企業中心社会を超えて
現代日本を〈ジェンダー〉で読む
過労死や福祉の貧困など、大企業中心の社会が作り出す歪みと痛みをジェンダーの視点から捉え直した先駆的著作。
企業中心社会、それは大企業の利害が個人や社会の利益よりも優先される社会である。長時間労働、過労死、福祉の貧困……。戦後の社会政策論は繰り返し企業中心社会の弊害を指摘してきたが、そこでは女性と男性が直面する現実の違いが忘れられていたのではないか。大企業中心の社会が作り出す歪みと痛みを、ジェンダーの視点から捉え直した先駆的著作。
初版はしがき
凡 例
第一章 企業中心社会の変革のために――いま必要な視角
1 生活大国五か年計画の不人気をさぐる
生活大国五か年計画が“ブーム”をおこせなかったのは/ぼかされた焦点=企業中心社会
2 いま必要な視角はなにか
企業中心社会の構造と弊害/やはり迫力不足の提言/企業中心社会の確立は石油危機以降/問題の核心としてのジェンダー
第二章 企業中心社会の労働とジェンダー
1 性別賃金格差と性別分離の指標
日本の「パラドクス」?/日本の性別賃金格差は最大級/分離指数とはなにか/分離指数を分解すると
2 性別賃金格差と性別分離の理論
「知的熟練」と賃金格差/査定つきの「年齢別生活費保障型」賃金/氏原正治郎のとらえた「女子労働者の賃金問題」/「独立でない労働」/賃金法則一般と「特殊」/「家父長制」とフェミニズム
3 パートタイマー化と性別分離
「パートタイマー」とは「身分」だった/日本的パートの労働時間と賃金/パートタイマーの分布/「自由な選択」によるパート?
4 下請制と性別分離
規模別賃金格差と性別/自動車部品下請のケース/「日本モデル」を支える条件――日立のME化のケース/内外製比率と性別分離――テレビ工場のケース
5 無収入労働におけるジェンダー関係
「新・性別役割分担」/国際的に特異な日本/家事分担の決め手は時短か?/家族戦略としての会社人間/会社人間と内助の妻の「淋しい」共生
第三章 企業中心社会の再編――産業構造の変動とジェンダー関係
1 二つの女子労働論から
「柔軟性」への性別・年齢別の貢献/サービス経済化と「女性の職場進出」論
2 産業別雇用構造の再編と性別・年齢階層
データの性格と時期区分
(1)石油危機直後――一九七三―七五年
第三次産業化と男性化の並行/年齢階層別構成の変化
(2)安定成長期――一九七五―八四年
サービス経済化による雇用の女性化?/年齢階層別構成の変化
(3)円高不況期からバブル経済へ――一九八五年以降
一九八五―八七年/一九八七―八九年
(4)中高年化とパートタイマー化――小括にかえて
各時期の要約/中高年女性雇用者の増加が意味するもの
3 職業構造の変化と性別・年齢階層
就業者ベースの変化/雇用者ベースの変化/職業構造と性別・年齢階層と世代
4 雇用の女性化に見る日本の特徴
欧米の雇用の女性化との共通性はあるか/ジェンダー・ギャップとサービス経済化/長時間労働、パートタイマー化、そして「賃労働の風化」
第四章 企業中心社会の総仕上げ――「日本型福祉社会」政策の展開
「豊かな社会」の餓死/企業中心社会の「福祉」の谷間
1 社会保障制度の「基本的骨格」をめぐって
『厚生白書』昭和六一年版の見解/「基本的骨格」の実相――家族だのみ・大企業本位・男性本位
2 企業中心社会と社会保障制度の形成
生存権と生活保護法/福祉諸法と失業保険法/皆保険・皆年金体制の形成/五四年厚生年金法の背景と影響/大企業本位の生活保障/家族だのみと男性本位/短い幕間劇としての「福祉元年」(1)――医療改革/短い幕間劇としての「福祉元年」(2) ――年金改革
3 一九八〇年代の社会保障制度「再構築」――企業中心社会の総仕上げ
「福祉見直し」――福祉国家から「日本型福祉社会」へ/「日本型福祉社会」論の「個人」と「家庭」/家庭基盤充実策の展開/社会保障制度の「第一次改革」(1) ――福祉施設費用徴収基準の変更/ 社会保障制度の「第一次改革」(2) ――生活保護適正化と児童扶養手当重点化/「母親餓死事件」の「真相」/社会保険改革と雇用の女性化――制度間格差の縮小と一元化/大企業本位の維持強化/男性本位の維持強化と雇用の女性化/雇用の女性化と雇用機会均等法
4 結論――会社人間にさようならするために
ベルリンで出会う――大沢式魚哲学と発想法(山田ボヒネック 頼子)
付論 社会政策の比較ジェンダー分析とアジア
はじめに
1 「現代日本社会と女性」
2 社会政策のジェンダー・バイアス
3 社会政策の比較ジェンダー分析
4 開発とジェンダー
おわりに
なにを明らかにし、どう歩んだか――岩波現代文庫あとがきにかえて
1 本稿の意図と内容
2 企業中心社会は緩和されたのか――曲がり角としての一九九〇年代前半
3 政策は再構築されたのか
4 一九九〇年代末からのショックと社会問題――社会科学者になにができるか
主要参考・引用文献、本書に関連する著者の既発表論文
本書について
凡 例
第一章 企業中心社会の変革のために――いま必要な視角
1 生活大国五か年計画の不人気をさぐる
生活大国五か年計画が“ブーム”をおこせなかったのは/ぼかされた焦点=企業中心社会
2 いま必要な視角はなにか
企業中心社会の構造と弊害/やはり迫力不足の提言/企業中心社会の確立は石油危機以降/問題の核心としてのジェンダー
第二章 企業中心社会の労働とジェンダー
1 性別賃金格差と性別分離の指標
日本の「パラドクス」?/日本の性別賃金格差は最大級/分離指数とはなにか/分離指数を分解すると
2 性別賃金格差と性別分離の理論
「知的熟練」と賃金格差/査定つきの「年齢別生活費保障型」賃金/氏原正治郎のとらえた「女子労働者の賃金問題」/「独立でない労働」/賃金法則一般と「特殊」/「家父長制」とフェミニズム
3 パートタイマー化と性別分離
「パートタイマー」とは「身分」だった/日本的パートの労働時間と賃金/パートタイマーの分布/「自由な選択」によるパート?
4 下請制と性別分離
規模別賃金格差と性別/自動車部品下請のケース/「日本モデル」を支える条件――日立のME化のケース/内外製比率と性別分離――テレビ工場のケース
5 無収入労働におけるジェンダー関係
「新・性別役割分担」/国際的に特異な日本/家事分担の決め手は時短か?/家族戦略としての会社人間/会社人間と内助の妻の「淋しい」共生
第三章 企業中心社会の再編――産業構造の変動とジェンダー関係
1 二つの女子労働論から
「柔軟性」への性別・年齢別の貢献/サービス経済化と「女性の職場進出」論
2 産業別雇用構造の再編と性別・年齢階層
データの性格と時期区分
(1)石油危機直後――一九七三―七五年
第三次産業化と男性化の並行/年齢階層別構成の変化
(2)安定成長期――一九七五―八四年
サービス経済化による雇用の女性化?/年齢階層別構成の変化
(3)円高不況期からバブル経済へ――一九八五年以降
一九八五―八七年/一九八七―八九年
(4)中高年化とパートタイマー化――小括にかえて
各時期の要約/中高年女性雇用者の増加が意味するもの
3 職業構造の変化と性別・年齢階層
就業者ベースの変化/雇用者ベースの変化/職業構造と性別・年齢階層と世代
4 雇用の女性化に見る日本の特徴
欧米の雇用の女性化との共通性はあるか/ジェンダー・ギャップとサービス経済化/長時間労働、パートタイマー化、そして「賃労働の風化」
第四章 企業中心社会の総仕上げ――「日本型福祉社会」政策の展開
「豊かな社会」の餓死/企業中心社会の「福祉」の谷間
1 社会保障制度の「基本的骨格」をめぐって
『厚生白書』昭和六一年版の見解/「基本的骨格」の実相――家族だのみ・大企業本位・男性本位
2 企業中心社会と社会保障制度の形成
生存権と生活保護法/福祉諸法と失業保険法/皆保険・皆年金体制の形成/五四年厚生年金法の背景と影響/大企業本位の生活保障/家族だのみと男性本位/短い幕間劇としての「福祉元年」(1)――医療改革/短い幕間劇としての「福祉元年」(2) ――年金改革
3 一九八〇年代の社会保障制度「再構築」――企業中心社会の総仕上げ
「福祉見直し」――福祉国家から「日本型福祉社会」へ/「日本型福祉社会」論の「個人」と「家庭」/家庭基盤充実策の展開/社会保障制度の「第一次改革」(1) ――福祉施設費用徴収基準の変更/ 社会保障制度の「第一次改革」(2) ――生活保護適正化と児童扶養手当重点化/「母親餓死事件」の「真相」/社会保険改革と雇用の女性化――制度間格差の縮小と一元化/大企業本位の維持強化/男性本位の維持強化と雇用の女性化/雇用の女性化と雇用機会均等法
4 結論――会社人間にさようならするために
ベルリンで出会う――大沢式魚哲学と発想法(山田ボヒネック 頼子)
付論 社会政策の比較ジェンダー分析とアジア
はじめに
1 「現代日本社会と女性」
2 社会政策のジェンダー・バイアス
3 社会政策の比較ジェンダー分析
4 開発とジェンダー
おわりに
なにを明らかにし、どう歩んだか――岩波現代文庫あとがきにかえて
1 本稿の意図と内容
2 企業中心社会は緩和されたのか――曲がり角としての一九九〇年代前半
3 政策は再構築されたのか
4 一九九〇年代末からのショックと社会問題――社会科学者になにができるか
主要参考・引用文献、本書に関連する著者の既発表論文
本書について
大沢真理(Mari Osawa)
1953年生まれ。東京大学名誉教授。経済学博士。専攻は社会政策。著書に『イギリス社会政策史』(東京大学出版会)、『男女共同参画社会をつくる』(NHKブックス)、『現代日本の生活保障システム』『生活保障のしくみ』(以上、岩波書店)、『生活保障のガバナンス』(有斐閣)など、訳書に『平等と効率の福祉革命』(監訳、岩波書店)などがある。
1953年生まれ。東京大学名誉教授。経済学博士。専攻は社会政策。著書に『イギリス社会政策史』(東京大学出版会)、『男女共同参画社会をつくる』(NHKブックス)、『現代日本の生活保障システム』『生活保障のしくみ』(以上、岩波書店)、『生活保障のガバナンス』(有斐閣)など、訳書に『平等と効率の福祉革命』(監訳、岩波書店)などがある。