ルポ イチエフ

福島第一原発レベル7の現場

故郷を取り戻すために働く原発作業員の声は届いているか.作業員数十名に聞いた原発事故のリアリティ.

ルポ イチエフ
著者 布施 祐仁
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2012/09/27
ISBN 9784000221948
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 204頁
定価 1,870円
在庫 在庫僅少
放射能汚染のなか,原発事故の現場で作業にあたる原発作業員が「イチエフ」と呼ぶ福島第一原発.なお改善されない劣悪な労働環境.横行する違法派遣・請負,労災隠し.危険手当さえ,ピンハネされる.それでもなぜ,彼らは働くのか.「誰かがやらなければいけない仕事」にあたる作業員数十名の肉声を伝える.


■編集部からのメッセージ
 3月11日から数日後.原発が次々に爆発していた頃,ジャーナリストであり親しい友人でもある布施氏から,着信があった.
 「福島の原発周辺で住民が置き去りにされている.ツイッターで避難させてほしいという高校生のメッセージがあった.これから行けないか」――という内容だった.
 当時,私は妻子を愛知県の親戚宅に避難させたところだった.首都圏にまで放射能汚染が及んでいる.事故は必死の冷却作業が進められるも,予断の許されない状況で,さらなる状況の悪化も考えられる.妻子をおいて原発周辺へ.これは決断が必要である.
 「もし僕たちに何かあっても,それで救われる命があるならいいじゃないか」.そういう言葉をまじめに発するのが,布施氏だ.だが,熱意はあるのだが,運転免許はない.
 けっきょく,ライトバンを借りて私が運転し,二人で福島に行った.もともとヒロシマの被爆者の取材もしていた布施氏なので,放射能被曝の恐ろしさはよく知っている.完全装備だった.ツイッターで助けを求めていた人は無事,避難したようだったので,布施氏と私は,福島の中通りの人たちの支援物資を大量に積み込み,浪江や飯舘を通って,浜通りの南相馬市へ.市長がインターネットを通じてSOSを発していたからだ.
 以来,布施氏はくり返し現地に行き,原発の事故収束にあたっている労働者を取材しつづけてきた.本書では,その苛酷な現場だけでなく,その苛酷さを放置し,そのことで利益をあげてきた「原子力ムラ」に対して深く切り込んでいる.
 事故は「収束」などしていない.だが,必死で事故の拡大を食い止め,収束させようと努力している人たちがいる.
 誰が事故現場で作業にあたっているのか,それを多くの人に知ってほしい.
【『世界』編集部:熊谷伸一郎】
プロローグ――なぜ「彼ら」なのか

第1章 決死隊

第2章 被曝作業

第3章 ピンハネ

第4章 原発労働ヒエラルキー

第5章 犠牲と補償

エピローグ――「距離」を埋めるもの
あとがき
布施祐仁(ふせ ゆうじん)
1976年生まれ.ジャーナリスト.著書に『日米密約 裁かれない米兵犯罪』(岩波書店),『災害派遣と「軍隊」の狭間で――戦う自衛隊の人づくり』(かもがわ出版)など.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2012年12月9日
東京新聞(朝刊) 2012年11月3日

受賞情報

第18回平和・協同ジャーナリスト基金賞(2012年)

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