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社会保障再考 〈地域〉で支える

社会から孤立している人達への「相談支援」,そこでの住民と行政による新たな〈地域〉づくりから社会保障の未来を考える

社会保障再考 〈地域〉で支える
著者 菊池 馨実
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 社会
刊行日 2019/09/20
ISBN 9784004317968
Cコード 0236
体裁 新書 ・ 238頁
在庫 在庫あり
いま社会保障制度を持続可能にするには,どうしたらいいのか.全国各地で始まっている,生活に困窮したり,社会から孤立している人たちへの「相談支援」が育む可能性を明らかにし,そこで生まれている住民と行政による新たな〈地域〉づくりを社会保障制度,そして法律の中に位置づけていく.
はじめに
 社会保障の持続可能性/この本がめざすもの/社会保障法という法分野


第1章 持続がむずかしい社会保障
 1 財政と人口
  高齢化のなかで/新たに法律をつくる/結婚,子育てから人口を考える/国家による推奨にならないように/より本質的な持続可能性の基盤
 2 家族,企業,地域が変わっていく
  社会保障の法的な定義/「すこやかで安心できる生活」/家族によるvi扶養/企業による福祉/雇用保障の強化/住宅手当からみる問題点/費用負担者としての企業/被用者保険の適用を拡大/地域の脆弱化と希薄化


第2章 何のための社会保障か
 1 「自律」支援,「自立」支援
  社会保障の目的/「自律」とは/保護から主体へ/認知症の人の生き方/発達障害のある子どもの成長/自律に向けた支援/「自立」とは/プロセスへの着目
 2 生存権に限界はあるのか
  憲法二五条/給付中心だったが/主体としての人間/「個人の自律の支援」/なぜ相談支援か
 3 支える人はいるのか
  社会的な共感と連帯/共同体の強調と新たな排除の危険性/互恵性に開かれた人間像/折々にみずからの生き方を修正できること/尊重されるべきこと/多元的な保障手段


第3章 何が変わってきているのか
 1 伝統的な社会保障のとらえ方
  貧民救済と労働者保険/社会保険から社会保障へ/所得を保障する/その後の発展
 2 社会的包摂と,個人のニーズへの対応
  経済発展がもたらしたもの/発達や成長に向けた支援/児童手当から子ども個人の手当へ/「孤立」を打開/相談支援の重要性/個別のニーズに合わせた手続的な保障/犯罪被害者,矯正施設退所者,DV被害者,がん患者などさまざまな人へ/生活困窮者自立支援法


第4章 社会保障は誰のためのものか
 1 不信感と不公平感
  財政への不安/医療分野での社会への包摂支援/最適水準保障の医療/高額薬剤をどう扱うか/介護保険改革/学生の感覚/思想の欠如/公平とは/世代間の不公平/社会的弱者の側の不公平感/中間層以上の不公平感/後期高齢者支援金の重荷/介護保険にも総報酬割/税制面での扱い/普遍的な子ども・子育て支援を/恩恵を実感できる仕組みを
 2 地域共生社会の構想
  障害者をめぐる法制度/地域包括ケアシステム/地域力強化に向けて/地域福祉の推進/地域づくりの視点
 3 生活困窮者自立支援法がもたらしたもの
  「生活困窮者」の定義の拡がり/一人ひとりの状況に応じた自立相談支援事業/就労に向けた準備/住まいを提供/家計の管理支援/子どもの学習支援

第5章 相談支援
 1 法によるサポート
  生活保護制度にはあったが/相談支援の先鞭/支援と自律の緊張関係/支援の給付化/支援を受ける権利/権利と専門性の相克/協働の必要性/支援は押しつけか/支援会議の設置/協同的意思決定/相談支援の法的規整/コストに向き合う/むずかしい政策効果/情報の共有に向けて
 2 さまざまな主体のかかわり
  社会保障の拡がり/国の役割/地域自治の役割/タテ割り行政の打破/まち・ひと・しごと創生法/自治体間の格差/支援者の専門性
 3 事業の位置づけ
  従来の「事業」/新たな「事業」の展開/政策理念をとらえにくい/国や地方自治体の責任


第6章 地域再構築
 1 地域を再生,再構築することの意義
  地域の変遷/我が事,丸ごと/縦割りから「丸ごと」へ/「引きこもり」青年との出会い/寄港地のような存在/浪江町のまちづくり/さまざまな困難を引き受ける/誰もが利用するかもしれない
 2 多層性の魅力
  社会保障と地域/断らない相談支援/「共にあること」で十分/地縁型コミュニティ/重層型コミュニティへ/新しい地縁型?/住民の責務とは/誘導型の手法で/支援の多層性
 3 継続的で多角的な支援
  「地域を絶えず耕し続けること」/石巻市の復興団地を取りまとめて/支援と自発性・自律性/看護と福祉の協力/首都圏の「地方」での実践/現役世代のかかわり/公的年金の財政は/地域経済への貢献/年金委員と年金事務所/権利擁護と成年後見
 4 地域志向型議論の射程
  財政的基盤の確保/まちづくりの必要性/都市部と地方部

おわりに 社会保障制度の再構築に向けて
  いままで考えてきたこと/世代的に融和するためには/高齢者医療制度の問題点/介護保険との統合/障害者への差別禁止/恒常的な議論の場をつくる/さまざまな世代とともに


主要参考文献

あとがき
菊池馨実(きくち よしみ)
1962年,北海道札幌市生まれ.北海道大学大学院法学研究科博士課程修了(博士〔法学〕).大阪大学助教授を経て,現在,早稲田大学法学学術院教授.
著書として,『年金保険の基本構造』(北海道大学図書刊行会),『社会保障の法理念』『社会保障法制の将来構想』『社会保障法(第2版)』(以上,有斐閣),『自立支援と社会保障』(編著,日本加除出版),『社会保険の法原理』(編著,法律文化社),『障害法』(共編著,成文堂),『社会保障法(第7版)』(共著,有斐閣),『ブリッジブック社会保障法(第2版)』(編著,信山社)ほかがある.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2019年11月9日
読売新聞(朝刊) 2019年10月13日
週刊エコノミスト 2019年10月15日(評者:土居丈朗さん)

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