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執筆者からのメッセージ(『世界』2017年2月号)
脱原発のその先
原発はなぜ問題なのか、さらには、現代技術の問題点は何なのか。3・11の原発事故以前にも、それが問われてこなかったわけではない。しかし、あの大惨事を体験して、人びとは原発という技術を根本から考え直すことになった。
私のなかでは、40年の歳月が一挙に巻き戻され、1960年代から70年代にかけての大学闘争と反公害運動の時代を思い起こすことになった。そこから見えてきたものをモチーフとして脱原発の思想を論じた。
重要なことは、技術のことを専門家だけに任せておいてはダメだということだ。市民が関わらなければ技術はまともにならない。それを身に染みて学んだ。そこからもろもろの社会的問題が見えてきた。
それは原発の問題にとどまらない。脱原発の先に進まねばならない。生活の、あるいは、産業のあらゆる局面において、どういう技術が望ましいのか。その先の技術を問う軸足として、脱原発の思想を位置付けたい。
井野博満(東京大学名誉教授)