狡智の文化史

人はなぜ騙すのか

嘘や偽り、詐欺など、知の一類型としての「狡智」のもつ意味を、古今東西の史実や物語を素材に考察する。

狡智の文化史
著者 山本 幸司
通し番号 文芸344
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 文芸
刊行日 2022/06/15
ISBN 9784006023447
Cコード 0139
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 294頁
定価 1,232円
在庫 在庫あり
嘘、偽り、詐欺、謀略……。秩序や倫理をもって排除しようとしても、決して人間世界から排除しきれない「狡智」という知のあり方。この厄介な知性は人類の歴史の中でどのように生まれ、どのように意味づけされ、社会の中に組み込まれてきたのだろうか。古今東西の史書・文学・神話・民話などを素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりを考える。
 はじめに

序章 フィクションの中の詐欺師たち
 1 「スティング」の世界
 2 バルザックの金融小説とポーの詐欺師論
 3 コリンズ、メルヴィル、マン
 4 エンターテインメントとしての詐欺話
 5 エゴと倫理観
 6 「うそ教室の勧め」
 7 柳田國男と『不幸なる芸術』

第一章 日本人の狡智観
 1 日本神話における詐略
 2 源平合戦の騙し合い
 3 味方同士の騙し合い
 4 詐略の名人
 5 「やまと心」とは
 6 やまと心の実例
 7 藤原頼長と信西入道
 8 藤原為盛の機知

第二章 馬喰八十八の智恵
 1 「馬喰八十八」
 2 「エンマ様をぶち殺した農夫」
 3 領主を騙した粉ひきの話
 4 「二人のコンパードレ」と「カンプリアーノの物語」
 5 死体を使って儲ける話
 6 「レスターの修道士

第三章 狡智と致富
 1 八十八の類話
 2 昔話における馬喰
 3 騙る馬喰
 4 狂言に登場する馬喰像
 5 交換による金儲け
 6 「ウサギのかしこい商売」

第四章 中国における狡智の哲学
 1 諸葛孔明と曹操
 2 老子、荘子、墨家
 3 荀子
 4 「兵とは詭道なり」
 5 韓非子
 6 謀計の評価

第五章 ギリシャ人と狡智
 1 オデュッセウスの狡智
 2 ヘルメスという神
 3 プラトンの狡智に対する態度
 4 狡智の領域
 5 メティス的知性

第六章 生きるための狡智
 1 狡智とトリックスター
 2 トリックスター、八十八
 3 『狐物語
 4 ピカレスク文学の世界
 5 狡智と喜劇
 6 マチンガの狡智

終章 騙しの起源と動物行動
 1 人間の本性と動物との関連性
 2 動物の欺瞞行動
 3 騙しとは
 4 類人猿の騙し行動
 5 他者の理解と騙し

 参照文献
 あとがき
 現代文庫版あとがき
山本幸司(やまもと こうじ)
1946年生まれ。静岡文化芸術大学名誉教授。日本中世法制史・思想史。著書に『穢と大祓(増補版)』(解放出版社)、『天武の時代』(朝日新聞社)、『頼朝の精神史』『頼朝の天下草創』(ともに講談社)、『〈悪口〉という文化』(平凡社)、編著に『網野善彦著作集』『網野善彦対談集』(ともに岩波書店)などがある。
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