文学と国柄

一九世紀日本における文学史の誕生

近代最初の日本文学史の構想と生成過程を東大文学部の史料精査と研究者たちの著作の分析を通じて考究。

文学と国柄
著者 エマニュエル・ロズラン , 藤原 克己 , 鈴木 哲平
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2022/12/13
ISBN 9784000615709
Cコード 3091
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 510頁
定価 17,600円
在庫 在庫あり
19世紀の日本において、時代の要請と社会の動向の複雑な作用の交錯のうちに、青年たちはいかにして文学史を作り上げていったのか。最初の日本文学史の構想とその生成過程を、1880年代当時の東京大学文学部の史料精査と、そこで学び育った研究者たちの著作の分析を通して考究する。【第22回渋沢・クローデル章受賞】
 読者に

 日本語版に寄せて
 凡例

 序

第一章 一九世紀における日本文学の範囲
 第一節 ロニーの「日本人の文学」(一八八三)とアストンの『日本文学史』(一八九九)
 第二節 内包と外延
 第三節 一九世紀半ばにおける潜在的な文学コーパス
  1 学問の対象としての中国古典 
  2 文章
  3 日本の正典的テクスト
  4 「雅」と“文学的”創作
  5 俗なる「遊芸」の世界
   「遊芸」に属する中国文学
   江戸時代の小説
   ノンフィクション
   庶民的な詩
  6 語り物と劇場
 第四節 読書と読者 

第二章 最初の国文学史の生成過程(一八九〇年
 第一節 著者たち
  1 大志を抱く青年たち
  2 グループとしての肖像
 第二節 東京大学文学部
  1 和漢文学科
   教育課程
   教授陣
  2 古典講習科
   設置の経緯
   教授陣
   教科内容
 第三節 学生たちと教授陣

第三章 一八・一九世紀における歴史・文学・国民 ― 比較文化的素描
 第一節 ヨーロッパの文学史の影響?
  1 西洋の書物との出会い
   文学史
   選集と論考
  2 日本人の先駆者はいない? 
  3 「影響」とその限界
 第二節 国民文学の歴史を可能にする諸条件 
  1 歴史
  2 国民
  3 文学
  4 一国の…文学の…歴史
 第三節 前近代日本における歴史、文学と国・国民
  1 近代的概念としての歴史・国民・文学の出現
  2 内在的発展の諸要素
   歴史
   国民
   文学

第四章 一八八〇年代の力学の中で
 第一節 「古代的秩序への回帰」の挫折
 第二節 漢学の復興
 第三節 ナショナル・アイデンティティの確立 
 第四節 出版・ジャーナリズム・教育
 第五節 公共圏と批判的言説
 第六節 文学創作の変容

第五章 日本文学のコーパスへ向けて(一八九〇年)
 第一節 上田万年の『国文学』
  1 文学者年表
  2 アンソロジー
   作者
   テクスト
   どんな詩が?
   どんな散文が?
  3 徳川時代後期
 第二節 芳賀と立花の『国文学読本』
 第三節 三上と高津の『日本文学史』
 第四節 博文館の『日本文学全書』
 第五節 古典文学と近代文学

 結論 芳賀矢一はギュスターヴ・ランソンか?

 注
 参考文献
 訳者あとがき
エマニュエル・ロズラン(Emmanuel Lozerand)
1960年生まれ.フランス国立東洋言語文化大学(INALCO イナルコ)日本語科教授.主な研究領域は日本近代文学(鷗外,漱石,子規など).著書にLitterature et genie national. Naissance d'une histoire litteraire dans le Japon du XIX e siecle, Paris, Les Belles Lettres (本書.第22回渋沢・クローデル賞); Un lit de malade six pieds de long, Paris, Les Belles Lettres (正岡子規『病牀六尺』の仏訳.小西財団日仏翻訳文学賞)など

藤原克己(フジワラ カツミ)
1953年生まれ.東京大学名誉教授.博士(文学).平安時代文学専攻.著書に『菅原道真と平安朝漢文学』(東京大学出版会),『日本の古典―古代編』(共著,放送大学教育振興会)など

鈴木哲平(スズキ テッペイ)
1974年生まれ.江戸川大学准教授.東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了.博士(文学).研究領域は現代アイルランド文学・現代フランス文学および外国語教育.訳書に『新訳ベケット戯曲全集』(2・3 巻,共訳,白水社)など
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