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「科学と広報」のページ

 このページは岩波書店・雑誌『科学』編集部が提供する広報のページです。

 資金規模が大きく、注目されている最先端研究開発支援プログラムについて、広くお知らせする企画を考えました。気鋭のサイエンスライターの取材による広報記事を順次公開していく予定です。

 最初に、合原一幸氏(東京大学生産技術研究所)を中心とする「複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用」プロジェクトの記事を公開します。

 (なお、11月25日発売の『科学』12月号では、特集「モデル化 変化する現実認識」を組み、合原氏を含む座談会、多数の寄稿で構成しますので、ご覧いただければ幸いです。目次はこちら

 このプログラムの重要性に鑑み研究の発展に期待して、編集部はボランティアとして公開の場を提供しています。記事内容について編集部は関与していません。

「複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用」プロジェクト

 記事pdfダウンロード(844kb)

  

 代表者:合原一幸氏(東京大学生産技術研究所) 合原研究室のページはこちら

 取材者:森山和道氏 森山氏のページはこちら

[記事冒頭より]
 「身近なところに数学が使われているんだと具体的に理解してほしい」と東京大学教授で最先端数理モデル連携研究センターセンター長の合原一幸は語る。
 数学は表に出る学問ではない。「縁の下の力持ち」として学問の基盤、あるいは背後で使われる学問だ。だが実は、もっと本質的に、具体的に日常生活に広く役立っていることを理解して欲しいという。
 合原らの研究分野は数理工学である。数理工学とは現実の諸問題からスタートする工学分野の一つであり、現実の問題を数理モデルとして表現する。そして、その数理モデル解析のための数理的手法を作り、現実問題の理解、解決、さらには、最適化、制御や予測を目指すのが数理工学だ。

[記事Q&Aより]
──師匠から学んだことは?
僕の師匠は4人、宇都宮敏男先生、松本元先生、甘利俊一先生、小谷誠先生。宇都宮先生はスマートな先生でスマートなお酒の飲み方も教えていただいた。松本先生からはターゲットを決めたら絶対それをやりとげるタフなところ。甘利先生は楽しんで学問をするお手本です。小谷先生からは忘れる能力です。忘れないと頭がパンクしますからね。僕は先生には恵まれました。4人の先生について学べたのは良かった。
──心にのこる本を1冊挙げるとすると?
内山興正の「座禅の実際 生命の実物」柏樹社です。(現在は大法輪閣から改題改訂した「坐禅の意味と実際 生命の実物を生きる」として刊行)

他のプロジェクトの記事を掲載していく予定です



(参考)最先端研究開発支援プログラムについて

 最先端研究開発支援プログラムの主要な部分は、2014年3月末までに総額1000億円の基金として30の課題(中心研究者を軸とするグループ)に配分されます(詳しくはこちら)。(他に、2010年度に上記30課題うちの26課題に追加100億円の配分(詳しくはこちら)と、45歳以下男性研究者・女性研究者(年齢制限なし)を約300課題支援する予定の500億円のプログラム(選考中)がある。)

 このプログラムは当初、2009年の麻生政権時代に、景気対策の補正予算のなかに2700億円が組まれ、30課題が決定されました。2009年秋の政権交代後、プログラムの総額が1500億円に減額され、うち1000億円が決定済み30課題に配分されることになったものです。

 なお、『科学』で最近掲載した、研究資金制度の分析・提言記事としては、次のようなものがありますので、参照いただければ幸いです。
2009年8月号(吉岡斉「最先端研究開発支援プログラムへの疑問」:経団連提言を丸呑みしたという批判)
2009年11月号(David Cheney「米国の景気対策のための科学技術投資を検証する」;David Goldston「景気対策の一環として科学技術投資を行うジレンマ」:米国の事例をもとに、景気対策として行われる巨額投資への分析・提言)
2010年8月号(佐藤靖「歴史の眼で見る競争的資金制度」:間接経費への見方の転換を提言)