結核がつくる物語

感染と読者の近代

思想統制から戦争に至る厳しい時代のなかで、結核患者たちはなにを思い、どんな言葉を残したのか。

結核がつくる物語
著者 北川 扶生子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2021/01/27
ISBN 9784000614481
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 218頁
定価 2,750円
在庫 在庫あり
近代最大の感染症、結核は「治療法のない死病」として恐れられてきた。思想統制から戦争に向かう厳しい時代のなかで、患者たちは何を思い、どんな言葉を残したのか。彼らの言葉から何を学ぶことができるのか。結核が国や文化や文学に与えた影響とともに、患者たち個人の療養環境を捉え直し、患者の営みの意味を考える。
序 章 患者って誰のこと?
 1 近代日本最大の感染症・結核
 2 病気を書く、伝える、笑う

第1章 病気になるのは誰のせい?――国家と結核
 1 環境要因説から体質遺伝説へ――優生学の台頭
 2 自然淘汰としての結核
 3 戦争とからだ――国家による身体の管理

第2章 空気が変わるとき――文化と結核
 1 都市/地方イメージの変化
 2 〈美人の基準〉の変化と健康のステイタス化
 3 結核予防国民運動

第3章 患者は特別なひと?――文学と結核
 1 愛と死をみつめて――闘病純愛もの
 2 志なかばにして――立志青年の英雄的悲劇
 3 貧困と﹁過激思想」――共産主義・無政府主義・テロ
 4 ふだんは見えないものが――鋭敏な感受性のしるし

第4章 病むわたしの日常を綴る――書くことと結核
 1 見ることの凄味――正岡子規の絶筆
 2 日常の発見、地方の発見――写生文・日記文運動と投稿文化
 3 座と笑い――俳諧精神の水脈

第5章 確かな情報はどこに?――患者とメディア
 1 あふれるデマと建前
 2 結核患者向け雑誌『療養生活』と自然療法
 3 療養グッズ通販と患者の格差

第6章 「病いはわたしを鍛える」――患者と修養
 1 サナトリウムと療養小屋
 2 自然療法と信仰
 3 修養主義の系譜

第7章 発信する、つながる、笑う――患者交流欄のしくみとはたらき
 1 〈患者〉からの解放
 2 苦難を交換する
 3 笑いがつくりだすもの――露出とパフォーマンス

終 章 わたしたちのからだは誰のものか

あとがき
参考文献
結核関連年表
索 引
北川扶生子(きたがわふきこ)
1966年生まれ。神戸大学大学院文化学研究科単位取得退学、博士(文学)。神戸大学大学院文化学研究科助手、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)日本研究センター客員研究員、鳥取大学地域学部准教授を経て、現在、天理大学文学部教授。専門は日本近代文学。主な著書に『コレクション・モダン都市文化 第53巻 結核』(編著、ゆまに書房)、『漱石文体見本帳』(勉誠出版)、『漱石の文法』(水声社)等がある。
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