人物で語る物理入門 (下)

(全2巻)

物理学史上,重要な業績を残した人物の物語を読みながら,物理の基礎知識が身につく全く新しい入門書.

人物で語る物理入門 (下)
著者 米沢 富美子
通し番号 新赤版 981
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 自然科学
刊行日 2006/03/22
ISBN 9784004309819
Cコード 0242
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 254頁
在庫 品切れ

物理学の歴史を,重要な業績を残した人物を中心に,後世への影響も含めわかりやすく語る入門書.物理学は20世紀に,それまでの世界観を書き換えるほどの飛躍的な進歩をとげる.下巻では,この時期の量子論や宇宙論,クォーク,複雑系などをとりあげる.また,湯川秀樹や朝永振一郎など日本の物理学者の業績にも触れる.

第8章 空間がひずむ――一般相対性理論
 ―アルバート・アインシュタイン2―
第9章 「コペンハーゲン精神」の誕生
 ―ニールス・ボーア―
第10章 宇宙の果てを覗く
 ―エドウィン・ハッブル―
第11章 原子核物理学を築いた女性たち
 ―マリー・キュリーとリーゼ・マイトナー―
第12章 「原爆の父」の刻印を背負って
 ―ロバート・オッペンハイマー―
第13章 日本の物理学の揺籃期
 ―湯川秀樹と朝永振一郎―
第14章 情報化社会の開拓者
 ―ジョン・バーディーン―
第15章 クォークから複雑系へ
 ―マレイ・ゲルマン―

 あとがき
 文献案内
 人名索引
 物理の楽しさを伝えたい――ただそれだけが,本書執筆の動機でした.
 私自身は,周期表を眺めていれば百も千もの物語が心に浮かび,何日でも過ごすことができます.物理の研究を始めると,まわりのものが全て目に入らなくなり,文字通り寝食も忘れるのが常です.こんなに楽しいものを独り占めしていいのか,もっと多くの人たちに知ってもらえたらどれほどすばらしいか,そう考えました.
 物理そのものだけを本の看板にすると端から敬遠されるかもしれないので,人物を通して語ることにしました.物理だってその他のどの科学だって,それを扱っているのは生身の人間です.人間の営みとしての物理,という入口からなら,少しは安心して入ってもらえるかもしれない,と思ったのです.
 最初に執筆を依頼されたとき,スタンダードな入門書ではなく「米沢物理」を書いてほしい,と頼まれました.そんなおこがましいことはできませんが,記録や史実の解釈については,私はこう捉える,という完全な米沢流になっています.まあこれは自慢するほどのことはなく,史観は人ごとに異なるのが当たり前,にすぎないだけなのですが.
 スタンダードでないといいながら,取り上げた人物にかかわるテーマは,見事なばかりに大学の物理学科での授業科目をカバーしています.全くの偶然で,書き終えてから気がついて自分でも驚きました.
 科学史(第1章),力学(第2章&第3章),光学(第4章),電磁気学(第5章),熱力学・統計力学(第6章),特殊相対論(第7章),一般相対論(第8章),量子力学(第9章),宇宙論(第10章),原子核物理(第11章&第12章),素粒子物理(第13章&第15章),物性物理(第14章)――と,物理学科の学生が四年にわたって受ける授業を網羅しています.そういう次第で,本書の標題の「物理入門」の部分は,看板に偽りないことになりました.楽しい物語を聞くような気持ちで,知らず知らずのうちに物理も学べてしまう,そういう本になっていれば嬉しいです.
 最近,若い人たちの理系志望が減っていると聞きます.物理も自然科学の他の学問も,実はこれほど楽しくて面白いものはありません.もっともっと,物理や科学一般の楽しさを知ってほしいと思います.

書評情報

medical forum CHUGAI vol.21 No.1 2017
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