『レ・ミゼラブル』の世界

二人のナポレオンとユゴーの物語

『レ・ミゼラブル』の世界
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著者 西永 良成
通し番号 新赤版 1655
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 文学
刊行日 2017/03/22
ISBN 9784004316558
Cコード 0297
体裁 新書 ・ 224頁
定価 本体780円+税
在庫 在庫あり

フランスで聖書の次に読まれ,その名を広く知られる『レ・ミゼラブル』.その長大さだけでなく,頻出する作家の難解な「蘊蓄」により,読者の通読が阻まれる小説でもある.だが,作品の魅力はその「蘊蓄」にこそある.作家の伝記とともに成立過程をたどり,亡命先で完成された畢生の大作に織り込まれたユゴーの思想を繙く.

はじめに

第1章 『レ・ミゼラブル』とはどんな小説か
 読みづらい小説/小説の構成とあらすじ/第一部「ファンチーヌ」/第二部「コゼット」/第三部「マリユス」/第四部「プリュメ通りの牧歌とサン・ドニ通りの叙事詩」/第五部「ジャン・ヴァルジャン」/演劇的な手法/数頁にわたる長台詞/大げさな言葉遣い/「哲学的な部分」/執筆の中断と再執筆/フランス革命とナポレオン/波瀾万丈の世紀/小説の時代設定

第2章 ふたりのナポレオンと『レ・ミゼラブル』
 ナポレオンとフランス小説/遍在するナポレオン/ふたりの男の年代的符合/ナポレオンをめぐる両親の思想/ユゴーとマリユス/詩作の神童の王党主義/ナポレオン崇拝の詩/皇帝の帰還/ナポレオン一族復権運動/アブラ虫と化す英雄/偉大さよりも善良さを/ユゴーの政治参加/公女エレーヌと議員選出/四八年の二月革命と執筆の中断/共和国臨時政府と普通選挙/六月暴動とその鎮圧/大統領選挙の前夜/策士ルイ・ナポレオンの登場/ユゴーの応援とルイ・ナポレオンの裏切り/ユゴーの名演説/宰相のクーデターと詩人の亡命

第3章 再執筆とナポレオンとの訣別
 亡命作家ユゴーの反撃/冊子『小ナポレオン』の主張/抵抗の呼びかけとさらなる攻撃/懲罰詩集の「預言」/激しい怒りと叫び/ユゴーとナポレオンの「贖罪」/孤高の戦い/自由と良心の象徴として/ワーテルローで見たもの/内面の革命

第4章 ジャン・ヴァルジャンとはどういう人物か
 ジャン・ヴァルジャンの造形/貧困と刑務所が生んだ犯罪者/宗教的回心/良き市長として/良心の正念場/市長の逡巡とキリストの受難/神意に導かれて/父親としての幸福/よみがえる憎悪/十字架を背負って/最大の「良心の正念場」/赦しと死/一九世紀のキリスト像として/神話的創造

第5章 「哲学的な部分」とユゴーの思想
 (1)貧困と社会主義
 貧困の描写/貧困の言語/隠語という新しい美/時代的な課題としての貧困/社会問題への関心/『レ・ミゼラブル』における社会主義/常套句としての政治思想/精神の社会主義/具体的なアイディア
 (2)進歩という思想
 三二年蜂起を取り上げた理由/暴動と蜂起/理想を求めた敗者たちへの共感/進歩という理想/精神の進歩史観/進歩はブラックユーモアか/永久革命としての進歩/人間性への信頼と期待/世代を超えて引き継がれる進歩
 (3)死刑廃止論
 司教の衝撃/公開処刑の目撃/『死刑囚最後の日』の主張/制度廃止のための奮闘/ユゴーの成果
 (4)宗教観
 無限という観念/無宗教者にも感受される無限/制度・政治としての宗教の批判/権威からの自由

おわりに
年 表
主要参考文献
西永良成(にしなが よしなり)
1944年富山生まれ.東京外国語大学名誉教授.専門はフランス文学.2012~14年に,ちくま文庫から『レ・ミゼラブル』全5巻の新訳を刊行.
主な著書に『サルトルの晩年』(中公新書),『ミラン・クンデラの思想』(平凡社選書),『〈個人〉の行方――ルネ・ジラールと現代社会』(大修館書店),『激情と神秘――ルネ・シャールの詩と思想』(岩波書店)など.訳書に,ミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』(集英社文庫),『存在の耐えられない軽さ』(河出書房新社),『冗談』『小説の技法』(岩波文庫)などの他,サルトル,デュマ・フィスなど多数.

書評情報

西日本新聞(夕刊) 2017年6月26日
図書新聞 2017年6月10日
公明新聞 2017年5月29日
しんぶん赤旗 2017年4月30日
日本経済新聞(朝刊) 2017年5月6日
朝日新聞(朝刊) 2017年4月16日
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