ファンドーリンの捜査ファイル リヴァイアサン号殺人事件

真犯人は,この船にいる! 数々の殺人と莫大な財宝の謎をめぐってファンドーリンの推理が冴え渡る.

ファンドーリンの捜査ファイル リヴァイアサン号殺人事件
著者 ボリス・アクーニン , 沼野 恭子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2007/02/27
ISBN 9784000246347
Cコード 0097
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 328頁
在庫 品切れ
19世紀末パリ,大富豪が怪死をとげた.唯一の手がかりが指すのはインドへ向かう豪華客船リヴァイアサン号,見え隠れする「消えた秘宝」の謎と,それぞれいわくありげな乗客たち──このなかに犯人がいる! 日本へ赴任する途上,船に乗りあわせたロシアの外交官ファンドーリンが,快刀乱麻の推理で事件に挑む.

■著者からのメッセージ

日本の読者の皆様へ
ボリス・アクーニン
 私が特別な思い入れを抱いている国は,世界でふたつしかありません.ひとつは言うまでもなく,私の生まれ育った国,現在住んでいる国ロシアですが,もうひとつは日本です.日本には以前留学したことがあり,長年,日本文化にたずさわってきました.私の推理小説は何ヵ国語にも訳されていますが,私にとって日本語訳が出るというのはことのほか嬉しいことです.そう感じるのも,当然といえば当然でしょう.20年にもわたって日本文学をロシア語に訳してきて,今度はついに自分の作品が日本語になるのですから,嬉しさもひとしおなのは当たり前です.日本の読者の皆様が私の本を気に入ってくださると嬉しいのですが.
 私の小説に出てくる日本人の登場人物が,皆様の目に,グロテスクに見えたり滑稽に見えたりしないことを願っています.じつは『リヴァイアサン号殺人事件』のアオノ・ギンタローとも,『アキレス将軍暗殺事件』のシバタ・マサヒロとも,個人的に知り合いでした.実際には別の名前でしたけれど.受けた教育やメンタリティが違うわけですから,私が彼らのことを可笑しく感じたのと同様,彼らだってきっと私のことを可笑しく感じただろうと思います.でも結局のところ,私たち人間は互いに異なっているからこそ面白い.そうではないでしょうか.
(翻訳:沼野恭子)
2007 Boris Akunin

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19世紀末から20世紀初頭を舞台にくりひろげられる,ロシアで大ベストセラーとなった歴史推理小説の連作シリーズ.これまでのところ15冊が刊行されている.
 主人公はエラスト・ペトローヴィチ・ファンドーリン,モスクワ生まれの美青年.19歳で天涯孤独の身となり,モスクワ警察の特捜部に奉職,以後,天性の推理分析力と抜群の身体能力,勇気溢れる行動力に,〈一度も賭けに負けたことがない〉不思議な強運も手伝って,難事件を次々に解決していく.つねに最新流行のファッションに身を包み,物腰は紳士的ではにかみ屋,美しい女性にはめっぽう弱い.綺麗な黒髪の,何故かこめかみだけが真っ白なのは,かつて経た残酷な運命によって刻まれた印だという.
 頻繁に日本人が登場するのも本シリーズの楽しみのひとつ.

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◆豪華客船上の,手に汗握る推理活劇!
リヴァイアサン号殺人事件
リヴァイアサン号殺人事件
ボリス・アクーニン
沼野恭子 訳・解説 more info
四六判・並製カバー

◆モスクワの闇に潜む殺し屋との死闘!
アキレス将軍暗殺事件
アキレス将軍暗殺事件
ボリス・アクーニン
沼野恭子,毛利公美 訳
沼野充義 解説 more info
四六判・並製カバー

◆我らがヒーローの誕生を告げるシリーズ第1作!
堕天使殺人事件
堕天使(アザゼル)殺人事件
ボリス・アクーニン
沼野恭子 訳・解説 more info
四六判・並製カバー

◆やんちゃな美少女と戦地で出会ったファンドーリンは……?!
トルコ捨駒スパイ事件
トルコ捨駒(すてごま)スパイ事件
ボリス・アクーニン
奈倉有里 訳・解説 more info
四六判・並製カバー

■訳者からのメッセージ

「善人プロジェクト」の誕生
沼野恭子
 このたび岩波書店より,ロシアの人気作家ボリス・アクーニンの歴史推理小説『リヴァイアサン号殺人事件』と『アキレス将軍暗殺事件』の2冊を同時に刊行することになった.
 「アクーニン」とは日本語の「悪人」から考えたというペンネーム! 作者が自分の創作活動を「アクーニン・プロジェクト」と呼んでいるのにならって,私たちはアクーニンの作品を日本に紹介する企画を「ゼンニン(善人)プロジェクト」と呼ぶことにした.日本にしか存在しないプロジェクトだ.
 2005年9月,来日したアクーニン夫妻と私ども夫婦で,富士山の五合目まで車でのぼった.有能な「アクーニン専属エージェント」である奥さんのエリカが,何度も日本に来ているのに一度もすっきり晴れた富士の全姿を見たことがないというので,富士山周辺を一緒に旅行することにしたのである.この日,箱根宮ノ下の「富士屋ホテル」に泊まり,懐石料理をいただきながら,『氷の微笑』で有名なポール・ヴァーホーヴェン監督が,アクーニンのデビュー作『アザゼル』〔注:2015年6月に『堕天使(アザゼル)殺人事件』として小社より刊行〕を映画化する予定だという話を聞く.
 その3日後,岩波書店の会議室で,河口湖から戻ったアクーニン夫妻を迎え,編集担当者ふたりを加えた6人で具体的な打ち合わせをした.19世紀後半のロシアやヨーロッパを舞台に,探偵役のファンドーリンが大活躍する知的エンターテインメント「ファンドーリン・シリーズ」――この中から,どの作品を日本に紹介するべきか.物語の抜群の面白さや文体の多様性を日本の読者に伝えるために,ぜひ2冊同時に刊行したいという編集サイドの強い意向に,アクーニンも満足していた.今思うと,この時こそが,本格的な「善人プロジェクト」誕生の瞬間だった.
 このあと翻訳者のひとりとして毛利公美さんにもプロジェクトに参加してもらい,力を合わせて翻訳に取り組んだ.
 手に汗握る物語,そこここに感じられるユーモア,ゲーム感覚で仕掛けられたさまざまな文学的アリュージョン,凝った構成や文体……と,アクーニンの作品にはいろいろなお楽しみが盛りこまれている.もちろん,大の日本びいきであるファンドーリンが,日本人論を展開したり身につけた忍術を披露したりするところも見逃せない.
 「善人プロジェクト」の成果を,どうぞたっぷりとお楽しみください!

※ 「著者からのメッセージ」「訳者からのメッセージ」は,『リヴァイアサン号殺人事件』『アキレス将軍暗殺事件』刊行時にお寄せいただいたものです.
ゴーシュ警部の黒いファイルより

第1章 ポート・サイドからアデンへ

第2章 アデンからボンベイへ

第3章 ボンベイからポーク海峡へ

 訳者解説
ボリス・アクーニン(Борис Акунин)
1956年生まれ,ロシアの作家.本名,グリゴーリイ・チハルチシヴィリ.1998年より,日本語の「悪人」から考えだしたという「アクーニン」のペンネームで歴史探偵小説ファンドーリン・シリーズを次々に発表,空前の大ブームを巻き起こす.読み応え抜群のストーリーテリング,手に汗握る謎解きのスリル,小気味のいいユーモアが読者の絶大な支持をうけ,ロシアでナンバーワンのベストセラー作家に.作品は次々にドラマ化・映画化され,すでに世界の30カ国語以上の言語に翻訳されている.日本の歴史や文学に造詣がふかく,三島由紀夫,丸山健二,島田雅彦,多和田葉子らのロシア語訳や,研究書『自殺の文学史』(作品社)などの著作もある.

書評情報

ミステリが読みたい! 2008年版
毎日新聞(朝刊) 2007年12月9日
読売新聞(朝刊) 2007年7月11日
図書新聞 2007年4月28日号
毎日新聞(朝刊) 2007年4月22日
愛媛新聞 2007年4月8日
山陽新聞(朝刊) 2007年4月1日
朝日新聞(朝刊) 2007年3月18日
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