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ジョブ型雇用社会とは何か

正社員体制の矛盾と転機

間違いだらけの「ジョブ型論」を一刀両断。返す刀で、日本の様々な労働問題の深層に斬り込む。

ジョブ型雇用社会とは何か
著者 濱口 桂一郎
通し番号 新赤版 1894
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 社会
刊行日 2021/09/17
ISBN 9784004318941
Cコード 0236
体裁 新書 ・ 306頁
在庫 在庫あり
前著『新しい労働社会』から12年。同書が提示した「ジョブ型」という概念は広く使われるに至ったが、今や似ても似つかぬジョブ型論がはびこっている。ジョブ型とは何であるかを基礎の基礎から解説した上で、ジョブ型とメンバーシップ型の対比を用いて日本の労働問題の各論を考察。隠された真実を明らかにして、この分析枠組の切れ味を示す。
はじめに


序 章 間違いだらけのジョブ型論
 1 氾濫するおかしなジョブ型論
 2 ジョブ型の毀誉褒貶
 3 メンバーシップ型の矛盾


第1章 ジョブ型とメンバーシップ型の基礎の基礎
 1 ジョブ型契約とメンバーシップ型契約
 2 入口と出口とその間
 3 賃金制度と「能力」
 4 対照的な労使関係
 5 非正規労働者と中小企業労働者
 6 法律と判例の複雑な関係


第2章 入口と出口
 一 入口――就職と採用
  1 採用の自由と採用差別禁止
  2 試用期間の意味
  3 学歴詐称の意味
  4 入口の年齢差別禁止法
  5 周縁地帯の中途採用
 二 入口以前の世界
  1 教育と職業の密接な無関係
  2 日本型雇用の収縮に取り残される教育
  3 アカデミズムの幻想と職業訓練の世界
  4 学び直しというけれど
  5 学習のフォーマルとインフォーマル
 三 定年と高齢者雇用の矛盾
  1 定年退職は引退に非ず
  2 根っこにある中高年問題
  3 矛盾に矛盾を重ねる高齢者雇用対策
 四 解雇をめぐる誤解
  1 ジョブ型社会で最も正当な整理解雇
  2 誤解だらけの「能力」不足解雇
  3 現実社会の解雇の姿
  4 移る権利・移らない権利


第3章 賃金――ヒトの値段、ジョブの値段
 一 生活給を「能力」で説明した年功賃金の矛盾
  1 職務評価による固定価格がジョブ型賃金
  2 生活給から「能力」主義への曲がりくねった道
  3 下がらない「能力」の矛盾とご都合主義の成果主義
 二 日本版同一労働同一賃金という虚構
  1 非正規労働者の均等・均衡処遇政策
  2 同一労働同一賃金という看板を掲げた政策過程の裏側
 三 家族手当と児童手当の間
  1 家族手当の展開
  2 児童手当の曲がりくねった細道
  3 矛盾に満ちた家族手当


第4章 労働時間――残業代と心身の健康のはざま
 一 残業代とエグゼンプションの迷宮
  1 労働時間とは残業代と見つけたり
  2 適用除外制度をめぐるねじれた経緯
  3 月給制と時給制の一体化
  4 管理職は職種か処遇か
 二 本当のワーク・ライフ・バランス
  1 夫と妻のワークライフ分業
  2 迷走するワーク・ライフ・バランス
  3 転勤という踏み絵
 三 過労死防止のパラドックス
  1 残業規制の源流は過労死裁判
  2 健康とプライバシーのはざま
 四 メンタルヘルスの迷宮
  1 メンタルヘルスのパターナリズムとプライバシー
  2 メンバーシップ型はパワハラの培養土


第5章 メンバーシップの周縁地帯
 一 女性活躍というけれど
  1 女子は若いのに限る――花嫁候補のOLモデル
  2 ジョブの平等、コースの平等
  3 ジョブなき社会の女性活躍
 二 障害者という別枠
  1 メンバーシップ型になじまない障害者雇用
  2 発達障害と躁鬱気質のパラドックス
 三 ローエンド外国人――サイドドアからフロントドアへ
  1 サイドドア型外国人労働者導入政策
  2 サイドドアからフロントドアへ
 四 ハイエンド外国人の虚実
  1 ジョブ型「技人国」在留資格とメンバーシップ型正社員の矛盾
  2 専門職はどこまで高度か


第6章 社員組合のパラドックス
 一 企業別組合――労働組合だけど従業員代表
  1 ジョブ型社会の労働組合と従業員代表
  2 事業一家の覇者交替
  3 戦後日本社会の設計図
  4 労働争議の蔓延と絶滅
 二 従業員代表制は転機になるか?
  1 企業別組合から排除された人々
  2 一九四九年改正の隠れた意図
  3 企業別組合と従業員代表制の複雑な関係

参考書
濱口桂一郎(はまぐち けいいちろう)
1958年大阪府生まれ。1983年東京大学法学部卒業。同年労働省に入省。東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て、2017年4月より、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長。
専門―労働法、社会政策
著作―『新しい労働社会――雇用システムの再構築へ』(岩波新書、2009年)、『日本の雇用終了――労働局あっせん事例から』(労働政策研究・研修機構、2012年)、『若者と労働――「入社」の仕組みから解きほぐす』(中公新書ラクレ、2013年)、『日本の雇用と中高年』(ちくま新書、2014年)、『働く女子の運命』(文春新書、2015年)、『働き方改革の世界史』(共著、ちくま新書、2020年)等多数。

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