イギリス演劇における修道女像

宗教改革からシェイクスピアまで

女性と宗教,女性性を負わされた修道女の身体性を軸に,初期近代英国文学を新しい切り口で読み解いた労作論文.

イギリス演劇における修道女像
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著者 安達 まみ
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2017/11/22
ISBN 9784000612357
Cコード 3098
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 256頁
定価 本体5,200円+税
在庫 在庫あり
16世紀イギリスの宗教改革により,修道院はその姿を消した.しかし,消えたはずの修道女のイメージは,その後も依然として歴史記述や文学作品に現れ出る.女性と宗教,女性性を負わされた修道女の身体性を軸に,膨大な原典にあたり,シェイクスピアをはじめとする初期近代英国文学を新しい切り口で読み解いた労作論文.
まえがき


序 章
第一節 初期近代イングランドの文化における修道女
 1 記憶は破壊されない
 2 修道女は文学研究で看過されてきた
 3 「気まぐれな修道女」は本当に定番か
 4 修道女の言説が拡散していく
 5 記憶の貯蔵庫を構築する
第二節 修道女と女子修道院の記憶の流通
 1 集合的記憶から文化的記憶へと移行する
 2 記憶と忘却が絡みあう
第三節 修道女に課せられた相矛盾する要請
 1 女性の弱さは逆説的な強さか
 2 修道女もジェンダーをまぬかれえない
 3 理論と実践が嚙みあわない
第四節 本書の構成
 1 歴史記述が記憶を蓄積する
 2 文化的記憶と演劇は互恵関係にある
 3 文化的記憶は変化しつつ流通する


第一部 記憶(メモリー・バンク)の貯蔵庫の構築――メモリー・テクストとしての歴史書にみる修道女の表象型(トロープ)

第一章 ジョン・フォックス『迫害の実録』――戦闘的プロテスタントの主張
第一節 『迫害の実録』における修道女への言及
 1 英国文化に最大の影響を与える
 2 真の教会と偽りの教会が対比される
 3 修道女とは教義である
第二節 「修道女にふさわしき浄らかな生」――聖人=王女の表象型
 1 国内教会史で高貴な修道女が活躍する
 2 修道女が女子修道院を創設する
 3 プロテスタント殉教者を引きたてる
 4 聖人=王女はふたつの歴史の境目に立つ
 5 断片からも人間力はうかがい知れる
 6 聖人伝の活用に矛盾あり
第三節 「気まぐれな修道女」――想われびとになる修道女の表象型
 1 修道女が王に言い寄られる
 2 立誓修道女との結婚も金しだい
 3 「おぞましきこと」が横行する
第四節 原プロテスタント的大義の周縁――真の女預言者と偽りの女預言者
 1 ビルギッタ,カタリナ,ヒルデガルトは真の預言者である
 2 英国の修道女は原プロテスタントの典型である
 3 女子修道院長がティンダルを読まんとする
 4 独住修女がビルニーの本を譲りうける
 5 聖職者の結婚がベイナムの審問で糾される
 6 元修道女は真の教会の一員たりうるか
 7 修道女の表象型と両義的イメージはなにを意味するか

第二章 ラファエル・ホリンシェッド『年代記』――中立的な歴史記述
第一節 『年代記』における修道女への言及
 1 修道女の肖像は多声的かつ中立的である
 2 女性の機知と哀愁が描かれる
 3 修道女が戦争の犠牲者となる
 4 ケントの聖なる乙女が演技をする
第二節 初期近代イングランドの歴史書における修道女

第三章 ジョン・ストウ『イングランド年代記』『ロンドン概観』『イングランド編年史』――個人の記憶
第一節 ジョン・ストウの『イングランド年代記』『ロンドン概観』が描く修道女
 1 「稀有なる模範」――犠牲者・殉教者としての修道女
 2 「要塞」を造る――戦時の女子修道院
 3 貴族と平民の創設者
 4 王妃と王女,乙女と寡婦
第二節 ジョン・ストウの『イングランド編年史』が描く修道女
 1 「ローサ・ムンディ,ノン・ローサ・ムンダ」――脆さのトポスと修道院内の埋葬
 2 栄光から困窮へ

第四章 ウィリアム・ダグデイル『ウォリックシャーの古物』――熱心な懐古論者の古物研究
第一節 『英国修道院大全』の挑発
 1 土地所有者としての修道女と女子修道院
 2 「この悲劇的な成り行き」――修道院解体
 3 「そこに一片の真実あり」――聖人譚と奇蹟
第二節 メモリー・テクストとしてのストウとダグデイルの歴史記述


第二部 記憶の貯蔵庫(メモリー・バンク)の応用――初期近代イングランドの演劇にみる修道女の表象型(トロープ)

第一章 初期近代イングランドの演劇に言及として現われる修道女の表象型
第一節 修道女らしさの表象
第二節 歌う修道女
第三節 セクシュアリティと若さが勝利する
第四節 貞潔な修道女の弱さ
第五節 修道女化された男性と女神ウェスタに仕える乙女
第六節 修道院制度への批判
第七節 遊興の相手としての修道女

第二章 初期近代イングランドの演劇における登場人物としての修道女の表象型
第一節 登場人物としての修道女――変装の表象型
 1 修道女のふり――『フェデルとフォーテューニオ』にみる「にせ修道女」の導入
 2 母となる修道女,修道女になりたがった女性,修道女のふりをする女性――『悪魔の訴訟』の逸脱する女性たち
 3 「ふりをする修道女」――『かたり』における女マキャヴェッリ
 4 宗教改革以前のイングランドの「再=表象」としての修道女の記憶
 5 黙劇における視覚的プレゼンスとして――『アーサーの不運』と『トム・ア・リンカン』
 6 『ソーニー・アベイ』または回心した想われびとが修道女になる
 7 『恋煩いする国王』または想われびととなる修道女
 8 時代の変化とともに調子の異なるジョン王/ロビン・フッド劇――『ジョン王の乱世』『ハンティンドン伯ロバートの死』『ジョン王とマティルダ』
第二節 隠遁の表象型――危機に遭って修道生活に入る女性たち
 1 隠遁の表象型の戯画――『エドモントンの愉快な悪魔』
 2 現世を放棄し,聖域に保護を求める――『あわれ彼女は娼婦』にみる隠遁の表象型
 3 挫かれた隠遁の表象型の流布――『肖像画』
第三節 表象型を逸脱する
 1 棄てられた愛の回復――『ベイコン修道士とバンゲイ修道士』にみる挫かれた隠遁の表象型の変形
 2 道具から回心者へ――『マルタ島のユダヤ人』
 3 『チェスの試合』におけるさまざまな修道女の表象型の融合

第三章 シェイクスピアにみる修道女の表象型
第一節 シェイクスピアはいかに修道女をとりこんだか
第二節 修道女の象徴的価値――『恋人の嘆き』
第三節 初期作品から『十二夜』まで
 1 「涙にくれる妃」と「祈る修道女」――『リチャード三世』
 2 「女子修道院に御身を隠せよ」――『リチャード二世』
 3 弱き修道女の不在――『ジョン王』
 4 ウィリアム・ペインター『悦楽の宮殿』と『ロミオとジュリエット』
 5 糾弾からの聖域としての修道院――『から騒ぎ』
 6 「祈りと瞑想に生きる誓い」――『ヴェニスの商人』
 7 「氷のごとき貞潔」――『お気に召すまま』と『夏の夜の夢』
 8 ヴェールをぬぐマドンナ――『十二夜』
第四節 『ハムレット』から『尺には尺を』まで
 1 隠語としての女子修道院ふたたび――『ハムレット』
 2 『尺には尺を』――教父文学との関わり
 3 『尺には尺を』――歴史との関わり
第五節 『まちがいの喜劇』とロマンス劇
 1 デア・エクス・マキナとしての修道女――『まちがいの喜劇』
 2 奇蹟としての聖なる女性――『冬物語』

終 章

あとがき
参考文献
安達まみ(あだち まみ)
1956年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学.バーミンガム大学大学院シェイクスピア・インスティテュート博士課程修了.博士(文学,バーミンガム大学).聖心女子大学英語英文学科教授.著書に,Shakespeare Jubilees: 1769-2014(LIT,共著),『シェイクスピア世紀を超えて』(研究社,共著),『くまのプーさん英国文学の想像力』(光文社新書)ほか.訳書に,M.ローグ,P. コンラディ『英国王のスピーチ――王室を救った男の記録』,J. ヴォルシュレガー『アンデルセン――ある語り手の生涯』(以上,岩波書店),P. キルロイ『マドレーヌ= ソフィー・バラ――キリスト教女子教育に捧げられた燃ゆる心』(みすず書房,共訳),M. ウォーナー『野獣から美女へ――おとぎ話と語り手の文化史』(河出書房新社),G. ブラックウッド『シェイクスピアを盗め!』『シェイクスピアを代筆せよ!』『シェイクスピアの密使』,J. トラフォード『オフィーリア』(以上,白水社)ほか.

受賞情報

日本カトリック大学連盟カトリック学術奨励金研究奨励賞(2017年度)
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