加速する世界、逆行する日本

スター・R.ブラウン、ジャネット・ラーセン、J.マシュー・ローニー、エミリー・E.アダムズ 著/枝廣淳子 訳
『大転換――新しいエネルギー経済のかたち 』


対立が際立った先日の米中首脳会談での大きな成果は何か。世界最大の温室効果ガス排出国で、対策に後ろ向きだった中国の方針転換をオバマ米大統領が歓迎した局面だろう。11月末からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ。この「パリ合意」が成立すれば、1997年に京都議定書が採択されて以降、最も重要な気候変動に関する国際合意となる。大気汚染が深刻化する中国は実は世界トップクラスの再生可能エネルギーの開発利用国となっているのだ。気候変動の制御のため、化石燃料は座礁資産となり、脱石炭キャンペーンがさらに拡がりを見せる。ウォール街の投資家たちや抜け目ない各国政府は、今、この基本的な真実に気づきつつある。ソーラーと風力に基づく、より民主的で新しいエネルギー経済のかたちが未来なのだ。長年、世界の最前線を見つめてきた著者の現役最後の書のメッセージはこうだ。50年分に匹敵する経済構造の大転換がこの10年で起こる。この警告に耳を傾ける時である。

(2015年10月)

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