江戸化物の研究

草双紙に描かれた創作化物の誕生と展開

「カバット江戸化物論」を初めて集大成

江戸化物の研究
著者 アダム・カバット
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2017/02/23
ISBN 9784000222990
Cコード 3091
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 362頁
在庫 品切れ

江戸庶民に愛好された草双紙には,滑稽で愛嬌のある化物がしばしば登場する.著者はこの化物に着目,緻密な文献調査を重ね,独自の視点によって草双紙を捉え直してきた.本書には,積年の論考を集成.庶民の生活・文化・芸能等との関係も視野に入れながら,江戸都市文化の産物としての「創作された化物像」の特徴と変遷を鮮明にする.

はじめに

第一章 「創作」としての妖怪―馬琴作『化競丑満鐘』の笑い―
第一節  「近代の絵空言」と呼ばれる妖怪
第二節 『化競丑満鐘』の梗概
第三節 『化競丑満鐘』の特徴
第四節 『化競丑満鐘』と黄表紙
第五節 『化競丑満鐘』と豆腐小僧
第六節 まとめ

第二章 初期草双紙の化物尽くしの形成と発展
第一節 先行研究の紹介
(一)赤本・黒本・青本の定義/(二)初期草双紙の化物尽くしの先行研究
第二節 化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)赤本の趣向
第三節 化物退治談
(一)化物退治談の多様性/(二)「金平物」の原型とその変容/(三)様々な英雄たちと新型の化物/(四)悪者を懲らしめる化物たち/(五)化物退治談を逆転する/(六)国立国会図書館蔵本『はけもの』について/(七)まとめ
第四節 文芸作品の化物見立て
(一)文芸作品の見立てと取材/(二)化物の面影が薄い『化物義経記』/(三)化物が脇役をつとめる/(四)『化物忠臣蔵』と﹁化物見立て」/(五)別の趣向との混合
第五節 異類合戦物
(一)化物同士の分け方/(二)人間系の化物対動物系の化物『見こし入道』『化くるま引』/(三)化物と擬人化の問題『陸海妖敲込』/(四)『流風妖相生の盃』考察/(五)『化物大福帳』考察/(六)新しい趣向への挑戦『化物親玉尽』『ぬゑのたんじやう』
第六節 上方絵本の化物尽くしについて
第七節 まとめ 富川房信の化物世界の特徴

第三章 黄表紙の化物尽くしの変容
第一節 先行研究の紹介
(一)黄表紙の定義/(二)黄表紙の化物尽くしの先行研究
第二節 黄表紙の化物尽くしの流れ
(一)化物尽くしの一覧表/(二)化物尽くしと黄表紙の出版状況/(三)黄表紙の化物尽くしの主な趣向
第三節 古い趣向の継続性
(一)化物退治談と金平/(二)化物退治談と笑い/(三)化物同士の異類合戦物/(四)文芸作品に取材/(五)文芸作品の見立て
第四節 新しい趣向の導入
(一)黄表紙と笑い/(二)笑わせる化物と笑わせない化物/(三)人間にかなわぬ化物/(四)人間世界の見立てと箱根の先/(五)十返舎一九の化物尽くし
第五節 まとめ

第四章 化物尽くしの黄表紙と合成本をめぐって
第一節 『今昔化物親玉』『物化世櫃鉢木』の合成改題本の事例
(一)『今昔化物親玉』の刊年の問題/(二)『今昔化物親玉』の梗概/(三)『物化世櫃鉢木』の梗概/(四)『見越入道一代記』『化物一代記』の合成改題本/(五)一貫した作品を作る意図/(六)化物尽くしの黄表紙と物語性
第二節 『御存之化物』『変化物春遊』の合成本の事例
(一)『御存之化物』『変化物春遊』の梗概/(二)『御存之化物』の合成本の体裁/(三)合成本『御存之化物』の内容
第三節 『化物見越松』『信有奇怪会』の合成改題本の事例
(一)『信有奇怪会』の梗概/(二)『化物見越松』の梗概/(三)『怪談深山桜』の合成改題本
第四節 まとめ

第五章 鬼娘の系譜―化物と見世物―
第一節 随筆のなかの鬼娘
第二節 鬼娘の事実と虚像
(一)鬼娘が登場する当時の文学作品/(二)際物の黄表紙と滑稽本の梗概/(三)見世物と一致する部分/(四)鬼のイメージを踏まえた部分/(五)際物風の黄表紙と化物尽くし
第三節 鬼娘の変容
(一)鬼娘が登場する草双紙/(二)鬼娘の容貌の変容/(三)鬼娘と黄表紙の笑い/(四)『御子様方御好ニ附怪席料理献立』と化物尽くし
第四節 鬼娘と化物
第五節 まとめ

第六章 所帯道具の化物の系譜―化物と擬人化―
第一節 「付喪神」という呼称について
第二節 所帯道具の化物と擬人化
第三節 『百鬼夜行絵巻』と草双紙
第四節 所帯道具の化物の役割
第五節 まとめ

おわりに
あとがき
アダム・カバット(Adam Kabat)
1954年アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ.1979年来日.東京大学大学院比較文学比較文化専攻課程修了.武蔵大学教授.日本近世文学を専攻,独自の視点で江戸の妖怪・化物を研究.
主な著書に『江戸の化物草双紙の人気者たち』(岩波書店),『江戸滑稽化物尽くし』(講談社学術文庫),『ももんがあ対見越入道――江戸の化物たち』(講談社),『妖怪草紙――くずし字入門』(柏書房),『大江戸化物図譜』(小学館文庫),『江戸の可愛らしい化物たち』(祥伝社新書)など.校注・編著書に『江戸化物草紙』(角川ソフィア文庫),『大江戸化物細見』(小学館).

書評情報

週刊読書人 2017年5月26日
京都新聞 2017年4月16日
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