岩波講座 コミュニケーションの認知科学 2

共感

なぜ「共感」を問題にするのか.これまでの共感研究の歴史をたどり,最新の知見を踏まえて,その生起メカニズムと病理を考える.

共感
著者 安西 祐一郎 , 今井 むつみ , 入來 篤史 , 梅田 聡 , 片山 容一 , 亀田 達也 , 開 一夫 , 山岸 俊男
ジャンル 書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ 岩波講座 コミュニケーションの認知科学
刊行日 2014/09/26
ISBN 9784000113724
Cコード 3311
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 204頁
定価 4,180円
在庫 在庫あり
現代のコミュニケーションにおいて,なぜ「共感」に焦点を当てる必要があるのか.そもそも「共感とは何か」をこれまでの研究史をたどりながら定義し,その生起メカニズムを考える.とくに感情の伝染,共感の意識性,共感の身体反応,内受容感覚,共感の発達と病理などについて,心理・脳・身体という三つの側面から幅広く検討する.


■編集部からのメッセージ
 第2巻は「共感」の問題を取り上げます.じつを言いますと,本巻を本講座の最初に出したいと考えておりました.
 時代がどんなに変容しつつも,人間が人間として,社会のなかで助け合い生きていくためには,大前提として,互いに「わかりあえる」「つながっている」という心情があります.逆に,そのすれ違いによって,避けられるはずの不幸にみまわれたりします.
 しかし,はたして「わかりあえる」「つながっている」という心情は,いったいどういう状態をいうのか.心理として,あるいは脳の機能として,どう説明されるのだろうか,というのが本講座の企画にあたっての大きな目標でした.それだけに,共感をどう定義したらよいのか.また共感という感情はどのように芽生えてくるのか.他の霊長類や動物にもその感情はあるのか.さらには,そのような感情機能に障害がある場合には,どのような症状が現れるのかなどを明快に論じた本巻は,まさに多くの方に読んでほしい巻です.
 本巻の編者も,最初の第1章で,位置づけを明確に語っています.
共感については,人文科学,社会科学,自然科学の多岐にわたる分野で取り上げられており,本章でも認知科学,神経科学,発達科学,社会科学などの立場から「共感」について深く掘り下げる.「共感」という現象は,直感的には理解しやすく感じられ,さまざまな例が頭に浮かぶものの,いざその定義をしようとすると,現象が多義的であり,実体がつかみにくいという特徴がある.

共感について深く理解するためには,従来の学問的な枠組みを打破し,さまざまな分野融合的な視点から取り組むことが必須である.歴史的に振り返ると,過去の哲学や心理学の書物では,共感について語られてはいるものの,科学的な視点による研究に着目すると,やや隙間的な位置づけで扱われる傾向が見受けられ,科学的な理解や解明が進んでいるとはいい難い.以上のような点が,岩波講座「コミュニケーションの認知科学」の1巻として本巻を計画するに至った理由である.

 また,こうした「共感」は,個人と個人の間にとどまらず,集団間や国際的な紛争とも大きく関係します.そのあたりのことも,この巻では解説しています.
 この巻が,認知科学や神経科学にとどまらず,教育学や社会学,政治学にいたるまで,それぞれの分野で活躍される多くの方にとって,きわめて有用な内容になっていることを期待します.
1 共感の科学――認知神経科学からのアプローチ
2 共感の発達――いかにして育まれるか
3 共感の進化
4 社会的文脈から共感を考える
5 共感と自閉スペクトラム症
6 共感の病理
7 共感と向社会的行動――集団間紛争の問題を通して考える
《編著者》

編集=梅田 聡

梅田 聡(うめだ さとし) 1章
慶應義塾大学文学部

板倉昭二(いたくら しょうじ) 2章
京都大学大学院文学研究科

平田 聡(ひらた さとし) 3章
京都大学野生動物研究センター

遠藤由美(えんどう ゆみ) 4章
関西大学社会学部

千住 淳(せんじゅう あつし) 5章
University of London, Birkbeck, Centre for Brain and Cognitive Development

加藤元一郎(かとう もといちろう) 6章
慶應義塾大学医学部

中村 真(なかむら まこと) 7章
宇都宮大学国際学部
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