世界 2022年11月号

【特集】戦後民主主義に賭ける

世界 2022年11月号
ジャンル 雑誌 > 世界 > 定期号
刊行日 2022/10/07
体裁 296頁
特集:戦後民主主義に賭ける
かつて日本の戦後民主主義は、敗戦後の占領下にあって外からもたらされた「虚妄」という側面を持っていたかもしれない。だが、自由および権利を保持しようとする人々の、戦後77年間にわたる「不断の努力」(憲法第12条)は、戦後民主主義に血と肉を与え、実体化させてきた。一方、安倍―菅政権の約10年間を通じ、戦後民主主義を構成する諸要素――平和主義、さまざまなレベルの自治、個人の尊重と人権の保障、権力を抑制する諸システムなど――は継続的に打撃を加えられ、毀損されてきている。だが、戦後民主主義は打ち倒されてはいない。あらためてそれを選びなおし、逆流に抗して「不断の努力」を積み重ねようとする営みを強めたい。そのために、本特集を編む。
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┃特集┃戦後民主主義に賭ける
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〈それは可能だ〉
千三つのギャンブル――民主主義を獲得するために
辛淑玉(のりこえねっと共同代表)

〈再創造の現実へ〉
この民主主義を守ろうという方法によってはこの民主主義を守ることはできない――丸山眞男とデモスの力能
酒井隆史(大阪府立大学)

〈群像〉
戦後思想の胎動と誕生 一九三〇­―一九四八
三宅芳夫(千葉大学)

〈未解決の提起〉
小田実 難死から「殺すな」へ――加害認識という提起
神子島健(東京工科大学)

〈旧宗主国の現在〉
終わりなき歴史責任――欧州の現在と日本(下)
高橋哲哉(東京大学名誉教授)

〈いかなる結実であったのか〉
追悼 森崎和江
水溜真由美(北海道大学)

〈「なかったこと」にしてはならない〉
戦後民主主義という経験――その批判的継承のために
山本昭宏(神戸市外国語大学)

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◆注目記事
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〈管理と排除を越えて〉
ルポ 子どもたちの拒絶
小林美希(ジャーナリスト)

〈私企業がなぜ?〉
簒奪される公教育――都立高入試スピーキングテスト問題とその源流
大内裕和(武蔵大学)

〈支配を拒む〉
デジタル・デモクラシー【第10回(最終回)】――民主主義という希望
内田聖子(PARC)

〈割れる世論の中で〉
国葬とメディア――テレビはどう伝えたか?
浮田 哲(羽衣国際大学)

〈ワクチン禍の歴史から〉
ルポ 副反応【第4回(最終回)】――裁判闘争と「三基準」
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)

〈狭間からの声〉
沖縄・半世紀の群像【第6回(最終回)】――金城 馨
渡辺 豪(ジャーナリスト)

〈消えないPTSD〉
東京電力 11年の変節【第4回(最終回)】――取り残される避難者
後藤秀典(ジャーナリスト)

〈懲罰からの変化〉
刑罰をどう考えるか
浜井浩一(龍谷大学)

〈報告〉
ハイチ 二〇〇年の苦難――歴史的背景と国際社会の責任
山岡加奈子(ジェトロ・アジア経済研究所)

〈したたかに、不屈に〉
香港からの通信【第5回】――抗議するコミュニティの現在
江瓊珠(ドキュメンタリー制作者)

〈座談会〉
女性労働運動は、この社会のすべてを変える
松元ちえ、中島由美子、大椿裕子、瀬山紀子

〈総括〉
夢の沈んだ底の『火山島』
金石範(作家)

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◇世界の潮
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◇英国保守党は変わったか?――トラス政権とイデオロギー的先鋭化
高安健将

◇ウトロ等連続放火事件 判決の意義と課題
師岡康子

◇神宮外苑大規模再開発はなぜ止まらないか
森本智之

◇NHKの放送倫理違反――BPO勧告の問題提起
長井 暁

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◇SEKAI Review of Books
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◇さいとう・たかを後の『ゴルゴ13』へ――続行への期待と一抹の不安
斎藤貴男(ジャーナリスト)

◇読書の要諦――ノンフィクション 積ん読では惜しい四冊
青木 理(ジャーナリスト)

◇新刊│明治期、私擬憲法のエッセンス――畑中章宏『忘れられた日本憲法』
松崎 稔(町田市立自由民権資料館)

◇新刊紹介

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●連載
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〈好評連載〉
脳力のレッスン(245)――近代民主主義の成立要件と二一世紀の模索
寺島実郎

壊れる世界【第3回】――権力闘争としての国際政治
藤原帰一(東京大学客員教授)

〈荒ぶる気象と向き合う〉
いま、この惑星で起きていること【第35回(最終回)】――体当たりの科学者たち
森さやか(気象予報士)

〈国際的進展〉
気候再生のために【第6回】――気候変動から守られる権利
高村ゆかり(東京大学)

〈座談会〉
音で読む『世界』――視覚障害者と情報保障
栗川 治(元新潟県公立高校教員)、松本道子(音訳者)、藤田晶子(全国音訳ボランティアネットワーク)、堀江達朗(東京ヘレン・ケラー協会点字図書館)

●片山善博の「日本を診る」(156)――心許ない国に相変わらず頼ろうとする自治体への違和感
片山善博(大正大学)

●沖縄(シマ)という窓――軍基地と女と子ども――平田正代さんの足跡を残す
山城紀子(フリーライター)

●お許しいただければ――最高のフルーツ(A.A.ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)

●原発月報――(22・8~9)
福島原発事故記録チーム

●ドキュメント激動の南北朝鮮(303)(22・8~9)
編集部

●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)

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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)

○アムネスティ通信

○読者談話室

○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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