果てなき便り

「こうやつて僕もお前も年をとつて行くんだねえ」

果てなき便り
著者 津村 節子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2016/06/28
ISBN 9784000244800
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 186頁
在庫 品切れ
「節子よ!」没後一〇年に明かされる,作家・吉村昭から愛する女性=妻への,妻から夫への手紙の束一〇〇余通.長い苦節の時代,家族と遠く離れ孤独に苛まれる取材の旅,そして,妻への最後の手紙となった遺書――.決心,希望,情熱,望郷,愛,いたわり等々の男の心,女の気持ちが装いなく吐露された言葉の数々.夫婦作家,慈しみの軌跡.

■編集部からのメッセージ

「節子よ! 死んでくれるな.」
2006年に逝去された作家の吉村昭さん.逝去されて10年,吉村さんの愛する女性=妻,同じく作家の津村節子さんと交わした手紙が発見されました.その束100余通.
徹底した現地取材と緻密な描写により,純文学から戦史,歴史小説まで,日本文学史に偉大な足跡を残した作家,吉村昭さん.今回,妻の津村さんにより当時を振り返りつつ,手紙から引かれた言葉の数々には,作品や公にされた記録などからはうかがい知ることのまったくできなかった新たな人間像が見えてきます.
朝焼けの美しさを伝える結婚前の手紙,文学への決意を語り合う手紙,借金返済のための東北行商の旅先からの手紙,沖縄や海外での取材旅行で「帰りたい帰りたい帰りたい」と孤独を吐露する手紙,そして妻への最後の手紙となった遺書.
愛,苦渋,決意,情熱,孤独,辛抱といった生々しい感情が,信頼する相手に宛てたものであるゆえに,装いなく記された手紙.そこに変わることなく有るものは,相手への慈しみの気持ちです.
恋人たち,夫婦,人びとが交わす言葉の伝達がメールに席巻された現在において,昭和の時代にはそれに思いを託した手紙という媒体.手紙を書くという時間は,おのずと相手をいたわり,自分を回復するものなのかもしれません.
志を同じくし励まし合いながらも,仕事としては冷徹に競合する存在でもある夫婦作家.家庭のなかに甘美と修羅が存立するからこそ,その場から離れたところで綴られる手紙の言葉には,真なる気持ちが籠められているとも言えます.
ここに記された手紙の言葉を読んで,心を揺るがせられるのは,いまはあなたです.ぜひお読みいただきたいと思います.
文学はつきつめた戦ひです
いのちをかける仕事
遅まきの青春
万年筆の音
少女小説からの出発
心の拠
作家を訪ねる
小説を書く女
山形からの便り
結婚への道
夫婦つて美しいと思ふ
折りたたんだ手紙
旅あきない
兄と弟
弟への手紙
幾山河
鉄橋
帰りたい
沖縄へ
遺書のような手紙
望郷
日々の手紙
帰国近し
文学者の墓
節子さんへ
安住を求めて
三回の海外取材
五十年後の退学願
弟の看護日誌
弟との別れ
最後の手紙

あとがき
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