執筆者からのメッセージ(『世界』2018年10月号)


 8月30日,人種差別撤廃委員会の日本審査の総括所見が発表された.

 「琉球・沖縄の状況」のセクションで,委員会は,琉球・沖縄の人びとを先住の人民として承認するようにとの前回の勧告にもかかわらず,日本政府がこれを受け入れないことに懸念を表明し,「その立場を再検討し,琉球の人びとの権利を保護するための措置を強化」するよう勧告した.

 また,委員会は,「米軍基地の存在による,沖縄の女性に対する暴力の報告と,民間人の居住地域における軍用機の事故に関連して琉球・沖縄の人びとが直面している問題に関する報告」に懸念を表明し,「女性に対する暴力を含む,琉球・沖縄の人びとの適切な安全と保護を確保すること,ならびに加害者の適切な訴追と有罪判決を確保」するよう勧告した.

 前々回の総括所見にあった米軍基地とそれがもたらしている人権侵害への言及が復活するなど,一歩踏み込んだ内容の書き振りであり,今後,日本政府がこれにどう応えるか,注目される.

 翌31日,沖縄県は辺野古の公有水面埋め立て承認を撤回した.知事の死去後に撤回の権限を引き継いだ謝花喜一郎副知事は,記者会見の中で「辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の思いをしっかりと受け止めた上で,公有水面埋立法に基づき適正に判断した」と述べた(琉球新報).

 工事はストップしており,今後,国は県を訴えるなど法的な対抗措置をとる方針だが,県知事選挙への悪影響を考慮してか,9月6日時点で大きな動きは見られない.

星野英一(琉球大学教授)

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