権力と孤独

演出家 蜷川幸雄の時代

斬新な演出手法をとりながら,常に時代の中心にあり,演劇界の頂点に君臨した演出家・蜷川幸雄.常に格闘し続けた生涯を綴る.

権力と孤独
著者 長谷部 浩
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2017/04/21
ISBN 9784000611985
Cコード 0074
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 278頁
定価 2,310円
在庫 在庫あり

日本のみならず,世界の演劇界を牽引した演出家・蜷川幸雄.固定概念を破る演出手法をとりながら,常に時代の中心にあり,演劇界の頂点に君臨し続けた.一方で安住することを嫌い,古いものを壊し,新しい血を入れることに迷いがなかった.権力と孤独,王道と異端,中央と辺境――相反するものの間で格闘し続けた,その生涯を綴る.

一 蜷川幸雄はバイクのヘルメットを隣席にどさりと置いた
 『稽古場という名の劇場で上演される三人姉妹』 一九八四年秋

二 キューポラの町に生まれて
 『下谷万年町物語』 一九三五年秋

三 美術への憧憬。開成中学・高校時代
 『制服』 一九四八年春

四 青俳養成所。俳優から演出家へ
 『コースト・オブ・ユートピア』 一九五五年春

五 現代人劇場とラディカリズム
 『真情あふるる軽薄さ』 一九六九年夏

六 敗れ去った者の情念的伴走者として
 『ぼくらが非情の大河をくだる時』 一九七二年秋

七 櫻社解散と参宮橋事件
 『泣かないのか? 泣かないのか一九七三年のために?』 一九七四年夏

八 市川染五郎のロミオは疾走する
 『ロミオとジュリエット』 一九七四年春

九 唐十郎への恩義。三島由紀夫への反発
 『唐版滝の白糸』 一九七五年冬

一〇 劇作家秋元松代最大のヒット作
 『近松心中物語』 一九七九年冬

一一 海外への道筋。東方から来たメディア
 『王女メディア』『NINAGAWAマクベス』 一九八三年夏

一二 押す者のいない乳母車
 『にごり江』 一九八四年冬

一三 一発の銃声で青春が終わった日
 『タンゴ・冬の終わりに』 一九八四年春

一四 蜷川スタジオの誕生と過酷な演出
 『NINAGAWA少年少女鼓笛隊による血の婚礼』 一九八六年夏

一五 大新聞に、一部の壁新聞で対抗する
 『ハムレット』 一九八八年春

一六 そして中劇場へ。目線を演出する
 『三人姉妹』 一九九二年冬

一七 背水の陣で小劇場へ
 『夏の夜の夢』 一九九四年春

一八 階段をのぼり、権力へとすりよる
 『ハムレット』 一九七八年夏

一九 蜷川幸雄の横顔。翻訳家の目
 『ハムレット』 一九九五年秋

二〇 激情と思慮のただなかで
 『ハムレット』 二〇一五年冬

二一 栄誉と芸術監督
 『身毒丸』 一九九五年冬

二二 藤原竜也十四歳の出現
 『身毒丸』 一九九七年春

二三 野田秀樹作品に挑む
 『パンドラの鐘』 一九九九年冬

二四 国が倒れるすさまじい音
 『グリークス』 二〇〇〇年夏

二五 ベトナム戦争の悪夢
 『マクベス』 二〇〇一年冬

二六 「蜷川イヤーズ」とレセプショニスト
 『マクベス』 二〇〇一年冬

二七 大竹しのぶと寺島しのぶ。獰猛にして果敢な
 『欲望という名の電車』 二〇〇二年春

二八 吉田鋼太郎主演のシェイクスピア
 『タイタス・アンドロニカス』 二〇〇四年冬

二九 野村萬斎は生を嘆く
 『オイディプス王』 二〇〇四年春

三〇 歌舞伎、その前近代的な闇と死
 『NINAGAWA十二夜』 二〇〇五年夏

三一 怒り『ペリクリーズ』 二〇〇三年冬

三二 井上ひさしとの蜜月
 『天保十二年のシェイクスピア』 二〇〇五年秋

三三 オールメールキャスト。スキャンダラスな匂い
 『お気に召すまま』 二〇〇四年夏

三四 ゴールド・シアターとネクスト・シアター。車の両輪のように
 『真田風雲録』 二〇〇九年秋

三五 村上春樹をアクリルの空間に収める
 『海辺のカフカ』 二〇一二年春

三六 香港のリア王
 『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』 二〇一四年秋

三七 もう少し優しくしとけばなあ。演出補井上尊晶の述懐
 『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』 二〇一四年秋

三八 生とは猥雑にして神聖ではないか
 『リチャード二世』 二〇一五年春

三九 長いお別れ。もう、この劇場の主はいない
 『尺には尺を』 二〇一六年春

あとがき
長谷部浩(はせべ ひろし)

1956年埼玉県生まれ.慶應義塾大学卒.演劇評論家.東京藝術大学美術学部教授(近現代演出史).紀伊國屋演劇賞審査委員.現代演劇・歌舞伎を中心に評論.主な著書に『天才と名人─中村勘三郎と坂東三津五郎』『菊五郎の色気』(以上,文春新書),『菊之助の礼儀』(新潮社),『野田秀樹の演劇』(河出書房新社)など.蜷川幸雄との共著に『演出術』(ちくま文庫).編著に『坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ』『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』(以上,岩波現代文庫)がある.

書評情報

福島民友 2017年8月30日
愛媛新聞 2017年7月10日
日本経済新聞(朝刊) 2017年6月24日
毎日新聞(朝刊) 2017年6月4日
毎日新聞(朝刊) 2017年5月17日
ステージナタリー 2017年4月13日
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