横光利一と近代メディア

震災から占領まで

近代メディアの隆盛とともに、「文学の神様」にまで昇り詰めた作家の軌跡とその苦悩を描き出す。

横光利一と近代メディア
著者 十重田 裕一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学評論
刊行日 2021/10/05
ISBN 9784000254748
Cコード 3095
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 416頁
定価 8,800円
在庫 在庫あり
メディアは作家に何をもたらし、作家はメディアといかに切り結んだのか。関東大震災前後からアメリカ軍による占領期までのおよそ三〇年間、激変する社会の状況と真摯に向き合い、創作活動を続けた文学者横光利一。近代メディアの隆盛とともに、「文学の神様」にまで昇り詰めた作家の軌跡とその苦悩を時代のなかに描き出す。
はじめに


第Ⅰ部 習作期から新感覚派時代へ

第一章 「文学の洗礼を与へた」書物たち――鏡としての翻訳文学
 第一節 ドストエフスキー論の翻訳の試み――習作期における表現の模索
 第二節 典拠の志向性――文壇登場の大正時代後期を中心に


第Ⅱ部 前衛の旗手として

第二章 「文壇といふ市場」へ――『文藝春秋』『文藝時代』『改造』との関連を中心に
 第一節 被災した作家の表現とメディア――関東大震災による感覚の変容
 第二節 市場化する文学出版――交錯する『文藝時代』と『文藝春秋』のゆくえ
 第三節 「円本」時代の到来と作家の新たな展開――改造社の発展とともに

第三章 「新しい感性の羅列」――交流する文学と映画
 第一節 文学と映画の遭遇――「新感覚派」の再発見
 第二節 映画製作を通じて見出される創作の方法――新感覚派映画聯盟と「狂つた一頁」
 第三節 前衛の文学と映画――「機械」の映画性


第Ⅲ部 文学の〈神様〉の誕生

第四章 「共同製作」の場――本文とメディアをめぐる探究
 第一節 植民地を描いた小説と二つの検閲――『上海』をめぐる言論統制と創作の葛藤
 第二節 編集される本文――「時間」の直筆原稿からの照明
 第三節 分裂した本文の軌跡――「純粋小説について」から「純粋小説論」へ

第五章 「国語への服従」――拡大するメディアと読者層
 第一節 作家にとって「国語」とは何か――「国語との不逞極る血戦時代」から「服従時代」へ
 第二節 メディアがつくる「文学の神様」――文藝復興期の前後を中心に
 第三節 「文学の神様」の歐洲紀行――外遊とその報道をめぐって


第Ⅳ部 検閲下の葛藤と再生への模索

第六章 「明日の小説」のために――占領期の表現と言論統制
 第一節 交錯するメディア検閲――編集者の日記に記録された『旅愁』出版の舞台裏
 第二節 書き換えられた『旅愁』の本文――プランゲ文庫所蔵の校正刷の考察
 第三節 引き裂かれた「微笑」――事後検閲における編集者の自己検閲
 第四節 占領期日本で出版された書物に見る検閲の痕跡――プランゲ文庫所蔵資料からの照明


おわりに
あとがき

初出一覧
図版一覧
横光利一とメディアをめぐる略年表
英文目次
英文要旨
索 引
十重田裕一(とえだ ひろかず)
1964年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。大妻女子大学を経て、現職は早稲田大学教授・国際文学館長。自著に『「名作」はつくられる――川端康成とその作品』(NHK出版、2009年)、『岩波茂雄――低く暮らし、高く想ふ』(ミネルヴァ書房、2013年)、共編著に『占領期雑誌資料大系文学編』全5巻(岩波書店、2009-10 年)、『岩波茂雄文集』全3巻(岩波書店、2017年)、Literature among the Ruins, 1945-1955 PostwarJapanese Literary Criticism(Lexington Books,2018年)、『東京百年物語』全3巻(岩波書店、2018年)、『〈作者〉とは何か継承・占有・共同性』(岩波書店、2021 年)など。

受賞情報

やまなし文学賞〔研究・評論部門〕(2022年)
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