岩波講座 コミュニケーションの認知科学 4

社会のなかの共存

なぜわれわれは他人の目を意識するのか.正義やモラルは生得的か.社会科学と生物学の両面から社会規範が生じるための基盤を解く.

社会のなかの共存
著者 安西 祐一郎 , 今井 むつみ , 入來 篤史 , 梅田 聡 , 片山 容一 , 亀田 達也 , 開 一夫 , 山岸 俊男
ジャンル 書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ 岩波講座 コミュニケーションの認知科学
刊行日 2014/06/04
ISBN 9784000113748
Cコード 3311
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 242頁
定価 3,740円
在庫 在庫あり
なぜわれわれは他人の目を意識するのか.正義やモラルは生得的なものなのか.多数の人間が共存するためのしくみが,動物でもあるヒトの心のしくみとしてどう形づくられるのかを社会科学と生物学の両面から読み解く.利他・互恵行動や賞罰などの社会制度の源流を探り,安心や信頼の構造がいかにして生まれるかが明らかになる.


■編集部からのメッセージ
 第4巻「社会のなかの共存」は,簡単に言えば,以下のような質問にもっとも信頼できる回答を与えてくれます.

 1.なぜ日本人は他人の目線や評判を気にするのか.はたして日本人だけなのか.
 2.言葉を持たないはずの昆虫や動物が,なぜ集団行動できるのか.
 3.道徳や正義感はどこから生じたのか.
 4.安心や信頼はどのように築かれるのか.

 第4巻の執筆者は,社会科学から生物科学までの研究者で,多岐にわたります.学際的な分野なので,読者対象を1つに絞るのは難しいですが,学術的には,「心理学一般」でしょうか.ただし,教育や対人関係や組織経営にも,大いに参考になることも書かれていて,ビジネス書や教育書に関心のある方にもおおいに参考になるでしょう.
第1章 秩序問題とコーディネーション問題(山岸俊男・亀田達也)
 1 霊長類の脳進化と群れサイズ
 2 コーディネーション問題と秩序問題
 3 第4巻の構成
第2章 進化生物学の視点から秩序問題を考える(巌佐 庸)
 1 秩序問題と協力の進化
 2 生物の協力進化のメカニズム
 3 社会の中での正しい行為
 4 制裁のシステム
 5 協力の進化としての秩序問題
第3章 動物の集団的意思決定にみるコーディネーション問題(長谷川英祐)
 1 自分が得をするので協力する
 2 節足動物における集団的意思決定の実際
 3 集団的最適選択を可能にしている要因
 4 集団的意思決定の落とし穴
 5 社会性昆虫における労働分業の制御
 6 これからの課題
第4章 霊長類の利他行動(瀧本彩加・山本真也)
 1 利他行動をめぐる比較認知科学
 2 利他行動を支えるこころ
 3 霊長類の利他行動
 4 利他行動の進化の道筋
 5 比較認知研究のこれから
第5章 「分配の正義」の認知的・社会的基盤を探る(亀田達也)
 1 分配の正義とは?
 2 利害関係者としての分配
 3 「中立な第三者」としての分配の正義
 4 おわりに
第6章 協力と賞罰(高橋伸幸・竹澤正哲)
 1 物質的賞罰行動と協力
 2 象徴的賞罰行動と協力
 3 人間と大規模な協力
第7章 集団とネットワークの視点から見たコミュニケーション(増田直紀)
 1 集団における合意形成
 2 ネットワーク
 3 ネットワークの特徴量
 5 今後の課題
第8章 安心と信頼を生み出す文化と制度(山岸俊男)
 1 安心と信頼
 2 安心を生み出す構造
 3 安心を生む制度と信頼を生む制度
 4 心の文化差
 5 行動の文化差
 6 安心社会と信頼社会
《担当編者》

山岸俊男(やまぎし としお)
ワシントン大学社会学部助教授,北海道大学文学部教授を経て,現在一橋大学国際企業戦略研究科特任教授.専門は社会心理学.著書に,『社会的ジレンマのしくみ』(サイエンス社),『信頼の構造』(東京大学出版会),ほか.

亀田達也(かめだ たつや)
東京大学文学部助手,東洋大学社会学部講師,北海道大学文学研究科助教授を経て,現在は同教授.専門は,社会的意思決定,社会心理学.著書に,『合議の知を求めて――グループの意思決定』(共立出版),『進化ゲームとその展開』(共著,共立出版),ほか.
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