江戸遊民の擾乱 転換期日本の民衆文化と権力

権力による民衆文化の包摂と逸脱、身体をめぐる政治の諸相を、文化史研究の視角から鮮やかに読み解く。

江戸遊民の擾乱 転換期日本の民衆文化と権力
著者 平野 克弥 , 本橋 哲也
ジャンル 書籍 > 単行本 > 日本歴史
刊行日 2021/08/19
ISBN 9784000223119
Cコード 0021
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 382頁
定価 5,060円
在庫 在庫あり
大都市江戸で花開いた多彩な民衆文化を、徳川幕府は躍起になって統制しようと試み続けた。それはなぜなのか。為政者たちが恐れた「跳梁する身体」をめぐる政治的・文化的せめぎあいの様相を、歌舞伎・浄瑠璃・戯作・浮世絵・見世物などの具体的事例に即して、文化史研究をふまえた視角から鮮やかに読み解く。江戸から明治にいたる近代転換期の歴史像への斬新なアプローチ。
日本語版によせて

序 章

第1章 包摂の戦略とそのアポリア
 はじめに
 1 徳川幕府のイデオロギー――新たな社会秩序のなかで身体を構想する
 2 都市の空間と異種混合
 3 初期徳川時代における権力の両義性と意図せざる歴史的展開
 4 アノマリーなるものたち
 5 感性の構造――浮世と中間的存在
 おわりに

第2章 後期徳川文化におけるパロディと歴史
 はじめに
 1 貨幣、パロディ、新しい社会空間の生産
 2 テクストと批評
 3 パロディと表象空間
 4 変革行為としての遊び
 5 相対主義とフェティシズムとしてのパロディ
 おわりに

第3章 コミック・リアリズム――転倒の戦略
 はじめに
 1 パロディの一形式としての滑稽あるいはコミック・リアリズム
 2 転倒というテクネー――うがち、嘲り、あるいは辛辣な告発
 3 うがちを演じる身体
 4 江戸民衆文化における笑いとその象徴的意味
 おわりに――コミック・リアリズムの能力とその意義

第4章 グロテスク・リアリズム――カオスの戦略
 はじめに
 1 「異様」「奇怪」あるいはグロテスクという概念
 2 人間性の新たなビジョン
 3 グロテスクなものの場所
 4 カオス世界の表象
 おわりに――グロテスク・リアリズムの潜在力とその意義

第5章 近代化する日本と身体の変容
 はじめに
 1 新しい身体政治
 2 身体としての「風俗」
 3 権力の新形態、新たな主体
 おわりに

補章――歴史的叙述と本書の理論的視座


訳者あとがき(本橋哲也)

文献一覧
索 引
平野克弥(ひらの かつや)
1967年生。同志社大学法学部政治学科卒業。シカゴ大学で博士号取得。現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)歴史学部准教授。研究分野:日本近世・近代の文化史、思想史、歴史理論。著作に"Regulating Excess: Cultural Politics of Consumption in Tokugawa Japan" in G.Riello and U.Rublack eds.,The Right to Dress: Sumptuary Laws in a Global Perspective,c. 1200‒1800(Cambridge University Press),「遭遇としての植民地主義」(成田龍一他編『環太平洋地域の移動と人種』京都大学学術出版会)、編訳書にナジタ『Doing 思想史』(みすず書房)、訳書にハルトゥーニアン『アメリカ〈帝国〉の現在』(みすず書房)などがある。

本橋哲也(もとはし てつや)
1955年生。東京大学文学部英米文学科卒業。ヨーク大学で博士号取得。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。研究分野:イギリス文学、カルチュラル・スタディーズ、演劇批評。著書に『ポストコロニアリズム』(岩波新書)、『思想としてのシェイクスピア』(河出書房新社)、『『愛の不時着』論』(ナカニシヤ出版)など、訳書にスキャブランド『犬の帝国』(岩波書店)、バトラー『生のあやうさ』(以文社)、ウィーバー=ハイタワー『帝国の島々』(法政大学出版局)などがある。
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