンガ語の[ʃ](p.56)
  音声4-2 ツォンガ語の口笛摩擦音(p.56)
  音声4-3 EGGで測定した「ゾイド」発音時の声帯振動(p.60)
  音声4-4 EGGで測定した「ヘッド」発音時の声帯振動(p.60)
     
 
▲ビデオ4-1(p.50)   ▲ビデオ4-2(p.50)
 
 
▲ビデオ4-3(p.51)   ▲ビデオ4-4(p.52)
 
▲ ビデオ4-5(p.55)

 

  ◇第5章  
 
  音声5-1 100Hzの正弦波(p.68)
  音声5-2 500Hzの正弦波(p.68)
  音声5-3 英語の「rice」の発音(p.75)
  音声5-4 英語の「lice」の発音(p.75)
     
▲ ビデオ5-1(p.74)

 

  ◇第6章  
 
  音声6-1 [d]と[g]の中間の音を[l]の後においたもの.[g]に聞こえやすい.(p.87)
  音声6-2 [d]と[g]の中間の音を[r]の後においたもの.[d]に聞こえやすい.(p.87)
  音声6-3 [apa]から[aba]へ順次に変わっていく音の連鎖.[p]の知覚が[b]の知覚に突然変わる.(p.89)
  音声6-4 [ebuzo]から真ん中の[u]を少しずつ削り出したもの(p.91)
  音声6-5 上記の音をランダムに並べたもの(p.91)
プロローグ──日本人は英語が苦手?

第1章 「マル」と「ミル」はどちらが大きい?──音象徴
[a]は大きくて[i]は小さい?/「ゴジラ」が「コシラ」だったら?/「濁音=大きい」──口の中が広がるから/ケーラーの不思議な図──「タケテ」と「マルマ」/名前で見た目の魅力も変わってしまう?──名づけの音声学/「タ行」は男の子の音,「な行」は女の子の音?/「タ行」は「ツンな」名前,「な行」は「萌な」名前?/本当にツンツンしている「タ行」の音/《まとめ》

第2章 「あかさたな」とサンスクリット研究──音声学のはじまり
音声学の始まり──五十音図の起源は紀元前4 世紀!/調音点と調音法/「ひよこがぴよこ」で「母がパパ」?/五十音図に隠された規則性/日本語のラッパーは音声学者?──日本語ラップの韻の分析/「あいうえお」にも意味がある/顔文字の発明者は音声学者?/《まとめ》

第3章 世界中のことばを記録する方法──記述音声学

世界のすべての音を記録する国際音声記号/『マイ・フェア・レディ』と音声学の意外なつながり/アフリカの奥地からアマゾンの奥地まで/舌打ちで話すことば,子音だけで話すことば/日本の方言学/言語聴覚士にも必須の音声記号/《まとめ》

第4章 音を目で見る──調音音声学
MRI で[r]と[l]の違いを目で見てみよう/あなたは「巻く」派? 「 巻かない」派?/“鼻にかかった音” はどんな音?/MRI で日本語の母音をチェック!/舌の動きはエコー検査で!/EMA と顎と顔文字と/声帯の動きを首の外側から観察──EGG のテクニック/調音点・調音法をもっと正確に!──EPG/《まとめ》

第5章 声紋分析官への道──音響音声学
実は大事な三角関数/フーリエ解析──すべての音は1 つの音でできている/「あいうえお」の声紋とは?/声紋から探る[r]と[l]の違い/どうして電話の相手の声を間違える?──振り込め詐欺に注意!/秋葉原のメイド声ってどんな声?/アメリカ人だって,外国語習得は苦手/音響分析なら何でもお任せ──Praat/「高いのは小さく,低いのは大きい」?──音響的音象徴/「はい,チーズ!」の「チーズ」はどこから?/《まとめ》

第6章 ないはずの音が聞こえる日本人──知覚音声学
[r]と[l]──深層では何か違いを感じている日本人/カテゴリー知覚/[ebuzo]と[ebzo]が同じに聞こえる日本人/脳が音をでっちあげる?/日本人だけじゃない──[tl]と[kl]が同じに聞こえるアメリカ人/赤ちゃんは言語習得の天才/赤ちゃんはテレビで音は学ばない/完璧な外国語習得は無理?/《まとめ》

第7章 社会との接点を目指して──福祉音声学
消滅危機言語を救え!/現代社会に根付いている音声工学の技術/より効率的な外国語学習方法を目指して/失われる声を救う──マイボイス

エピローグ──さらなる視界へ

参考文献の紹介
川原繁人(かわはら しげと)
2002年国際基督教大学学士(教養),2007年University of Massachusetts, Amherst博士(言語学).ジョージア大学,ラトガーズ大学助教授を経て,現職の慶應義塾大学言語文化研究所准教授.専門は音声学・実験音韻論および一般言語学.最近の研究テーマは音声実験による音韻理論への貢献,音声学を通しての社会貢献,幼児の言語習得など.国際専門雑誌に論文を多数掲載.

書評情報

熊本日日新聞 2018年6月3日
徳島新聞 2018年6月3日
信濃毎日新聞 2018年6月3日
ZELKOVA(成蹊大学学内広報誌) 91号(2017年10月発行)
読売新聞(朝刊) 2015年12月20日
毎日新聞(朝刊) 2015年12月6日
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