ファシスト的公共性

総力戦体制のメディア学

市民的公共性とは異なる国民の一体感とは何か.メディア史の視座から日独を比較し現在の問題を照射する.

ファシスト的公共性
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著者 佐藤 卓己
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2018/04/04
ISBN 9784000612609
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 352頁
定価 本体2,600円+税
在庫 在庫あり
理性的討議にもとづく合意という市民的公共性を建て前とする議会制民主主義のみが民主主義ではない.ナチスの街頭行進や集会,ラジオの聴取が可能にした一体感や国民投票は,大衆に政治的公共圏への参加の感覚を与え,19世紀とは異なる公共性を創出した.メディア史の視座から日独の戦中=戦後を比較し,現在の問題を照射する.
序 章 「ポスト真実」時代におけるメディア史の効用
 一、ポピュリスト的公共性かファシスト的公共性か
 二、言語論的転回とメディア史の成立
 三、遅延報酬を意識するメディア史的思考


Ⅰ ナチ宣伝からナチ広報へ

第一章 ファシスト的公共性――非自由主義モデルの系譜
 一、ブルジョア的公共性とファシスト的公共性
 二、労働者的公共性と国民的公共性
 三、大衆的公共性のニューメディア
 四、民族共同体と国民社会主義

第二章 ドイツ新聞学――ナチズムの政策科学
 一、第三帝国におけるメディア学の革新
 二、ナチ新聞学の旗手
 三、政治公示学の浮上
 四、戦前「新聞学」から戦後「公示学」へ

第三章 世論調査とPR――民主的学知の“ナチ遺産”
 一、協力と継続と沈黙と
 二、メディア学の総力戦パラダイム
 三、ジックスのナチ新聞学とノエルのアメリカ世論調査
 四、過去からの「密輸」と「商標偽装」


Ⅱ 日本の総力戦体制

第四章 情報宣伝――「十五年戦争」を超える視点
 一、総力戦パラダイムの「戦後」とは
 二、「情報」という軍事用語
 三、「情報」需要の軍民転換
 四、情報宣伝から世論調査へ

第五章 メディア論――電体主義の射程
 一、ラジオ文明と現代化
 二、活字文化の放送化
 三、ラジオ文明の文化ペシミズム
 四、全体主義から電体主義へ

第六章 思想戦――言説空間の現代化
 一、「閉ざされた言語空間」の連続性
 二、内閣情報部と思想戦講習会
 三、軍事技術と日本精神、あるいは監視権力と自主性
 四、思想戦の現代化

第七章 文化力――メディア論の貧困
 一、ソフト・パワーのメディア文化政策
 二、「文化政治」と「文化政策」の記憶
 三、戦前のソフト・パワー論
 四、八紘一宇(グローバル化)と大東亜観光圏
 五、空を目指す文化国家


あとがき――正直な「公共性」研究者の回顧
引用文献一覧


装丁= 桂川潤
佐藤卓己(さとう たくみ)
1960年生まれ.京都大学大学院博士課程単位取得退学.国際日本文化研究センター助教授などを経て,現在,京都大学大学院教育学研究科教授.専攻はメディア史,大衆文化論.著書に『現代メディア史』(1998年,岩波書店),『『キング』の時代――国民大衆雑誌の公共性』(2002年,岩波書店,日本出版学会賞受賞,サントリー学芸賞受賞),『言論統制――情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(2004年,中公新書,吉田茂賞受賞),『輿論と世論――日本的民意の系譜学』(2008年,新潮選書),『『図書』のメディア史 ―「教養主義」の広報戦略』(2015年,岩波書店),『青年の主張――まなざしのメディア史』(2017年,河出ブックス)など.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2018年8月11日
中央公論 2018年7月号
読売新聞(朝刊) 2018年7月1日
週刊読書人 2018年6月15日
週刊金曜日 2018年6月1日
毎日新聞(朝刊) 2018年5月20日
日本経済新聞(夕刊) 2018年4月4日
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