恐れず一番楽しいことをやりたまえ

「ぼくがどんなアドバイスをするかだって? そんなことは何もかも忘れてしまって、恐れず一番楽しいことをやりたまえ」

 

ミシェル・ファインマン 編/大貫 昌子 訳『ファインマン語録』


 もう20年近く前になるでしょうか、天才物理学者リチャード・ファインマンを描いた映画「インフィニティ 無限の愛」を見にいきました。最初の妻アーリーンとの、ちょっと変わったなれそめから死別までを描いた映画で、店先に飾ってある赤いドレスを見てファインマンが妻を思いむせび泣くラストが印象的でした。
 本書は、この映画を見たり、ファインマンさんシリーズを読んだり、あるいは『ファインマン物理学』で勉強したりして、ファインマン・ファンになった方が、ますますファインマンのことを好きになれる本です。
 いつもユーモアたっぷりなのに、デートで「いったい何を喋ればいいんだ?とぼくは心配でならなかった」という言葉には、ファインマンにしてそうなのか、となんだか身近に感じられるのではないでしょうか。そして最初に引用したような若い人や子どもたちへの愛情たっぷりの励ましの言葉を読むと、とても嬉しい気分になり、もう若くはない自分もまた応援してもらっているように気分に浸れました。
 そして、ファインマンが自分自身や科学を語る多くの言葉から、じつに謙虚な人柄が伝わってきます。「ファインマンが核エネルギー賛成派だと言ったからといって、それは注目に値する意見とはかぎらない。なぜならかく言うファインマン自身、実のところこうしたことを喋っているとき自分で何を言っているのか、よくわかっていないんだ。」けっして軽々に引用すべき言葉ではありませんが、いろいろと深く考えさせられることの多い1冊です。

(2016年12月)

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