世界 2022年12月号

【特集1】カルト・宗教・政治 【特集2】分断された国際秩序

世界 2022年12月号
ジャンル 雑誌 > 世界 > 定期号
刊行日 2022/11/08
体裁 296頁

【特集1】カルト・宗教・政治
「気づかぬ間に、身近なところにこんな闇の世界が広がっていたとは――」安倍晋三元首相の銃撃事件の衝撃から4カ月。国会議員と旧統一教会とのつながりが次々と明らかになり、政界を揺るがしている。銃撃事件の容疑者の境遇が報じられる過程で、教団に関する被害が依然として深刻であることも浮かび上がってきた。宗教団体の活動は、「信教の自由」として憲法によって保障されているが、健全な宗教団体と「反社会的」とされるカルト団体とはどこが異なるのか。カルト団体に対する規制はどこまで許されるのか。またネット上には、似非科学やスピリチュアルに関する言説や陰謀論があふれている。占いやSFなどで親しまれている言説の中には、新興宗教の教義や悪徳商法の勧誘に利用されたり、カルト団体の活動を突き動かしているものもある。「宗教と政治」との関係が、これまでにないほどの社会的注目を集めている現在、これらの言説についてもあわせて考える。

【特集2】分断された国際秩序
ロシアのウクライナ侵攻は、現代が戦争の時代であることを世界に知らしめた。そして、終わることのない激しい戦禍は、“国際社会はリベラルで民主主義的なものへと徐々に移行しつつあるはず”という私たちの楽観を打ち砕いた。人権を抑圧する権威主義国家、終わらない地域紛争、侵食される民主主義、SNSが加速させる対立……複雑な現実を善悪の二元論で単純化する論理が跋扈し、いたるところに分断線が引かれ、それは世界中に固定化され、人びとの中にも内面化されようとしている。長い戦争が国際秩序の中心と周辺との溝をさらに深めようとしている今、私たちはどう向き合うべきなのか。世界の構造変化を見つめる。
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┃特集1┃カルト・宗教・政治
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〈課題と展望〉
令和日本の「政教問題」
塚田穂高(上越教育大学)

〈座談会〉
カルト規制はどうあるべきか
紀藤正樹(弁護士)、島岡まな(大阪大学)、田近 肇(近畿大学)

〈どんな政党か〉
参政党を取り巻く陰謀論――自然派、反ワクチン、レイシズム……
藤倉善郎(ジャーナリスト)

〈中枢に迫る〉
自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの
斉藤正美(富山大学非常勤講師)

〈ルポ〉
韓国の旧統一教会「聖地」を巡る
佐藤大介(共同通信)

〈Qアノンまでの道〉
米国のスピリチュアルと政治
雨宮 純(オカルト・スピリチュアル悪徳商法研究家)

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┃特集2┃分断された国際秩序
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〈対談〉
転換期の世界をどう見るか――ウクライナ侵攻以降の国際秩序
板橋拓己(東京大学)、三牧聖子(同志社大学)

〈国際秩序の力学〉
壊れる世界【第4回】――自由世界と国民国家
藤原帰一(東京大学客員教授)

〈権威主義国家台頭の中で〉
自由主義をめぐる分断と日本の役割
市原麻衣子(一橋大学)

〈「秩序」がはらむ矛盾〉
イスラエルが繁栄する陰で――リベラルな国際秩序の非リベラルな参加要件
鶴見太郎(東京大学)

〈非暴力という理念〉
ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ
松元雅和(日本大学)

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◆注目記事
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〈逆転勝訴のあと〉
血の通った判決
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)

〈責任追及へ〉
東京五輪疑獄事件 腐敗の正体
本間 龍(著述家)

〈大規模再開発の闇〉
神宮外苑は「創建の趣旨」に立ち返れ
森まゆみ(作家)

〈緊急提言〉
円安を止めるために、日銀がいますべきこと
和田哲郎(トータルアセットデザイン顧問)

〈なぜ、今また?〉
GXを掲げる原発回帰政策の欺瞞
松久保 肇(原子力資料情報室)

〈迷走する防衛省〉
日本のミサイルは何を狙うのか
文谷数重(軍事ジャーナリスト)

〈ソーシャルメディアと女性たち〉
「女性・命・自由」イラン抗議デモはなぜ起きたか
中西久枝(同志社大学)

〈ポピュリスト政党の勝利〉
イタリア「極右・女性首相の誕生」をめぐる狂騒曲
伊藤 武(東京大学)

〈新連載〉
ボナエ・リテラエ――私の読書遍歴【第1回】――『ファーブル昆虫記』
森本あんり(東京女子大学長)

〈最終回〉
分水嶺II――コロナ緊急事態と専門家【第13回】――経験の重み
河合香織(ノンフィクション作家)

〈ルポ〉
「死ぬ権利」とは何か?――欧州「安楽死」事情
宮下洋一(ジャーナリスト)

〈自殺学を手がかりに〉
安楽死は自殺問題の解決なのか――障害者運動と安楽死を望む声の対立をめぐって(続)
渡邉 琢(介助士)

〈座談会〉
トランスジェンダー問題とは何か――当事者不在の「議論」に抗して
高井ゆと里(群馬大学)、三木那由他(大阪大学)、清水晶子(東京大学)

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◇世界の潮
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◇ノルトストリーム1、2の破裂と欧州ガス事情
小田 健

◇守られない家事労働者――過労死認定裁判が問うもの
池尾伸一

◇パキスタン大洪水――求められる「気候正義」
井上あえか

◇コソヴォとセルビア 情勢緊迫の背景
山崎信一

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◇SEKAI Review of Books
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◇「宗教2世問題」を理解するための必読書
横道 誠(京都府立大学)

◇読書の要諦――文芸 人界書き難し
藤沢 周(小説家)

◇読書録――ジャン・ボダンとlex regia、八月革命説
長谷部恭男(早稲田大学)

◇新刊紹介

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●連載
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〈好評連載〉
脳力のレッスン(246)――戦後日本と都市新中間層の今
寺島実郎

香港からの通信【第6回】――見慣れた香港から見知らぬ都市へ
劉鋭紹(政治評論家)

●片山善博の「日本を診る」(157)――地方創生をどうするか
片山善博(大正大学)

●気候再生のために【第7回】――ホッキョクグマは増えているのか?
江守正多(東京大学)

●沖縄(シマ)という窓――28.6万の「いいね」――ひろゆき氏ツイート現象が炙り出したもの
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)

●お許しいただければ――本当に読んだ?(E.V.ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)

●原発月報――(22・9~10)
福島原発事故記録チーム

●ドキュメント激動の南北朝鮮(304)(22・9~10)
編集部

●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)

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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)

○アムネスティ通信

○読者談話室

○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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