安心のファシズム

支配されたがる人びと

人びとはテクノロジーのもたらす利便性を追求し,そこに「安心」を求める.その心性はどこからくるのか.

安心のファシズム
著者 斎藤 貴男
通し番号 新赤版 897
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 社会
刊行日 2004/07/21
ISBN 9784004308973
Cコード 0236
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 238頁
在庫 品切れ
携帯電話,住基ネット,ネット家電,自動改札機など,便利なテクノロジーにちらつく権力の影.人間の尊厳を冒され,道具にされる運命をしいられるにもかかわらず,それでも人びとはそこに「安心」を求める.自由から逃走し,支配されたがるその心性はどこからくるのか.著者の長年の取材,調査,研究を集大成する渾身の書き下ろし.
第一章 イラク人質事件と銃後の思想
 人質たちへの誹謗中傷/自作自演説の発信地は首相官邸/最悪の局面で噴き出した自己責任論/自己責任とは何か/「癒し」としての差別/人質バッシングに見られる尋常でない視点の高さ/超国家主義の復権

第二章 自動改札機と携帯電話
 自動改札機の存在感/自動改札機の普及史/アメとムチによる徹底/人間工学とサイバネティクス/生理的器官化した「ケータイ」/ケータイ市場の爆発とトラブルの急増/「つながってるネ♡」の本当の意味/脳のアウトソーシング/「動く商圏」と「息をする財布」

第三章 自由からの逃走
 自民党憲法調査会の議論から/先行する「心の教育」/日本中の子どもに『心のノート』を浸透させるということ/心のアンケート調査/コンフリクト・フリー/「お国のために命を投げ出す」国民を/サラリーマン税制と会社人間の習い性/ナチスの亡霊

第四章 監視カメラの心理学
 艶歌の成立しない世界/監視カメラに関する意識調査/杉並区監視カメラ専門家会議/監視カメラ“先進国“英国の実態/何がなんでも“防犯カメラ“/監視カメラの向こうとこちら/哲学としての監視カメラ論

第五章 社会ダーウィニズムと服従の論理
 ネオ封建時代への構想/“衛星プチ帝国“を志向する日本/誰がためのゼロ・トレランス/排除によってしか確保できないと考えられた「安全」/9・11以降のアメリカ監視社会/ハイテク・社会ダーウィニズムの恐怖/再び「コンフリクト・フリー」/『バトル・ロワイヤル』式

第六章 安心のファシズム
 自由でないことの「幸福」?/サウンド・バイト/ブッシュ大統領と小泉首相/新語法/ウンベルト・エーコの『永遠のファシズム』/思想統制事件の横行と「これから」

あとがき
斎藤貴男 (さいとうたかお)
1958年生れ
早稲田大学商学部卒,イギリス・バーミンガム大学修士(国際学MA)
「日本工業新聞」記者,「プレジデント」編集部,「週刊文春」記者を経て,フリージャーナリスト
著書:『梶原一騎伝』(新潮文庫)
   『カルト資本主義』(文春文庫)
   『バブルの復讐─精神の瓦礫』(講談社文庫)
   『プライバシー・クライシス』(文春新書)
   『機会不平等』(文春文庫)
   『空疎な小皇帝─「石原慎太郎」という問題』(岩波書店)
   『「非国民」のすすめ』(筑摩書房)
   『希望の仕事術』(平凡社新書)
   『平和と平等をあきらめない』(高橋哲哉氏との共著,晶文社)
   『絶望禁止!』(日本評論社)ほか多数

書評情報

ダ・ヴィンチ 2005年6月号
社会新報 2004年12月8日
読売新聞(夕刊) 2004年11月17日
NHK BS2「週刊ブックレビュー」 2004年10月24日放送
望星 2004年10月号
トップポイント 2004年10月号
全国商工新聞 2004年9月20日号
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