『碧巌録』を読む

「宗門第一の書」と称され,日本の禅に多大な影響をあたえた禅教本の最高峰を,平易に読み解く入門書.

『碧巌録』を読む
著者 末木 文美士
通し番号 学術387
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
刊行日 2018/08/17
ISBN 9784006003876
Cコード 0115
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 282頁
定価 1,254円
在庫 在庫あり
『碧巌録』とは,北宋初期の雪竇重顕が古則百則に対して頒をつけた公案集に,北宋晩期の圜悟克勤が垂示・著語・評唱を加えた禅の教本である.「宗門第一の書」と称され,日本の禅に多大な影響をあたえた禅教本の最高峰を,言語による言語の解体行為という視点から読み解く.「文字禅」の世界の魅力を伝える入門書.
第一講 禅の根本問題
 1 『碧巌録』というテキスト
  『碧巌録』とは/岩波文庫新版の意義/各則の構成
 2 達磨,武帝をやりこめる(第一則)
  垂示/本則/頌/著語/評唱
 3 「無」の世界
  趙州の「無」/「無」の変質/禅の言葉

第二講 禅の言語論
 1 言語における意味の剝奪
  記号論からの接近/二元論の解体
 2 趙州の最高の道(第二則)
  垂示/本則/著語/頌
 3 言語をめぐる問答
  「至道無難」の展開(第五七,五八,五九則)/咽喉と口とをふさいでどう言うか(第七〇,七一,七二則)/維摩の一黙(第八四則)
 4 道元の言語論

第三講 禅の存在論
 1 言語と存在
  言語論から存在論へ/鈴木大拙説の検討/上田閑照説の検討/井筒俊彦説の検討
 2 露呈する世界
  展覧会場の便器/庭前の柏樹/秋風の中,まる裸(第二七則)/麻三斤(第一二則)/私とは誰か(第七則)
 3 馬大師の病気(第三則)
  垂示/本則/著語/評唱/頌
 4 解体する世界と「私」
  世界の終末(第二九則)/寒暑なきところ(第四三則)/坐禅はどう位置づけられるか

第四講 禅の人間論
 1 禅における主体と自由
  私こそ仏だ/無位の真人/大雄峰に坐る(第二六則)/俱胝が指を立てる(第一九則)
 2 禅における他者
  他者はいかにして成り立つか/卵がうまく孵るには(第一六則)
 3 潙山と徳山の果たし合い(第四則)
  垂示/本則・著語/頌
 4 対他性と倫理
  南泉,猫を斬る(第六三,六四則)/殺生は許されるか――道元の批判/結び
 5 質疑応答
  禅の言葉/二元論は超えられるか/倫理の問題/禅語録の読み方

補講 改めて『碧巌録』を読む
  研究状況の進展/圜悟と公案の言葉/雪竇と趙州――禅の言葉の取り上げ方/『碧巌録』と死者の問題――田辺元による第五五則解釈

付 録
 1 『碧巌録』全一〇〇則標題・登場人物一覧
 2 現代語訳で読める禅語録

あとがき
岩波現代文庫版あとがき
末木文美士(すえき ふみひこ)
1949年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学.現在,東京大学名誉教授,国際日本文化センター名誉教授.仏教学・日本思想史専攻.著書に,『碧巌録』全3冊(共訳注,岩波文庫)『現代語訳碧巌録』全3冊(共編著,岩波書店)『日本宗教史』(岩波新書)『日本仏教入門』(角川選書)『日本思想史の射程』(敬文舎)『思想としての近代仏教』(中公選書)ほか.

書評情報

週刊文春 2018年10月25日号
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