岩波講座 コミュニケーションの認知科学 1

言語と身体性

音声言語の進化的基盤,子どもの言語獲得や意図理解,手話やジェスチャーの生成など,人間と言語との関わりを科学的に検証する.

言語と身体性
著者 安西 祐一郎 , 今井 むつみ , 入來 篤史 , 梅田 聡 , 片山 容一 , 亀田 達也 , 開 一夫 , 山岸 俊男
ジャンル 書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ 岩波講座 コミュニケーションの認知科学
刊行日 2014/07/04
ISBN 9784000113717
Cコード 3311
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 342頁
在庫 品切れ
人間は,なぜ言語以前の身体の知覚や感情を言語という記号に結びつけられるようになったのか.そもそも音声言語の進化的基盤はどこにあるのか.子どもの言語獲得や意図理解はどのように発達するのか.手話やジェスチャーはどのように生成されるのか.実験観察や計算モデルなどの手法を取り入れ,いわゆる「記号接地問題」を解く.


■編集部からのメッセージ
 この第1巻は「言語と身体性」と題する巻ですが,本巻の重要なテーマは「記号接地問題」であると位置づけます.そもそも「記号接地問題」とは何でしょうか.本巻では以下のように定義します.

「人間が共存,共有を実現し,維持するために大切な言語に用いられる記号の体系は,身体を経て得られる感覚,知覚,運動,感情などの情報に由来した個別的,かつ具体的な意味を持っているはずである.ところが,その記号体系は,身体性から離れた抽象的な記号体系としてコミュニティーの中で共有される意味をも持ち得る.では,なぜ個別的,具体的であった記号体系が相互に共有される意味を持ち得るようになるのか.言い換えれば,具体的な感覚と抽象的な記号体系とはどうつながっているのか.それを明らかにするのが記号接地問題である.」

 これを受けて,記号接地問題が,コミュニケーションとどう関わるのか,またそれはどのような問題とつながるのかを明らかにします.
「したがって,記号接地問題を考えることは,人間にとってコミュニケーションとは何なのか,ひいては人間にとって言語とはどのような存在なのか,という問題を考えることにつながる.また,記号接地を可能にする(生物的)能力とはどのようなものか,という問題にも突き当たる.さらに,記号接地問題に示された具体性と抽象性,あるいは個別性と共通性という二面性を持つ言語の体系によって人間の知性はどのように進化したのか,子どもの知性はどのように発達するのかが問題になる.そもそも人間はどのようにして言語を習得しているのか,言語を用いてどのように知識の体系を構築しているのか,といった人間のコミュニケーションの根幹に位置するたくさんの興味深い問題群を考えることにもつながる.」

 言語と身体性の研究はまだまだ未解決問題が多くあります.上に上げた以外にも,なぜ人間だけが言語を使用できるのかといった問題も,いまなお論争のなかにあります.よく出される「ブーバ・キキ効果」の謎もまた本巻で議論されます.

ブーバ・キキ効果

 本書は,これらの問題に真正面に答えるために,心理学,神経科学,また情報学の最新の成果を踏まえて解説します.とても刺激的な議論が展開されます.
1 言語発達と身体への新たな視点
2 言語の基盤となる推論能力
3 知覚と言語
4 脳における言語の表象と処理
5 記号の意味を共につくる
6 感情と態度の記号接地
7 言語の身体性と言語発達
8 語の意味はいかにして生成されるか
9 記号コミュニケーションはどのように成立するか
10 人と言語

 付録 文化が生み出す意味体系とその習得
《担当編者》

今井むつみ(いまい むつみ)
慶應義塾大学環境情報学部教授

佐治伸郎(さじ のぶろう)
鎌倉女子大学児童学部講師

書評情報

英語教育 2015年1月号
ページトップへ戻る