伊丹十三選集

第一巻 日本人よ!
第二巻 好きと嫌い
第三巻 日々是十三
編者, 松家仁之, 中村好文, 池内万平

書誌情報

伊丹十三選集
第一巻 日本人よ!

978-4-00-028118-8 / 
512ページ / 本体3300円

2018年12月20日発売
第二巻 好きと嫌い

978-4-00-028119-5 / 
352ページ / 本体3300円

2019年1月18日発売
第三巻 日々是十三

978-4-00-028120-1 / 
400ページ / 本体3300円

2019年2月19日発売

著者略歴

伊丹十三

伊丹十三

撮影 浅井愼平

1933年5月15日、映画監督の伊丹万作を父として京都市に出生。本名、池内義弘。1960年代から『ヨーロッパ退屈日記』『女たちよ!』『小説より奇なり』『日本世間噺大系』など、優れたエッセイを数多く著す。商業デザイナー、俳優など様々な職業を経て、後年映画監督に転身。初監督作品『お葬式』(1984年)で日本アカデミー賞(作品賞、主演男優賞、助演女優賞、監督賞、脚本賞)を受賞。以後、税金や暴力団、宗教や消費行動などを切り口に、日本人の行動・思考様式を鋭くあぶり出した、社会性とエンターテインメント性に溢れるスリリングな10作を次々と世に送り出した。 1997年12月20日、逝去。

刊行のことば

伊丹十三が亡くなってから、二十年の歳月が流れた。

映画監督に専念するようになったのは、五十歳を過ぎてからのことだった。それまでの伊丹十三は、デザイナー、俳優、イラストレーター、エッセイスト、翻訳者、テレビドキュメンタリーのディレクター、雑誌編集者などとして多岐にわたる表現活動に携わり、それぞれの分野で比類ない才能を発揮した。

なかでもエッセイストとしての力量はめざましく、初の著書『ヨーロッパ退屈日記』(一九六五年)でそれは早くも明らかとなった。海外の映画に出演するため長期滞在したヨーロッパの、風俗、文化、人間をつぶさに観察した文章には、無類の面白さがあった。同時に、知見に裏打ちされたその批評眼は、高度経済成長のただなかにいた日本人の自画像をあぶりだし、苦味のある相対的視点をもたらした。

以来、映画監督になるまでの約二十年、しなやかで軽い独特な文体で、さまざまな主題を自在に料理してゆくエッセイスト伊丹十三は、同時代に多くの読者を生むばかりでなく、のちの書き手に大きな影響を与えた。書き言葉に意図的に話し言葉を混交させる文体は、伊丹十三が切り拓いたといっていい。

注意深く執拗ともいえる対象への取材とアプローチは、映画監督の方法論にも継承されてゆくスタイルであった。抜きんでた成果をあげる研究者に会い、問いを投げかけ、対話によって摑んだものを誰にでもわかる話し言葉でまとめた。家事や子育てに情熱をもって取り組みながら、性差や親子関係に潜む抑圧の構造を明るみに出した。伊丹十三はつねに行動する知性であった。

エッセイストとしての仕事の全体をあらためてふり返れば、「私」とは誰で、どこからやってきて、どこへ向かおうとしているのか──つねにその問いかけが横たわっていた。その問いは、いまも力を持つ。

私たちは伊丹十三がとりあげてきた主題のうち、「日本および日本人」を縦軸に、恋愛、結婚、子育て、といった「自己と他者の関係性」を横軸に、また縦軸と横軸が生む地平を自在に行き来する原動力としての「好悪の感覚」にも光をあてて、三巻に分けた選集を編むこととなった。

ひとりの自由な精神の軌跡のうえに、その先見性と現代性を発見するこの選集が、長く読み継がれてゆくことを切に願っている。

編者

編者紹介

松家仁之

1958年生まれ。小説家、編集者。「新潮クレスト・ブックス」の創刊、『考える人』『芸術新潮』の編集長を経て、2010年に退職。2012年に発表した『火山のふもとで』で読売文学賞受賞。2017年には『光の犬』を発表、芸術選奨文部科学大臣賞、河合隼雄物語賞を受ける(2018年)。

中村好文

1948年生まれ。建築家。多摩美術大学客員教授。武蔵野美術大学を卒業後、品川職業訓練校で家具製作を学ぶ。吉村順三設計事務所を経て独立。「一連の住宅作品」で吉田五十八賞。2007年、松山市に開館した伊丹十三記念館の設計を担当。『普請の顚末』(柏木博との共著、岩波書店)、『住宅巡礼』など著書多数。

池内万平

1975年生まれ。伊丹十三の次男。子役として『お葬式』『タンポポ』に出演。現在は一般企業に勤めるかたわら、公益財団法人ITM伊丹記念財団評議員、(株)伊丹プロダクション取締役を兼任。

収録内容

巻 日本人よ!

編者解説 松家仁之

天皇日常/天皇の村/人世劇場 天壌無窮篇/赤い米・白い骨・青い島/三千年前のシンセサイザー/東京の縄文人/貝塚の特別料理人/お米は西からやってきた/光る森の文化説/半島・列島・直行便/ドキュメント倭人伝/謎の鉄器来襲/「卑彌呼」を求めて韓国までいった/気になる倭人伝/日本人のことば/四世紀のデモクラシー/人世劇場 神兵衰弱篇/チンパンの嘆き肋骨/冑建築/悪魔の発明/インヴァネス/パッパカパーノ、パッパ机の上のハガキ/ダンヒルに刻んだ頭文字/日暮れて道遠し/ロンドンからの電報/息詰る十分間/乾いた音/水の味/イカモノについて/スキヤキ戦争/箸の汚れ/唇の感触/三船敏郎氏のタタミイワシ/地震のない国/クダショー/塩田/人世劇場 色即是空篇/ポセイドン・アドヴェンチュア/スーパー民主主義/香水/日記まで/プ/ミルク世紀/ステレオホニックハイハイ/ハイ・スクール・イングリッシュ/和文英訳/アイ・アム・ア・ボーイ/この道二十年/母音/子音/失楽園/素朴な疑問/都市論/塀のいろいろ/契約/日本人論

巻 好きと嫌い

編者解説 中村好文

原則の人/わたくしのコレクション/天鵞絨のハンドル・カヴァ/不愉快/ミドル・クラスの憂鬱/走る男/他人の顔/英国人であるための肉体的条件/日本人に洋服は似合わない/場違い/キザ/正装の快感/銀座風俗小史/男と女/スタンダールの恋愛論/グループ/料理人は片づけながら仕事をする/食前の果物/三ツ星のフランス料理/飲み残す葡萄酒/スパゲッティの正しい調理法/スパゲッティの正しい食べ方/深夜の客/女連れ/血よ、したたれ!/西洋料理店における野菜サラダを排す/サラダにおける本格/ベスト・ドレッシング/開いた窓/包丁の正しい持ち方/温められた皿/目玉焼の正しい食べ方/ダッグウッドの悦び/ハリーズ・バーにて/カルピスとコカコーラ/薯焼酎/酒量/二日酔について/羨ましいなあ!/二日酔の虫/急ぎの虫/勇気/アッあぶない/大英帝国の説得力/世界一のマッチ/道筋/人世劇場 疾走車輪篇/辞書/小さな病人の快楽/石鹼についての覚え書/古典音楽コンプレックス/最終楽章/ウイローの紳士/蚊/ハチハチ・カンタータ/犬の歯を抜く話/これだけは知っておこう/ナガ/ハリーの話/鬚を剃った魚の話/新幹線にて/盲人/悪戯/屋台の論理/脱毛/伊丹十三の編集するページ その一/猫/ザ・ネイミング・オブ・キャッツ/わが思い出の猫猫/伊丹十三の編集するページ その二

巻 日々是十三

編者解説 池内万平

防禦/死に至る病/済んでしまった!/歯/無人島/腕の問題/オヨメニオイデヨ/結婚記念日/生理座談会/ダイフク/人世劇場 孤軍奮闘篇/親馬鹿/男女平等/ロータス・エランのために/渡された一頁/“GO AND CELEBRATE”/「どうでもいいや」/ヤラセ/人世劇場 撮影快調篇/テレヴィジョン嫌い/恐怖の人/ニコニコカメラ/スタッフ/インタビュー/書斎の憂鬱/まえがき/知的生活者諸君!/二人目の子/夜泣き/プールサイド/大病人/グッド・ラック/発声練習/熊のプーサン/死教育/円盤/父と子/まえがき/赤チャンハドコカラクルノ?/デンマークの性教育/あとがき/怒りの旅/大実験/オープン・エデュケイション/ノグチヒデヨ・オン・TV/落第のすすめ/クワセモノ/川の底/眉間の皺/睨みの研究/鼻の構造/日本人の精神分析

プレゼントのご案内

『伊丹十三選集』を全巻お買い上げの方全員に、伊丹十三記念館特製のポストカード5枚をプレゼントいたします。
第一巻から第三巻までの帯についている「申込券」計3枚をハガキに貼り、住所・氏名を明記の上、お申し込みください。

送り先 〒101-8002
東京都千代田区一ツ橋2-5-5 岩波書店営業部『伊丹十三選集』係
申込締切 2019年5月末日(当日消印有効)
発送 2019年6月下旬以降に、お申込みいただいたご住所にお送りいたします。
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