岩波講座 世界歴史 第8巻

西アジアとヨーロッパの形成 8~10世紀

ヨーロッパ・ビザンツ帝国・イスラーム帝国の新たな社会はいかに成立したか。転換期の諸相を活写する。

西アジアとヨーロッパの形成 8~10世紀
著者 荒川 正晴 編集委員 , 大黒 俊二 編集委員 , 小川 幸司 編集委員 , 木畑 洋一 編集委員 , 冨谷 至 編集委員 , 中野 聡 編集委員 , 永原 陽子 編集委員 , 林 佳世子 編集委員 , 弘末 雅士 編集委員 , 安村 直己 編集委員 , 吉澤 誠一郎 編集委員
ジャンル 書籍 > 単行本 > 外国歴史
書籍 > シリーズ・講座・全集 > 岩波講座 世界歴史
シリーズ 岩波講座 世界歴史
刊行日 2022/06/28
ISBN 9784000114189
Cコード 0322
体裁 A5 ・ 上製 ・ 314頁
定価 3,520円
在庫 在庫あり
地中海から中央アジアに及ぶ一帯では、古代の遺産を引き継ぎながら、一神教による共通の枠組みのもと相互に連動する世界が立ち現れた。今日の諸社会の原風景となるこの世界は、ヨーロッパ・ビザンツ帝国・イスラーム帝国という政治体制下で、いかに形作られたのか。ユーラシア大陸西部の転換期における政治・社会・文化の諸相を活写する。
展望|Perspective

 ユーラシア西部世界の構成と展開……大月康弘、清水和裕
  一、地中海世界にとっての八―一〇世紀
  二、転換期としての七世紀
  三、カロリンガーのフランク王国
  四、ザクセン朝のフランク王国
  五、一〇世紀のビザンツ帝国と地中海世界
  六、古代末期の西アジア、北アフリカ
  七、イスラームの成立と「蛮族」アラブによる帝国の形成
  八、征服王朝としての「イスラーム帝国」とその変容
  九、イスラーム帝国の変容
  一〇、アッバース朝の解体――一〇世紀のイスラーム帝国

問題群|Inquiry

 中世ヨーロッパの展開と文化活動……佐藤彰一 
  一、ポスト・ローマ世界からの「離脱」
  二、文化活動の諸相
  三、カロリング・ルネサンスとギリシア古典

 ウラマーの出現とイスラーム諸学の成立……森山央朗 
  一、はじめに
  二、ハディースの流布とウラマーの出現
  三、シャリーア(法)をめぐる論争
  四、ハディース学の発展とシャーフィイー法学派「ハディースの徒」の活躍
  五、イスナードの意義
  六、ウラマーの古典的な姿と一一世紀の変化

 山々に守られた辺境の解放区――カスピ海南岸地域のアリー裔政権(八六四―九三〇/九三一年)……森本一夫 
  はじめに
  一、アリー裔政権の興亡とその中でのダイラム人とギール人
  二、ファーティマ裔の政権・ザイド派の政権としてのアリー裔政権
  おわりに

焦点|Focus

 ヨーロッパにおける帝国観念と民族意識――中世ドイツ人のアイデンティティ問題……三佐川亮宏 
  一、「共通の出自」という神話
  二、「エトノス生成論」と「諸分国構造論」
  三、「ドイツ」の起源
  四、大フランク帝国の分裂
  五、「中世ローマ帝国」の成立とドイツ人のエトノス生成
  六、「帝国」と「王国」の狭間

 聖像(イコン)と正教世界の形成……中谷功治
  はじめに
  一、聖人崇拝と聖遺物
  二、画像崇拝の展開
  三、いわゆるイコノクラスムをめぐって
  おわりに――正教世界の成立へ

 初期イスラーム時代の史料論と西アジア社会……亀谷 学
  一、ムスリムによる歴史史料の生成と展開
  二、史料の信頼性と初期イスラーム時代史研究
  三、実物史料・非ムスリム史料から見た初期イスラーム社会
  四、おわりに

 アンダルスの形成……佐藤健太郎 
  一、はじめに
  二、イスラーム教徒のイベリア半島征服
  三、イベリア半島社会の変容
  四、おわりに――アンダルスの境域

 イスラーム科学とギリシア文明……三村太郎
  一、アッバース朝とギリシア科学
  二、マンスール期からマアムーン期にかけての天文知の受容
  三、論証を武器とした占星術師キンディー
  四、新たなギリシア科学知獲得競争からイスラーム科学へ

 初期イスラーム時代のカリフをめぐる女性たち……高野太輔
  一、はじめに
  二、正統カリフとムハンマド――姻戚関係がつくりだした権威
  三、カリフの母君
  四、カリフの妻と女奴隷
  五、カリフの姫君
  六、おわりに

コラム|Column

 フランク王国の法文化とテクスト……菊地重仁
 アズハル・モスク――シーア派教育機関からスンナ派教育機関へ……近藤真美
 修道院改革とヨーロッパ初期中世社会の変容……大貫俊夫
 アラブ・ペルシア古典詩におけるチェスの表象……杉田英明
【責任編集】
大黒俊二(おおぐろ しゅんじ)
1953年生.大阪市立大学名誉教授.イタリア中世史.『声と文字』〈ヨーロッパの中世〉(岩波書店,2010年).

林佳世子(はやし かよこ)
1958年生.東京外国語大学学長.西アジア社会史・オスマン朝史.『オスマン帝国500年の平和』〈興亡の世界史〉(講談社学術文庫,2016年).

【執筆者一覧】
佐藤彰一(さとう しょういち)
1945年生.名古屋大学名誉教授・日本学士院会員.フランス初期中世史.

森山央朗(もりやま てるあき)
1973年生.同志社大学神学部教授.初期・古典イスラーム史.

森本一夫(もりもと かずお)
1970年生.東京大学東洋文化研究所教授.イスラーム史・イラン史.

三佐川亮宏(みさがわ あきひろ)
1961年生.東海大学文学部教授.ドイツ中世史.

中谷功治(なかたに こうじ)
1960年生.関西学院大学文学部教授.ビザンツ帝国史.

亀谷 学(かめや まなぶ)
1977年生.弘前大学人文社会科学部准教授.初期イスラーム史.

佐藤健太郎(さとう けんたろう)
1969年生.北海道大学大学院文学研究院教授.マグリブ・アンダルス史.

三村太郎(みむら たろう)
1976年生.東京大学大学院総合文化研究科准教授.イスラーム科学史・アラビア語文献学.

高野太輔(こうの たいすけ)
1968年生.大東文化大学国際関係学部教授.初期イスラーム史.

菊地重仁(きくち しげと)
1976年生.東京大学大学院人文社会系研究科准教授.ヨーロッパ初期中世史.

近藤真美(こんどう まなみ)
1966年生.龍谷大学文学部准教授.イスラーム時代西アジア史.

大貫俊夫(おおぬき としお)
1978年生.東京都立大学人文社会学部准教授.中世修道会史・ドイツ中世史.

杉田英明(すぎた ひであき)
1956年生.東京大学名誉教授.比較文学比較文化・中東地域文化研究.

【編集協力】
大月康弘(おおつき やすひろ)
1962年生.一橋大学理事・副学長.経済史・西洋中世史・ビザンツ学.『帝国と慈善ビザンツ』(創文社,2005年).

清水和裕(しみず かずひろ)
1963年生.九州大学人文科学研究院教授.初期イスラーム史.『イスラーム史のなかの奴隷』(山川出版社,2015年).
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