シリーズ 日本の中の世界史

帝国航路(エンパイアルート)を往く

イギリス植民地と近代日本

イギリスの「帝国航路」を辿って渡欧した日本人の経験や思索を通して,帝国主義世界体制の中での位置を模索する近代日本の姿に迫る.

帝国航路(エンパイアルート)を往く
著者 木畑 洋一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
シリーズ シリーズ 日本の中の世界史
刊行日 2018/12/18
ISBN 9784000283854
Cコード 0321
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 248頁
定価 2,750円
在庫 在庫あり
「開国」後の1860年代から1950年代に至るまで,多くの日本人がイギリス帝国の支配下の航路を辿り,ヨーロッパへと渡った.シンガポールやインド,エジプトなど様々な地域の状況にふれ,帝国支配の様相を自らの視線でとらえた彼らの経験や思索を通して,帝国主義世界体制の中での位置を模索する近代日本の姿に迫る.
プロローグ――『西洋道中膝栗毛』と帝国航路


第Ⅰ章 帝国航路とイギリス植民地
 一 帝国航路の旅
  帝国航路/船客さまざま
 二 寄港植民地点描
  広がるイギリス植民地/上海/香港/シンガポール/ペナン/ゴール・コロンボ(セイロン)/アデン/紅海/スエズ運河/ポートサイド・カイロ・アレクサンドリア

第Ⅱ章 幕末動乱のなかで―― 一八六〇年代
 一 日本の将来を探る旅
  自由貿易帝国主義の時代/幕末の日本が送り出した人々/観察する者と眼を閉ざす者
 二 ヨーロッパ文明との出会い
  ヨーロッパ風の事物/スエズ鉄道
 三 ヨーロッパとアジアの落差
  対照的な家屋/臭気と「不潔」
 四 植民地化への警戒と日本の行方
  福沢諭吉と帝国航路/「東方でのヨーロッパ」志向
 【コラム1】帝国航路を漢詩に詠む

第Ⅲ章 明治国家建設をめざして―― 一八七〇~八〇年代
 一 帝国世界形成期の旅
  帝国世界形成期の世界/近代国家日本の模索
 二 ヨーロッパ文明と植民地支配――久米邦武と中江兆民
  久米邦武の場合/中江兆民の場合
 三 優勝劣敗の世界像
  野蛮なアジア/支配されるアジア
 四 自立する日本の模索
  日本の行方/オラービーを訪ねて
 【コラム2】中国人の見た帝国航路

第Ⅳ章 帝国支配国へ―― 一八九〇年代~第一次世界大戦
 一 帝国世界絶頂期の旅
  帝国世界の完成/増大する日本人旅行者/帝国世界完成期のアジアと日本
 二 拡大する日本の力と英領植民地の日本人
  日本の力拡大の諸相/問題としての「からゆきさん」
 三 アジアの民衆への視線
  「亡国の民」の相貌/「中国人あなどるべからず」
 四 ヨーロッパとの競合と植民地統治策
  ヨーロッパと競合する日本像/植民地統治モデルの模索
 五 第一次世界大戦期の帝国航路
  戦火のなかの帝国航路/イギリス帝国の動揺/日本の将来
 【コラム3】香港・シンガポールに眠るからゆきさん

第Ⅴ章 ヨーロッパへの挑戦―― 一九二〇~三〇年代
 一 帝国世界再編期の旅
  帝国世界の危機と再編/旅する人の多様化/皇太子の旅/第二次世界大戦への道と帝国航路
 二 ヨーロッパに対抗する日本
  日本の存在感/アジア「解放」の夢?/排日気運の実感/一九三〇年代の寄港地
 三 植民地支配をめぐって
  イギリス帝国観の動揺/イギリス植民地統治策の吟味/アジアの民衆像の相克
 【コラム4】日米・日英交換船


エピローグ――帝国航路とアジア・ヨーロッパ
  敗戦国民の旅/脱植民地化の風のなかで/帝国航路と近代日本の軌跡


文献一覧
あとがき
人名索引 
木畑洋一(きばた よういち)
1946年生まれ.1972年東京大学大学院社会学研究科博士課程中退.東京大学・成城大学名誉教授.イギリス帝国史・帝国主義史,国際関係史.『支配の代償――英帝国の崩壊と「帝国意識」』(東京大学出版会,1987年),『帝国のたそがれ――冷戦下のイギリスとアジア』(東京大学出版会,1996年),『イギリス帝国と帝国主義――比較と関係の視座』(有志舎,2008年),『二〇世紀の歴史』(岩波新書,2014年)など.

書評情報

週刊東洋経済 2019年3月16日号
毎日新聞(朝刊) 2019年2月24日
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