「意地悪」化する日本

「意地悪」な日本でいいの? ――思想家と政治家が,現代日本の危機をめぐって真剣に語り合う.

「意地悪」化する日本
著者 内田 樹 , 福島 みずほ
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2015/12/15
ISBN 9784000610988
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 206頁
在庫 品切れ
思想家と政治家が真剣に語り合ったとき,現代日本を読み解くキーワード,「意地悪」が浮上した.今,戦後レジームのど真ん中に鎮座する権力者が架空のルサンチマンをまき散らし,それに人びとが共振して社会全体の「意地悪」化が進んでいる.こんな日本のままでいいのか? 政治,経済から学問,家族のあり方までを縦横に論じ,私たちの進むべき道を考える.

■編集部からのメッセージ

 内田樹さんと福島みずほさん.お二人とも,もちろん以前からお名前は存じ上げていましたが,直接お目にかかるのは今回が初めて.いったいどんな方々なのだろうと,ドキドキしながら打合せのために参議院議員会館の福島事務所に向かったのが,今年の4月上旬のことでした.
 ところが,いざ打合せを始めると,そのまま対談に突入!「えーっ,ちょっと待ってくれー!」と思いながら,念のために持参したICレコーダでさっそく録音を開始.その時点ではまだ安保関連法案(戦争法案)は国会に上程されていませんでしたが,福島さんが国会で,「安倍内閣がこれから成立させようとしているのは戦争法案だ」と批判したことが問題になって,議事録から「戦争法案」の文言を削除するよう求められたばかりでした.「いったい日本の政治はどうなってるんだ?」と,初回から丁丁発止のやりとりが繰り広げられました.
 その後,安保関連法案が国会に上程され,法案審議と並走するかたちで対談を5月,6月に行い,9月22日,19日未明の法律成立を見届けたうえで最後の対談を実施しました.対談はトータルで10時間以上に及んでいます.
 安倍晋三と橋下徹は,ある意味で今の日本を代表する政治家です.安倍氏は自分を最高権力者の地位に就けてくれた戦後レジームをなぜここまで憎むのか.そして橋下氏は弁護士,政党党首,大阪府知事,大阪市長を歴任しながら,なぜその権威を徹底的に貶めようとするのか――.その理由をめぐって討論するなかで,現代日本を読み解く鍵として「意地悪」が浮上しました.自分より少しでもいい思いをしている人が許せない(実際内田さんも,今や高級魚となったうなぎを食べたことを徹底的に批判されたとか).社会的に弱い立場にあるからといって「特権」を享受する連中が許せない.今,世の中全体にこうした空気が蔓延しています.
 「意地悪」化が進む日本はどうなってしまうのか? 政治は,経済は,社会は,学問は,家族はどうなるのか? 内田さんと福島さんの真剣討論は止まるところを知りません.激動の2015年を振り返り,これからを展望するために,ぜひお手にとっていただきたい一冊です.
内田 樹(うちだ たつる)
1950年東京都生まれ.東京大学文学部仏文科卒業,東京都立大学大学院博士課程中退.現在,神戸女学院大学名誉教授,京都精華大学客員教授.合気道凱風館師範.武道と哲学のための塾「凱風館」を主宰.著書:『ためらいの倫理学――戦争・性・物語』(冬弓社,2001年,角川文庫,2003年),『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書,2006年.第6回小林秀雄賞受賞),『困難な成熟』(夜間飛行,2015年)他多数.

福島みずほ(ふくしま みずほ)
1955年宮崎県生まれ.東京大学法学部卒業後,弁護士となる.1998年社民党から参議院議員に初当選.2003~13年社民党党首,2009~10年内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当等)を歴任.現在,参議院議員,社民党副党首.著書:『結婚と家族――新しい関係に向けて』(岩波新書,1992年),『あれも家族 これも家族――個を大事にする社会へ』(岩波書店,2001年),『娘たちへ――母から娘に伝える人生に大切な80の知恵』(岩崎書店,2009年)他多数.

書評情報

ふぇみん 2016年2月25日号
ページトップへ戻る