岩波科学ライブラリー

菌世界紀行

誰も知らないきのこを追って

雪の下でしたたかに生きる菌たちの生態とともに綴る,爆笑・苦笑・失笑必至のとっておき〈菌道中〉.

菌世界紀行
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著者 星野 保
通し番号 245
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 生態・環境
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2015/12/04
ISBN 9784000296458
Cコード 0345
体裁 B6 ・ 144頁
定価 本体1,300円+税
在庫 在庫あり
北極,南極,そしてシベリア.大の男が這いつくばって,世界中の寒冷地にきのこを探す.大型動物との遭遇,酔っぱらいとの遭遇,泥酔,泥酔,そして拘束.幾多の艱難辛苦の果てに,菌たちとの感動の対面はかなうのか……!?雪や氷の下でしたたかに生きる菌たちの生態とともに綴る,爆笑・苦笑・失笑必至のとっておき〈菌道中〉.



■著者からのメッセージ
 「Я○▼☆@◇?!」叫び声が薄暗い車内に響き,驚いた私は夜中に目を覚ました.たぶん,(゚д゚)こんな顔だ.モスクワ行きの列車は,真夜中にどこかの駅で止まったらしい.そこここで怒りを含んだ大声がする.隣で寝ていたロシア人の相棒も起きたのだろう,「ホームにいるのは地元の人で,給料代わりに支給されたシャンデリアを売りにきてるんだろう」,そして「乗客がそれを安く買いたたいてるんだ」と小声で説明してくれた.見れば,ホームにいる人と車内の人とが,ドア越しにシャンデリアを引っ張り合って,ものすごい剣幕で叫んでいる.写真を撮るかと聞かれたが,しり込みした.自ら望んだとはいえ,こりゃ,すごいところに来てしまった.きのこどころじゃないなと思ったのが,1999年のことだ.
 私は,世界各地の積雪地を巡ることを夢見て,雪の下に生きる菌類――つまり,カビやきのこ,酵母などの仲間――の生き方を研究している菌類〈学者〉だ.
 こう書くと,私を知る人々からの失笑と耳の痛いご意見・ご指導の嵐が容易に想像できる(どうか,私に面と向かって言い放ったり,重要度:低とかのフラグをつけてメールしたりしないでいただきたい).たしかに一般的には,自分から学者などと名乗る人は明らかに胡散臭い.しかし,私は大丈夫だ.私は,ただ真面目に科学論文を書いて生きている,普通の研究者である.
 本書では, 雪腐病菌という非常にマイナーな(ほとんど誰も知らない)菌類の性質と,それを探す海外調査を,できる限り主観的に記述してみようと思う.ページを追ううちに,イマジネーション豊かな読者ならば,筆者の追体験ができるかもしれない.
 それでは……ようこそ,雪と氷,菌と人が織りなす世界へ!
――本文「プロローグ」より抜粋


■編集部からのメッセージ
 本書の校正も佳境を迎えたとある朝.著者の星野さんより,岩波書店のマーク「種まく人」の足元にも雪腐病菌が潜んでいるはず……との指摘をうけた時には戦慄をおぼえました.なんというご縁でしょう.一見,岩波書店では異色の一冊にも見えますが,その実,小社からまさに出るべくして出た本であるようです.
 ピンときていないあなたも,本書をお読みになったらきっと,膝を打たれることでしょう.見えないものまで見えるようになる摩訶不思議な一冊を,どうぞお楽しみください.
プロローグ 真夜中の怒号で始まるきのこ狩り

1 雪の下の小さな魔物――雪腐病菌とはなにか
雪の下でみんな寝ているわけじゃない/雪腐病菌,そして師匠との出会い/素顔の雪腐病菌たち/しかめっ面で心は躍る――植物の病気を探すには/菌核を探し,持ち帰る/そして旅がはじまる
 〈ぷちっと!豆知識〉1 生き物の種とはなにか

2 ぶらり北極一人旅
初めての海外出張/オスロに着いたら/自称・世界一働かない人たち/北極圏デビュー/銃がない!/雪腐の始まりの物語/ついに見つけた!/グリーンランドへGO!/生臭い風が吹くとき/イヌイットの人たちに囲まれて/北極のきのこの生き方

3 着いてもすぐに帰りたい――シベリアふたり旅
ホームレスから釣りをもらう相棒/初めてのシベリア/さらに奥へ/昼食という概念はありません/調査費捻出作戦/酒を飲むにもほどがある/人はよい,マフィアさえやさしい/ナイフをくわえてトイレに入りなさい/飛行機は来ません.なぜなら……/ついに拘束される/イシカリガマノホタケのたどった道/番外編 ケベック最高!
 〈ぷちっと!豆知識〉2 海外から試料を持ち帰るためには

4 荒波こえて南極へ――初めての集団行動
代打,星野 中国南極考察隊に/キングジョージ島に上陸す/ゾウアザラシをどかす方法/謎の技師,鍼を打つ/ロシア基地から戻れない/いざ,中山基地へ/南極と北極の雪腐病菌――似ているけれど,ちょっとちがう/昭和基地への道のり/絶叫する海へ再び/野外調査は体育会系/謎の変形菌あらわる/南極産・雪見○福!

エピローグ こんなとこにも雪は降る
雪腐病菌はどこから来て,どこへ行くのか/ノンアルコールな海外調査/ダーウィンと植村直巳,そして松浦武四郎

 おわりに――文庫本あとがき(案)と,この本を正しく理解していただくために
 さらに知識を深めたい読者のための文献紹介
星野 保(ほしの たもつ)
1964年東京都渋谷区生まれ.2015年現在,東広島市在住.1992年名古屋大学大学院農学研究科博士課程満期退学.博士(農学).現在,産業技術総合研究所機能化学研究部門バイオ変換グループ長.専門は菌類,なかでもガマノホタケ属菌の生理生態で,いまは菌類の低温適応に広く興味がある.本書の執筆を機に,岩波書店のマーク「種まく人」の足元に雪腐病菌が潜んでいることを心眼で発見した.好きな言葉は,建前では「One for all, All for one」(「大一大万大吉」でも可)としているが,本音では「かんたんに幸せになりたい」,心の奥底では「なんとかインチキできんのか」と考えている.

書評情報

日経サイエンス 2016年3月号
北海道新聞(朝刊) 2016年2月22日
朝日新聞(朝刊) 2016年2月21日
週刊新潮 2016年2月4日号

受賞情報

斉藤茂太賞(第1回)
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