執筆者からのメッセージ(『世界』2018年8月号)

「袴田事件「再審を認めず」を認めず」



 今年6月30日,弟・巖が冤罪被害を受けた事件から53年目に入りました.一口に半世紀といっても,筆舌に尽くせない出来事と歴史があります.その積み重ねの末に,いまの巖と私がいるのです.

 私たち家族は巖を疑ったことは一度もありませんが,弟を犯人視する一連の報道が続き,家からほとんど出られなくなりました.社会の冷酷な視線に耐えなければならない.支援がなく孤立無援で苦しい時期もあった.でも,もし広い空から地上を眺めたとすれば,多くの人がさまざまな事情で悩んでいるはず.私たちだけではない.そう思えたとき少しだけ気が楽になり,それまで以上に巖の救出に力を入れるようになりました.

 街で「がんばってね」と声をかけてくれる人,署名に協力してくれる人.そうした小さな力の一つ一つがどれだけ私に希望を与えてくれたことでしょう.こうしてメディアがキャンペーンを張ってくれることも,とても大きな勇気になります.

 東京高裁の決定は残念ではありましたが,みなさんの力の結集はいまもなお続いています.巖の命があるうちに,雪冤を果たしたいと念願しています.


袴田ひで子

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