ポスト多文化主義教育が描く宗教

イギリス〈共同体の結束〉政策の功罪

ポスト多文化主義教育が描く宗教
著者 藤原 聖子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 宗教
刊行日 2017/03/23
ISBN 9784000247955
Cコード 0014
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 302頁
在庫 品切れ

欧米でテロが日常の風景となるなか,イギリスでは公教育の宗教科の教科書と授業方法を,それまでの多文化主義型から,学校・地域社会・国家・世界の諸レベルで「共同体の結束」を促進する内容に改める試みが本格化してきた.それにより宗教はどう変形され,利用されているのか.授業例や問題例を多数示しながら検証する.

序 章 宗教と教育におけるコミュニタリアン的転回
 一 宗教に揺れるイギリスの教育界
 二 先行研究――公共宗教論・ポストセキュラー論と宗教教育研究
 三 本書の対象・方法と構成

第一章 「宗教と暴力」の学習方法――日英教科書比較
 一 執筆者としての経験から
 二 日本の他の教科書ではどうなっているか
 三 イギリスの教科書での「宗教と暴力」の学習方法
 四 テロに抗する教育の実践とコミュニタリアニズム

第二章 イギリスの宗教教育史――コミュニタリアン的転回以前
 一 公教育化~一九四四年教育法制定まで
 二 一九四四年教育法~一九六〇年前後
 三 一九六〇年代――「世界の諸宗教」教育の始まり
 四 宗教現象学的「世界の諸宗教」学習
 五 一九八八年教育改革法制定前後

第三章 共同体の結束へ――二〇〇〇年代以降の宗教教育
 一 多文化主義の陥穽
 二 「共同体の結束」という学習目標の導入
 三 教育界の対応
 四 疑われるイスラム学校
 五 異なる「自由」の衝突

第四章 異文化理解型からどう変化したか――二〇一〇年代の教科書の分析①
 一 構成に現れる問題志向型への転換
 二 共同体の結束を促進する課題のパターン
 三 異文化理解型からの変化

第五章 公共的宗教の諸相――二〇一〇年代の教科書の分析②
 一 前景化する宗教の公益面
 二 宗教内部の多様性が、社会問題に対する意見の多様性に
 三 現代的価値観にひきつけた解釈か
 四 仏教のイスラム化?
 五 宗教集団との力学の影響

終 章 コミュニタリアン的転回の功罪


あとがき
イギリス宗教教育関係文献一覧
藤原聖子(ふじわら さとこ)
1963年東京生まれ.東京大学文学部卒業,シカゴ大学大学院博士課程修了(Ph.D.).現在,東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授(2017年4月から同教授).比較宗教学.
著書に,『教科書の中の宗教――この奇妙な実態』(岩波新書),『世界は宗教とこうしてつきあっている――社会人の宗教リテラシー入門』(共編著,弘文堂),『現代アメリカ宗教地図』(平凡社新書),『世界の教科書でよむ〈宗教〉』(ちくまプリマー新書),『「聖」概念と近代――批判的比較宗教学に向けて』(大正大学出版会)など.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2017年5月28日
ページトップへ戻る