江戸化物の研究
草双紙に描かれた創作化物の誕生と展開
「カバット江戸化物論」を初めて集大成
江戸庶民に愛好された草双紙には,滑稽で愛嬌のある化物がしばしば登場する.著者はこの化物に着目,緻密な文献調査を重ね,独自の視点によって草双紙を捉え直してきた.本書には,積年の論考を集成.庶民の生活・文化・芸能等との関係も視野に入れながら,江戸都市文化の産物としての「創作された化物像」の特徴と変遷を鮮明にする.
はじめに
第一章 「創作」としての妖怪―馬琴作『化競丑満鐘』の笑い―
第一節 「近代の絵空言」と呼ばれる妖怪
第二節 『化競丑満鐘』の梗概
第三節 『化競丑満鐘』の特徴
第四節 『化競丑満鐘』と黄表紙
第五節 『化競丑満鐘』と豆腐小僧
第六節 まとめ
第二章 初期草双紙の化物尽くしの形成と発展
第一節 先行研究の紹介
(一)赤本・黒本・青本の定義/(二)初期草双紙の化物尽くしの先行研究
第二節 化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)赤本の趣向
第三節 化物退治談
(一)化物退治談の多様性/(二)「金平物」の原型とその変容/(三)様々な英雄たちと新型の化物/(四)悪者を懲らしめる化物たち/(五)化物退治談を逆転する/(六)国立国会図書館蔵本『はけもの』について/(七)まとめ
第四節 文芸作品の化物見立て
(一)文芸作品の見立てと取材/(二)化物の面影が薄い『化物義経記』/(三)化物が脇役をつとめる/(四)『化物忠臣蔵』と﹁化物見立て」/(五)別の趣向との混合
第五節 異類合戦物
(一)化物同士の分け方/(二)人間系の化物対動物系の化物『見こし入道』『化くるま引』/(三)化物と擬人化の問題『陸海妖敲込』/(四)『流風妖相生の盃』考察/(五)『化物大福帳』考察/(六)新しい趣向への挑戦『化物親玉尽』『ぬゑのたんじやう』
第六節 上方絵本の化物尽くしについて
第七節 まとめ 富川房信の化物世界の特徴
第三章 黄表紙の化物尽くしの変容
第一節 先行研究の紹介
(一)黄表紙の定義/(二)黄表紙の化物尽くしの先行研究
第二節 黄表紙の化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)化物尽くしと黄表紙の出版状況/(三)黄表紙の化物尽くしの主な趣向
第三節 古い趣向の継続性
(一)化物退治談と金平/(二)化物退治談と笑い/(三)化物同士の異類合戦物/(四)文芸作品に取材/(五)文芸作品の見立て
第四節 新しい趣向の導入
(一)黄表紙と笑い/(二)笑わせる化物と笑わせない化物/(三)人間にかなわぬ化物/(四)人間世界の見立てと箱根の先/(五)十返舎一九の化物尽くし
第五節 まとめ
第四章 化物尽くしの黄表紙と合成本をめぐって
第一節 『今昔化物親玉』『物化世櫃鉢木』の合成改題本の事例
(一)『今昔化物親玉』の刊年の問題/(二)『今昔化物親玉』の梗概/(三)『物化世櫃鉢木』の梗概/(四)『見越入道一代記』『化物一代記』の合成改題本/(五)一貫した作品を作る意図/(六)化物尽くしの黄表紙と物語性
第二節 『御存之化物』『変化物春遊』の合成本の事例
(一)『御存之化物』『変化物春遊』の梗概/(二)『御存之化物』の合成本の体裁/(三)合成本『御存之化物』の内容
第三節 『化物見越松』『信有奇怪会』の合成改題本の事例
(一)『信有奇怪会』の梗概/(二)『化物見越松』の梗概/(三)『怪談深山桜』の合成改題本
第四節 まとめ
第五章 鬼娘の系譜―化物と見世物―
第一節 随筆のなかの鬼娘
第二節 鬼娘の事実と虚像
(一)鬼娘が登場する当時の文学作品/(二)際物の黄表紙と滑稽本の梗概/(三)見世物と一致する部分/(四)鬼のイメージを踏まえた部分/(五)際物風の黄表紙と化物尽くし
第三節 鬼娘の変容
(一)鬼娘が登場する草双紙/(二)鬼娘の容貌の変容/(三)鬼娘と黄表紙の笑い/(四)『御子様方御好ニ附怪席料理献立』と化物尽くし
第四節 鬼娘と化物
第五節 まとめ
第六章 所帯道具の化物の系譜―化物と擬人化―
第一節 「付喪神」という呼称について
第二節 所帯道具の化物と擬人化
第三節 『百鬼夜行絵巻』と草双紙
第四節 所帯道具の化物の役割
第五節 まとめ
おわりに
あとがき
第一章 「創作」としての妖怪―馬琴作『化競丑満鐘』の笑い―
第一節 「近代の絵空言」と呼ばれる妖怪
第二節 『化競丑満鐘』の梗概
第三節 『化競丑満鐘』の特徴
第四節 『化競丑満鐘』と黄表紙
第五節 『化競丑満鐘』と豆腐小僧
第六節 まとめ
第二章 初期草双紙の化物尽くしの形成と発展
第一節 先行研究の紹介
(一)赤本・黒本・青本の定義/(二)初期草双紙の化物尽くしの先行研究
第二節 化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)赤本の趣向
第三節 化物退治談
(一)化物退治談の多様性/(二)「金平物」の原型とその変容/(三)様々な英雄たちと新型の化物/(四)悪者を懲らしめる化物たち/(五)化物退治談を逆転する/(六)国立国会図書館蔵本『はけもの』について/(七)まとめ
第四節 文芸作品の化物見立て
(一)文芸作品の見立てと取材/(二)化物の面影が薄い『化物義経記』/(三)化物が脇役をつとめる/(四)『化物忠臣蔵』と﹁化物見立て」/(五)別の趣向との混合
第五節 異類合戦物
(一)化物同士の分け方/(二)人間系の化物対動物系の化物『見こし入道』『化くるま引』/(三)化物と擬人化の問題『陸海妖敲込』/(四)『流風妖相生の盃』考察/(五)『化物大福帳』考察/(六)新しい趣向への挑戦『化物親玉尽』『ぬゑのたんじやう』
第六節 上方絵本の化物尽くしについて
第七節 まとめ 富川房信の化物世界の特徴
第三章 黄表紙の化物尽くしの変容
第一節 先行研究の紹介
(一)黄表紙の定義/(二)黄表紙の化物尽くしの先行研究
第二節 黄表紙の化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)化物尽くしと黄表紙の出版状況/(三)黄表紙の化物尽くしの主な趣向
第三節 古い趣向の継続性
(一)化物退治談と金平/(二)化物退治談と笑い/(三)化物同士の異類合戦物/(四)文芸作品に取材/(五)文芸作品の見立て
第四節 新しい趣向の導入
(一)黄表紙と笑い/(二)笑わせる化物と笑わせない化物/(三)人間にかなわぬ化物/(四)人間世界の見立てと箱根の先/(五)十返舎一九の化物尽くし
第五節 まとめ
第四章 化物尽くしの黄表紙と合成本をめぐって
第一節 『今昔化物親玉』『物化世櫃鉢木』の合成改題本の事例
(一)『今昔化物親玉』の刊年の問題/(二)『今昔化物親玉』の梗概/(三)『物化世櫃鉢木』の梗概/(四)『見越入道一代記』『化物一代記』の合成改題本/(五)一貫した作品を作る意図/(六)化物尽くしの黄表紙と物語性
第二節 『御存之化物』『変化物春遊』の合成本の事例
(一)『御存之化物』『変化物春遊』の梗概/(二)『御存之化物』の合成本の体裁/(三)合成本『御存之化物』の内容
第三節 『化物見越松』『信有奇怪会』の合成改題本の事例
(一)『信有奇怪会』の梗概/(二)『化物見越松』の梗概/(三)『怪談深山桜』の合成改題本
第四節 まとめ
第五章 鬼娘の系譜―化物と見世物―
第一節 随筆のなかの鬼娘
第二節 鬼娘の事実と虚像
(一)鬼娘が登場する当時の文学作品/(二)際物の黄表紙と滑稽本の梗概/(三)見世物と一致する部分/(四)鬼のイメージを踏まえた部分/(五)際物風の黄表紙と化物尽くし
第三節 鬼娘の変容
(一)鬼娘が登場する草双紙/(二)鬼娘の容貌の変容/(三)鬼娘と黄表紙の笑い/(四)『御子様方御好ニ附怪席料理献立』と化物尽くし
第四節 鬼娘と化物
第五節 まとめ
第六章 所帯道具の化物の系譜―化物と擬人化―
第一節 「付喪神」という呼称について
第二節 所帯道具の化物と擬人化
第三節 『百鬼夜行絵巻』と草双紙
第四節 所帯道具の化物の役割
第五節 まとめ
おわりに
あとがき
アダム・カバット(Adam Kabat)
1954年アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ.1979年来日.東京大学大学院比較文学比較文化専攻課程修了.武蔵大学教授.日本近世文学を専攻,独自の視点で江戸の妖怪・化物を研究.
主な著書に『江戸の化物草双紙の人気者たち』(岩波書店),『江戸滑稽化物尽くし』(講談社学術文庫),『ももんがあ対見越入道――江戸の化物たち』(講談社),『妖怪草紙――くずし字入門』(柏書房),『大江戸化物図譜』(小学館文庫),『江戸の可愛らしい化物たち』(祥伝社新書)など.校注・編著書に『江戸化物草紙』(角川ソフィア文庫),『大江戸化物細見』(小学館).
1954年アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ.1979年来日.東京大学大学院比較文学比較文化専攻課程修了.武蔵大学教授.日本近世文学を専攻,独自の視点で江戸の妖怪・化物を研究.
主な著書に『江戸の化物草双紙の人気者たち』(岩波書店),『江戸滑稽化物尽くし』(講談社学術文庫),『ももんがあ対見越入道――江戸の化物たち』(講談社),『妖怪草紙――くずし字入門』(柏書房),『大江戸化物図譜』(小学館文庫),『江戸の可愛らしい化物たち』(祥伝社新書)など.校注・編著書に『江戸化物草紙』(角川ソフィア文庫),『大江戸化物細見』(小学館).
書評情報
週刊読書人 2017年5月26日
京都新聞 2017年4月16日
京都新聞 2017年4月16日