世界 2020年9月号

【特集1:ベーシックインカム・序章】【特集2:戦争責任の継承】

世界 2020年9月号
ジャンル 雑誌 > 世界 > 定期号
刊行日 2020/08/07
■特集1 ベーシックインカム・序章

 パンデミックの大波が、不況と失業をもたらしつつある。
 この情勢のもとで、いかに人々の生存する権利を保障するのか。

 いま、国際的にベーシックインカムをめぐる論議が活発化している。
ベーシックインカムとは、「すべての人に、個人単位で、資力調査や労働要件を課さずに無条件で給付されるお金」である(本特集、山森論文より)。
 今回、日本政府は域内に住むすべての市民に一律10万円を配布する政策を実行した。
それによって、この構想を想像することは容易になった。

 だが、そこに落とし穴はないか。そもそも実現可能か。各国ではどのような取り組みが行われ、どのような構想が討議されているのか。今こそ本気で議論を開始したい。


■特集2 戦争責任の継承

 中国社なぜあの人は、死ななければならなかったのか。
 なぜその人は、被害を訴えつづけているのか。

 死者の声に、被害者の声に、耳をすますこと。
 聞き取ろうとするいとなみ。
 そして社会に働きかけるいとなみ。

 戦争をめぐる体験の継承、責任をめぐる議論は、
 死者や被害者とのかかわりを通じ、
 私たちの社会を、個々人の生に立脚したものへと変えてきた。
 これを「自虐」と呼べるだろうか。

 戦争責任を問うことは、残虐行為を行ないうるわれわれが、
 それでも希望の方に向かおうという意思表明でもある。

 戦後75年――。ともに考えてみたい。
┏━━━┓
┃特集1┃ベーシックインカム・序章
┗━━━╋…────────────────────────────────

〈構想と実践〉
連帯経済としてのベーシックインカム
山森 亮(同志社大学)

〈資料〉
主要各国の新型コロナウイルス対策
千原則和(横浜国立大学非常勤教員)

〈オルタナティブ〉
可視化されたベーシックインカムの可能性
本田浩邦(獨協大学)

〈取扱の注意〉
ベーシックインカムを日本で導入しようというならば
今野晴貴(NPO法人POSSE)

┏━━━┓
┃特集2┃戦争責任の継承
┗━━━╋…────────────────────────────────

〈最終講義〉
自分史の中の軍事史研究
吉田 裕(一橋大学名誉教授)

〈当事者との約束〉
終わらないことを引き受ける――日本軍「慰安婦」に向き合うために
渡辺美奈(wam館長)

〈修正主義が公定史観へ〉
軍艦島・否定できない強制労働の歴史
竹内康人(歴史研究家)

〈責任のありか〉
戦争犯罪における組織と個人――東京裁判を事例に
戸谷由麻(ハワイ大学)

〈インタビュー〉
朝鮮人BC級戦犯刑死者の無念に応えてほしい――不条理との長い闘い
李鶴来(韓国人元BC級戦犯)、解説=内海愛子

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

〈オンライン対談〉
違う世界に通じる入口へ――誰ひとり取り残さない
ナオミ・クライン、アルンダティ・ロイ 訳・構成=荒井雅子

〈哲学的対話〉
人間の尊厳と生命権は不可分 ――出口戦略をめぐって
ユルゲン・ハーバーマス、クラウス・ギュンター、訳・解説=三島憲一

〈生存のために〉
ホームレス・クライシスに立ち向かう
稲葉 剛(つくろい東京ファンド代表理事)

〈政策こそが貧困だ!〉
死にたくないのに、死んでしまう――コロナ禍のSOS対応現場から
瀬戸大作(反貧困ネットワーク事務局長)

〈迫る破局〉
森のなかの死――アマゾニア先住民族とCOVID-19
アパレシーダ・ヴィラサ(人類学者)、訳・解説=近藤宏

〈フォトルポルタージュ〉
ウイグル日記(下)――抑圧と排除
川嶋久人(フォトジャーナリスト)

〈画期的判決〉
モラル・ハラスメント労働法制の最前線――フランス・テレコム事件判決と企業責任
ロイック・ルルージュ(フランス・ボルドー第四大学)、聞き手=中村富美子

〈被害の実相〉
手記 東京福祉大学留学生「失踪」事件
――第2章 留学生はどこからきて、どこへ行くのか
元東京福祉大学教員有志

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇独バイエル社和解へ――アグリビジネスを揺さぶるグリホサート問題
天笠啓祐

◇転換なのか? 日本政府の石炭火力政策
伊与田昌慶

◇民主主義と自由主義の不協和音――ルーマニア政治の現在地
藤嶋 亮

◇東京都知事選――二期目の小池都政下の課題
村田悠輔

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆専門知の「柔らかさ」とどうつきあうか
平川秀幸(大阪大学)

☆読書の要諦――文芸 言葉の帰途
藤沢 周(小説家)

☆首都改造の首謀者たち――源川真希著『首都改造――東京の再開発と都市政治』
森まゆみ(作家)

☆「作られた戦争」の検証――村瀬健介著『中東テロリズムは終わらない――イラク戦争以後の混迷の源流』
谷山博史(日本国際ボランティアセンター顧問)

☆〈連載〉読書会という幸福【第9回】
『ドルジェル伯の舞踏会』(ラディゲ)
向井和美(翻訳家・司書)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

〈新連載〉
●金正恩の選択【第1回】
コロナ鎖国、韓国に矛先
井上智太郎(共同通信)

〈新連載〉
ソウルの夢――グローバル都市をあるく【第1回】
江南Ⅰ――「K的なもの」の発祥地
金成玟(北海道大学)

〈好評連載〉----------

●プリズン・サークル【第9回】
ソーシャルアトム
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)

●ポストコロナの大学論【第2回】
キャンパスは本当に必要なのか?
吉見俊哉(東京大学)

----------------------------

〈特別篇〉
●脳力のレッスン【221】
コロナが炙りだした日本の課題と針路――その中間的総括(上)
寺島実郎

●メディア批評【第153回】
神保太郎(ジャーナリスト)

●片山善博の「日本を診る」【130】
東京都とも専門家とも対話ができない政権
片山善博(早稲田大学)

●いま、この惑星で起きていること【第9回】
旱魃と豪雨――極端になる水の循環
森さやか(気象予報士)

●すぐそこにある世界【第18回】
アインシャムス大学もよろしく
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)

●但馬日記【第17回】
五里霧中――コロナ禍と演劇
平田オリザ(劇作家)

●沖縄(シマ)という窓
沖縄から見る Black Lives Matter
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)

●原発月報――(20・6~7)
福島原発事故記録チーム

●ドキュメント激動の南北朝鮮【277】(20・6~7)
編集部

●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)

○アムネスティ通信

○読者談話室

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

○表紙写真
観客の社会的距離を保つためミニオンのぬいぐるみが席に置かれた映画館。2020年6月22日、フランス・パリ。共同イメージズ・REUTERS/Benoit Tessier

○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
ページトップへ戻る