加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか

『羊の歌』を読みなおす

加藤の担当編集者として伴走しつづけた著者が『羊の歌』を読み解き,知の巨人の新たな像を発見する.

加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか
著者 鷲巣 力
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2018/10/05
ISBN 9784000612944
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 526頁
定価 3,850円
在庫 在庫あり
『羊の歌』は,戦中戦後を生きる自己の半生を冷静に見つめた知識人の記録として長く読み継がれてきた.だがこの回想記にあって,意図的に伏せられた事実は少なくない.加藤の言葉に真摯に向き合いながらも,不言と虚構を明るみに出し,近親者の証言からその意図を探る.知の巨人の出発点は,語られない出来事のうちにあった.
まえがき
凡 例
加藤周一の親族関係


第Ⅰ部 『羊の歌』が語ること

第1章 西洋への眼を開く
 1 増田熊六の西洋趣味
 2 岩村清一の反戦思想
 3 神田盾夫・ラテン語・反戦
 4 従兄たち,そして妹

第2章 科学者の方法と詩人の魂と平等思想と
 1 父加藤信一の教えたこと
 2 母加藤織子の教えたこと
 3 父と母との関係
 4 悪夢と「魔王」

第3章 全体的認識へ向かう
 1 父の生家と親族たち
 2 感覚の歓びを知る
 3 豊かな色彩感覚
 4 「世界の構造には秩序がある」

第4章 「高みの見物」の自覚と決意
 1 余所者であることの自覚
 2 「高みの見物」の決意

第5章 優等生意識と反優等生意識
 1 優等生であること――小学校時代
 2 ふたつの裏切り
 3 優等生であることへの疑問――中学校時代
 4 言挙げと反抗――高等学校時代

第6章 文学・芸術への目覚め
 1 童話と音楽
 2 『子供の科学』と『小学生全集』
 3 『万葉集』,芥川龍之介からフランス文学へ
 4 映画から演劇への関心
 5 『校友会雑誌』と同人誌への寄稿

第7章 原点としての「戦中体験」(1)――満洲事変から太平洋戦争へ
 1 満洲事変と二・二六事件
 2 矢内原忠雄の講義と横光利一との座談
 3 万葉集輪講の会,そして日本浪曼派と京都学派
 4 一九四一年一二月八日

第8章 原点としての「戦中体験」(2)――敗戦を迎える
 1 仏文研究室の人びととの交流
 2 内科教室での論争
 3 東京大空襲,そして別れ
 4 一九四五年八月一五日


第Ⅱ部 『続羊の歌』を読みなおす

第1章 もうひとつの原点としての「敗戦体験」
 1 敗戦に対する人びとの反応
 2 公的な信条と私的な信条
 3 広島体験の重み
 4 一九四六年という年

第2章 「第二の出発」――フランス留学へ
 1 京都の庭と京都の女
 2 フランスにおける交友
 3 フランスと日本の違い
 4 「中世」の発見

第3章 ヒルダ・シュタインメッツとの出会い
 1 イタリア旅行――絵画の発見
 2 ヴィーン旅行――音楽の発見
 3 イギリス旅行――偽善
 4 南フランス旅行――決意

第4章 帰国の決意と「第三の出発」
 1 留まるべきか帰るべきか
 2 マルセイユから神戸への船旅
 3 加藤の眼の変化,日本社会の変化
 4 ウズベク・クロアチア・ケララへの旅
 5 原田義人の死,安保改定問題,そして「第三の出発」

第5章 『羊の歌』に書かれなかったこと
 1 文学部進学の断念,そして浪人
 2 最初の結婚とアメリカ留学への挑戦
 3 ヒルダの来日と綾子との離婚


あとがき
加藤周一略年譜
鷲巣 力(わしづ つとむ)
1944年東京都生まれ.東京大学法学部卒業後,平凡社に入社し,『加藤周一著作集』『林達夫著作集』など,書籍の編集に携わったほか,雑誌『太陽』の編集長をつとめた.現在は,立命館大学客員教授,同大学加藤周一現代思想研究センター長.専門は,メディア論,戦後思想史.著書に『自動販売機の文化史』(集英社新書),『公共空間としてのコンビニ』(朝日新聞出版),『加藤周一を読む』(岩波書店),『「加藤周一」という生き方』(筑摩選書)などがある.

書評情報

季論21 2019年春号
毎日新聞(朝刊) 2018年12月16日
しんぶん赤旗 2018年12月9日
ページトップへ戻る