『碧巌録』を読む
「宗門第一の書」と称され,日本の禅に多大な影響をあたえた禅教本の最高峰を,平易に読み解く入門書.
『碧巌録』とは,北宋初期の雪竇重顕が古則百則に対して頒をつけた公案集に,北宋晩期の圜悟克勤が垂示・著語・評唱を加えた禅の教本である.「宗門第一の書」と称され,日本の禅に多大な影響をあたえた禅教本の最高峰を,言語による言語の解体行為という視点から読み解く.「文字禅」の世界の魅力を伝える入門書.
第一講 禅の根本問題
1 『碧巌録』というテキスト
『碧巌録』とは/岩波文庫新版の意義/各則の構成
2 達磨,武帝をやりこめる(第一則)
垂示/本則/頌/著語/評唱
3 「無」の世界
趙州の「無」/「無」の変質/禅の言葉
第二講 禅の言語論
1 言語における意味の剝奪
記号論からの接近/二元論の解体
2 趙州の最高の道(第二則)
垂示/本則/著語/頌
3 言語をめぐる問答
「至道無難」の展開(第五七,五八,五九則)/咽喉と口とをふさいでどう言うか(第七〇,七一,七二則)/維摩の一黙(第八四則)
4 道元の言語論
第三講 禅の存在論
1 言語と存在
言語論から存在論へ/鈴木大拙説の検討/上田閑照説の検討/井筒俊彦説の検討
2 露呈する世界
展覧会場の便器/庭前の柏樹/秋風の中,まる裸(第二七則)/麻三斤(第一二則)/私とは誰か(第七則)
3 馬大師の病気(第三則)
垂示/本則/著語/評唱/頌
4 解体する世界と「私」
世界の終末(第二九則)/寒暑なきところ(第四三則)/坐禅はどう位置づけられるか
第四講 禅の人間論
1 禅における主体と自由
私こそ仏だ/無位の真人/大雄峰に坐る(第二六則)/俱胝が指を立てる(第一九則)
2 禅における他者
他者はいかにして成り立つか/卵がうまく孵るには(第一六則)
3 潙山と徳山の果たし合い(第四則)
垂示/本則・著語/頌
4 対他性と倫理
南泉,猫を斬る(第六三,六四則)/殺生は許されるか――道元の批判/結び
5 質疑応答
禅の言葉/二元論は超えられるか/倫理の問題/禅語録の読み方
補講 改めて『碧巌録』を読む
研究状況の進展/圜悟と公案の言葉/雪竇と趙州――禅の言葉の取り上げ方/『碧巌録』と死者の問題――田辺元による第五五則解釈
付 録
1 『碧巌録』全一〇〇則標題・登場人物一覧
2 現代語訳で読める禅語録
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
1 『碧巌録』というテキスト
『碧巌録』とは/岩波文庫新版の意義/各則の構成
2 達磨,武帝をやりこめる(第一則)
垂示/本則/頌/著語/評唱
3 「無」の世界
趙州の「無」/「無」の変質/禅の言葉
第二講 禅の言語論
1 言語における意味の剝奪
記号論からの接近/二元論の解体
2 趙州の最高の道(第二則)
垂示/本則/著語/頌
3 言語をめぐる問答
「至道無難」の展開(第五七,五八,五九則)/咽喉と口とをふさいでどう言うか(第七〇,七一,七二則)/維摩の一黙(第八四則)
4 道元の言語論
第三講 禅の存在論
1 言語と存在
言語論から存在論へ/鈴木大拙説の検討/上田閑照説の検討/井筒俊彦説の検討
2 露呈する世界
展覧会場の便器/庭前の柏樹/秋風の中,まる裸(第二七則)/麻三斤(第一二則)/私とは誰か(第七則)
3 馬大師の病気(第三則)
垂示/本則/著語/評唱/頌
4 解体する世界と「私」
世界の終末(第二九則)/寒暑なきところ(第四三則)/坐禅はどう位置づけられるか
第四講 禅の人間論
1 禅における主体と自由
私こそ仏だ/無位の真人/大雄峰に坐る(第二六則)/俱胝が指を立てる(第一九則)
2 禅における他者
他者はいかにして成り立つか/卵がうまく孵るには(第一六則)
3 潙山と徳山の果たし合い(第四則)
垂示/本則・著語/頌
4 対他性と倫理
南泉,猫を斬る(第六三,六四則)/殺生は許されるか――道元の批判/結び
5 質疑応答
禅の言葉/二元論は超えられるか/倫理の問題/禅語録の読み方
補講 改めて『碧巌録』を読む
研究状況の進展/圜悟と公案の言葉/雪竇と趙州――禅の言葉の取り上げ方/『碧巌録』と死者の問題――田辺元による第五五則解釈
付 録
1 『碧巌録』全一〇〇則標題・登場人物一覧
2 現代語訳で読める禅語録
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
末木文美士(すえき ふみひこ)
1949年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学.現在,東京大学名誉教授,国際日本文化センター名誉教授.仏教学・日本思想史専攻.著書に,『碧巌録』全3冊(共訳注,岩波文庫)『現代語訳碧巌録』全3冊(共編著,岩波書店)『日本宗教史』(岩波新書)『日本仏教入門』(角川選書)『日本思想史の射程』(敬文舎)『思想としての近代仏教』(中公選書)ほか.
1949年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学.現在,東京大学名誉教授,国際日本文化センター名誉教授.仏教学・日本思想史専攻.著書に,『碧巌録』全3冊(共訳注,岩波文庫)『現代語訳碧巌録』全3冊(共編著,岩波書店)『日本宗教史』(岩波新書)『日本仏教入門』(角川選書)『日本思想史の射程』(敬文舎)『思想としての近代仏教』(中公選書)ほか.
書評情報
週刊文春 2018年10月25日号